22話 なんたる羞恥プレイ!
「授業中に現れるのはなんとかしてほしいわ〜」
「まあ、あっちはこっちの事情なんてお構いなしだし……仕方ない……」
霧の部屋、今日の戦闘の様子を二人で振り返っている。
「……ここは銃より手裏剣を使うべきだった」
霧がモニターを見ながらそう呟いた。
「いや、数が多かったからさ、まあ確かにやたら大きくて退魔弾効きにくかったしなぁ……」
彼女の戦闘アドバイスは当てになるから、真面目に聞いておくべきだろう。
「ホント、今日はマジで沢山いたなぁ」
先程現れたのはイノシシ様な姿をした影霊、それもかなりの数で群れを成していた。
「影霊って、ホント色々な奴がいるよね……」
土人形だったり、武士だったり、イノシシだったり……正直言って全く規則性が見えない。
「影霊らの形に特に意味はない……ただ現での人間のイメージが影響しているだけ」
「イメージ?」
「うん……影霊って、本当は実体のない……本当にふわふわした幽霊みたいなもの……それが人間の影響を受けて様々な姿になる……」
あ〜、なんかそんな事部屋に積まれていた資料にも書いてあったような気がする。
かなり難解で読み飛ばしてたけど今の霧の説明のおかげてようやく理解できた。
「アイツらもずっと朧で引きこもってくれれば良いのになぁ」
「放っておくと朧から現に姿をあらわす……その前に叩かなきゃいけない……」
あんなものが現実世界に現れたらたまったもんじゃない、影霊ってめちゃくちゃ凶暴だし、どんな影響があるのかもわからない。
「……ところでさ、霧って直接話すのと念話で話すのじゃ全然雰囲気違うよな」
「な、なんの話……?」
こいつ自覚ないのかな?
「いやなんというか……念話だと普通だし」
「直接面と向かって会話するのは苦手……顔が見えなきゃ気楽……」
「あ〜、その気持ち凄くよくわかる」
人見知りあるある。
「やっぱり……私たちは仲間……」
「うん、仲間仲間」
謎の一体感を感じた瞬間であった。
〜〜〜〜〜〜〜
「え〜っと、この辺りだったかな」
自室で霧から教えてもらった情報を整理しようと思い、影霊の資料を漁る私。
部屋の隅に積み上げたダンボールにはまだまだ山ほど目を通していない資料が多かった。
まあぶっちゃけ、見ても専門用語多くて何言ってるのか分かりづらいんだけど……まあなんの知識も無いよりは多分マシだろう。
「ん……? うわ!」
その時だった。ぐらっと、積み上げていたダンボール箱が揺れ……勢いよく山が崩れる。
ドサドサドサ……と、箱から流れ出るファイルの山。
「はぁ〜、めんどくさいなぁもう……」
いい加減、ちゃんと片付けなきゃいけないなぁこれ。
そんな事を思いながら崩れたファイルを集めていると……ふと、ある文字列が書かれたファイルが目に入る。
「ん……北條家襲撃事件に関して?」
なにやら途轍もなく物騒な文字列、嫌な予感しかしない。
私はそのファイルを手に取る。比較的新しめのファイルのようだった。
「……あれ? これ、鍵ついてる」
ファイルには錠前が付けられていた。簡単には開きそうに無い。
私はそのファイルをそっとダンボール箱に戻す。勿論気にならないわけないけど……鍵が付いているって事はそういう事だろう。
なにか詮索してはいけないような事……なんだと思う。
「……灯が言ってた、雫の"事情"に関係あるのかな」
「私が開けてあげましょうか?」
と、いつの間にかそばにいた揚羽が箱に入ったファイルを見ながらそう言った。
「いいって、っていうか相変わらず急に現れるんだね」
神出鬼没というかなんというか。
「私はずっとアナタと一緒にいますからね、退魔巫女と姫神とはそういう関係なんです」
「あぁ、そうだっけ」
退魔巫女と姫神は一心同体……ん? という事は……
「……あのー、揚羽?」
なんだか途轍もなく嫌な予感がしてきたんですけど。
「揚羽っていつもどこにいるの?」
「いきなりなんですか? ……まあそうですね、アナタの身体に間借させてもらったり、側でこうして実体になってたりしてますが」
つまり、ほとんどの時間は私と一緒にいる。あまり自覚なかったけど、それって……
「じゃ、じゃあもしかして」
私がそう言うと、揚羽は「あ〜……」と何かを察したような声を出す。
「わかった、それ以上言わなくていいから!」
「アナタ、毎日自慰行為をしてますからね」
「うぎゃぁぁぁぁ! 言うなって!!!」
なんたる羞恥プレイ! 全部コイツに筒抜けだったのか……!
「はぁ、こっちも大変ですよ。あげはの身体にいる時は感覚も共有してますし」
「そ、それならいいだろ! お互い気持ちいい事は共有したって!」
混乱と恥ずかしさで自分でも何言ってるのかわからなくなってきた。
「ちょっと、うるさいんだけど……」
と、そこに雫が私の部屋に入ってくる。
「あー、雫か。今コイツの自慰行為について……」
「おいおいおい!!! 言うなって!! お前アホか……!?」
優等生によって先生に告げ口された小学生みたいな気分だ。
「……あぁ、そう」
と、雫は興味なさそうに扉を閉めようとする。
「あげは、あなた声大きいから……色々と、だからもう少し静かにしてね」
パタンと扉が閉められる、私はその意味を数秒後に理解した。
……もう死にたい。




