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32話 体育祭って、運動神経悪い人には処刑イベントだよね

 こっそりと「え? 私遅刻してませんよ?」みたいな顔して学園に戻る。四限の途中から教室に戻るのは面倒なので昼まで屋上で時間を潰す事にした。


「舞花って人がいたの……あのビルか、結構遠いなぁ」


 学園の屋上から、少し離れた高層ビルを見つめる。あの距離から正確に影霊の心臓の辺りを撃ち抜くとはよっぽどの名狙撃手らしい。


「そこにいたのって、本当にその人なの?」


「そうじゃねえの? なんか後からあそこのビルの屋上調べらたら落ちてたって霧が言ってたぞ、なんだっけ……?」


 灯が紙パックのコーヒー牛乳を飲みながら適当な返事をする。


 霧はアリスを事務所に運ぶ時、ついでに反応のあったビルの屋上に行ってみたらしい。そしたら、そこには消えかけている朧があったとか。


『7.62×54mmRの薬莢、あげはが使ってる弾と同じように退魔護符が施されてる、東坂舞花の愛銃はドラグノフ』


 ピコンとスマホが鳴る、霧からのメッセージだ。


 "ドラグノフ"、ソ連が開発した有名な狙撃銃(スナイパーライフル)だ。それにしても……舞花という人は中々趣味が良いと思う。


「あれ、めちゃくちゃ女の子に似合うしなぁ」


 銃のチョイスが素晴らしい。きっと自分の魅力を最大限に理解してる人なんだろうなぁ、まあアイドルだし当たり前か。


『同意、細身のボディにセクシーな木製ストック。あれほど女性に似合う狙撃銃は存在しない』


「それな」


 激しく同意だ。


「……なんの話?」


 あまりその手の事に興味なさそうな灯は頭に「?」を浮かべてた。


「はぁ、それにしても」


 私は地べたに置いていたスマホを取る。先程からずっと、会話している間もコレからはある曲が流れていた。


「歌唱力凄いね……めちゃくちゃ聞き惚れるよこの人の歌声」


 "Wild Weasel"の新曲、殆ど舞花のソロみたいな曲だ。動画サイトに公式のPVがあったので聞いてみたけど……なんというか圧巻だった。


「歌姫って、こういう人の事言うんだろうなぁ」


 人気があるのも頷ける。


「あいつ、退魔巫女なんて辞めてアイドルに集中すれば良いのにな」


 確かに、それは一理あるかも。



 その後、適当に時間を潰し授業が終わったのを見計らって食堂で昼食をとった。


 そうして五限から何食わぬ顔で授業に参加した。


「……」


 退屈な授業の話を聞き流しながらボーッと窓から見える景色を眺める。見える景色はいつも通り、東京は相変わらず、いつも通りだ。



「東京はまもなく滅びる……影霊が跋扈し、カオスが望んだ混沌の地に……その時、あなたはどう動く?」



 ふと、頭の中であの夢で聞いた枯れた女性の声が響いた。


 バケツいっぱいの血をぶち撒けたような真っ赤な空、徘徊する影霊、荒れ果てた街並み、混沌が支配する地、東京……



「滅びゆく東京の中で……あなたはどう抗う?」



 そんなこと言われたって……


「私にどうしろってのさ」


 頬杖をつきながら窓越しの空を見つめた、今日の天気は腹立たしいくらい、青々とした快晴だった。



〜〜〜〜〜〜〜



「えー、それじゃあ個人で出る競技を……」


 六限、ロングホームルームの時間。今日のテーマは六月半ば、二週間後に迫る体育祭についてだった。


 というか、気がつけばもう六月かぁ。なんかもの凄く濃い一ヶ月ちょっとだったような気がする。


 朝起きて、いつも通り学校に行こうとしたら未来の東京に迷い込んで、まあそれからホント色々あった。


 それにしても……


「はぁ……体育祭ってさ、必要?」


 私は隣の席の灯にそう愚痴る。


「え? 何で? 楽しいじゃん」


 やれやれ、灯はわからないようだ。運動神経悪い奴にとっちゃこんなイベントは公開処刑に等しい。


「サボりたい……あ、でも退魔巫女だから身体能力は……」


「あんなもの、変身してる時だけです」


 揚羽の残酷な宣告。ですよねー……


「いっそのこと、体育祭の間ずっと変身してれば?」


 灯が冗談混じりにそんな事を笑いながら言った。いや、その発想はなかった……!


「アホですか?」


「いや、冗談だって。マジにならないでよ揚羽……」


 冗談が通じない娘だ。


「灯とあげはちゃんー? 二人はどうするのー?」


 教壇に立つ真面目そうなクラスメイトがこちらに声をかけてきた。気がつけばどんどんと個人競技が決まっていた。


「あー、なんでもいいよ」


「私も」


 楽そうなのを選ぼうと思ったけど、正直どれも面倒くささは変わらなさそうだ。


「じゃあ灯は対抗リレー、あげはちゃんは余ったやつに入れとくから」


 対抗リレー、代表者を数人選出したクラス対抗リレーだ。


 灯ってめちゃくちゃ運動神経抜群だからなぁ。ピッタリな競技だろう。退魔巫女じゃなくてもその片鱗は体育の授業などで発揮されている。


 普段も色々な運動系の部活に助っ人として引っ張りだこらしい。


「成績良くって運動もできて、友達も多い……陽キャの鏡ですなぁ」


 隣にいる私が色褪せるどころかモノクロに見えちゃうよ。


 と、その時。スマホにまたメッセージが入った。どうせ霧からだろうと取り出してみたら……


「あれ、雫からだ。珍しい」


 連絡先は勿論交換してるけど。彼女から何かメッセージが来ることなんて皆無だ。いったいどうしたのだろうか。


『放課後、SHIDEN KAIに集合、灯も連れてきて』


 あまりにもシンプルで短い文面だった。


「紫電さんのとこに来い……だって、雫が」


 灯にそう伝えた。


「え、私も?」

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