26話 夜の学園
「ひゅー……たっか、こんな所登ってきたのかぁ……」
柵越しに下を見る。八階建のビルの屋上、ピューピューと夜の冷たい風が身に染みる。
「そのオモチャはなに?」
灯が私の手にある銃を見る、オモチャ……まあ見た目は完全にそれっぽいけど。
「揚羽から貰ったびっくりドッキリメカ」
私はそれを脇腹のホルスターにしまった。ちなみにそのホルスター、いつの間にか付いていた。ご丁寧なことだ。
「さて、じゃあもうひとっ跳びしますかぁ」
学園の方に向き直り、歩いていく灯。続く雫。私もパタパタと二人の後をついていく。
『……あれ、この反応』
「どうかしたの霧?」
『……ううん、なんでもない……あまり気にしなくていい』
そう言われると余計気になるんですけど……
そんな会話をしつつ、ビルの学園側に立つ。このビルと学園は大きな道路を一つ挟んでいる。
「じゃ、いくわよ」
そうして、二人はまた大きく跳躍。学園に向かい跳んでいった。
「やっぱりそうなるのね……」
〜〜〜〜〜〜〜
「夜の学園って、なんでこう不気味なんだろう……」
屋上にたどり着くともう既にそこは朧であった。朧の入り口は屋上に存在していたのでわざわざそこから学園に入る必要があったのだ。
そうして、屋上から学園に侵入。肌を伝うピリピリとした空気からそこが既に現ではないのがわかる。
暗い学園の中を探索、ガラスの壁から入り込む月明かりがより一層不気味さを増幅させていた。
「……一緒にいても効率が悪いわ、手分けして探索しましょ」
「だな」
二人とも、全く怖くないようだ。肝が座っているというかなんというか……
その後、私たち三人は分かれて探索をする。
グロックのアンダーマウントレイルつけたフラッシュライトで照らしながら先を進む。
学園の電気という電気は全て落ちている、外からの月明かりとこのフラッシュライトだけが頼りだ。
「外の景色は普通なんだけどなぁ」
ペタリとガラス壁を触る。外に見えるのはごく普通の街並だ、ここが朧であることを一瞬忘れてしまう。
と、その時だった。
「あれ、何か聞こえるような……」
何か遠くから……音が聞こえる。誰かの足音だ、灯か雫だろうか。
「……霧、灯と雫は今何階?」
私は小声で霧にそう聞く。
『灯は五階、雫ちゃんは三階』
ここは四階だ、じゃあこの足音は……?
「まさか、影霊?」
足音はこの先の曲がり角から聞こえる、私はライトを消して角からそっとその先を伺う。
「……」
暗くてよく見えづらいけど、何かぼんやりと人影ようなものが少し先に見える。
ここは朧、普通の人はいない。そして灯と雫は別のフロア、怪しすぎる……
私はグロックを構える。息を整えて……角から飛び出して一気に人影に向かい駆け出す。
「止まりな……って、え?」
それに向かって銃を突きつける、だけどそこにいたのは……
「……ガイコツ?」
どこからどう見ても骨……骨……こいつ、骸骨の人体模型?
不思議なことにそいつからは全く敵意を感じなかった。
「……」
そうして、そいつは私を一瞥してコツコツと音を立てながらその場からさっていった……骨だけに。
「なんじゃありゃ……」
『今のは影霊じゃない、影霊の影響で発生している幻みたいなもの』
「それ先に言えよ……」
無駄に緊張してしまった。
『噂の発生源はやっぱり影霊みたいだね、この空間結構不安定だから、あの幻が現実にもある程度影響してるのかも』
「なんじゃそりゃ……その影霊って相当な人騒がせだね」
元凶の影霊は随分とイタズラ好きなようだ。
『雫ちゃんと灯、今の聞いてた?』
霧が他の階で探索しているであろう二人そう問いかけた。
『二人も似たようなの見てるみたい』
「……あはは、マジ?」
どうやら、今の学園内は影霊の幻影がウジャウジャと湧いているようだ。
『一度集合しよう、みんな四階の多目的ホールに集まって』
多目的ホール、このフロアに存在する大きな大講堂だ。
私はホールに移動する、その途中で途中で雫と合流した。
「何見た?」
「見たというより聞いたね、あれはきっとラッパーの幻ね」
……どんな状況だよ!?
「ねえ、ここに湧いてる影霊何がしたいんだと思う?」
雫に気になっていたことを聞いてみた。
「……攻撃を仕掛けてくる様子も全くないわね、私たちをからかって遊んでいるみたい」
からかっている、か……言われてみれば。まるで小さい子供を相手しているかのようだ。
「はぁ……なんか帰りたくなってきた。ここにいるのってそんな凶暴な奴じゃないんじゃないか?」
『そういうわけにもいかない、ここはとにかく空間が安定してない、放っておいたらどんな影響があるのかわからない』
まあそれもそうだけど……
そうして、私たちはホールに入る。ホールはまるでシアターのような作りになっていてとても広い。
「……暗いなぁ、全く見えない」
ここも全く明かりがついていない。フラッシュライトで照らしながら先を進む。
「明かりつけられないの?」
「私がなんだって?」
上から灯の声が聞こえた、ライトでそちらを照らす。ホールは二層構造になっていて五階からでも入れる座席がある。
「よっ」
ピョンとジャンプしてこちらの方に降りてくる灯。
「はー、なかなか出てこないな」
ダルそうにそう呟く彼女。ともかくこれで三人また集まった。
「さて、これからどうしようか……」




