17話 不機嫌な姫神
「私は揚羽、ひじょ〜〜〜に不本意ですけど、一応アナタの姫神です」
目の前に現れた黒髪の少女は苦々しい表情をしながらそう答える。ってか姫神……? この娘、姫神って言ったよな?
「えっと……君が私の?」
「ええ、そうです」
彼女は自分の胸に手を当て「ふん、なんで私がこんな男女に」と言い放つ。
揚羽……前に変身しようとした時に頭に思い浮かんできた名前だ。あれは姫神の名前だったのか。
……しかしこんな小さいロリ娘だったとは思わなかった。
今更だけどこの娘が着ている服、どことなく私の魔法少女衣装に似ているような気がする。そういう所は共通しているのだろうか。
「なにジロジロ見てるんですか?」
「ごめんごめん……それにしても、何で今まで出てきてくれなかったの?」
私がそう聞くと、彼女は怒ったような様子になる。
「言っておきますけど私、アナタの事認めてませんからね」
そう呟いて、私に背を向ける揚羽。すると彼女の身体はさっきと同じような光に包まれ……気がつけば彼女はいなくなっていた。
そして、代わりに現れたのはあのアゲハ蝶だった。蝶はひらひらと何処かへ飛んで行ってしまった。
「……あの娘が、私の姫神」
なんだか物凄く嫌われているみたいなんだけど……私なにかしたかな。
「へぇ、可愛い娘じゃん」
「うお! 灯いたの!? いつの間に……」
気がつかなかった……こいつ忍者か?
「あげはが会話に夢中で気がつかなかっただけでしょ、それよりもアンタのパートナー、なかなか気難しそうな娘だね〜」
灯はアゲハ蝶が飛んで行った方向を見つめながらそう言った。
「うん、なんか私嫌われてるみたいだし」
うーん、こんな調子ででこの先やっていけるのかなぁ……
〜〜〜〜〜〜〜
「じゃあ、私こっちだから」
灯は反対側のホームを指さす。
「うん、じゃあね」
「おう、またな〜」
そうして、彼女は電車に乗り込む。ドアが閉まり私は去って行く電車を見送った。
「はぁ……ホント、波乱の一日だったなぁ」
まさか、転校初日に影霊に襲われるとは思ってもいなかった。
「この場所で戦ったんだよな?」
あの影霊が現れたこの駅、今は全く普通の空間だ。
あれってこの前、真鶴さんに連れて行ってもらった場所と似たようなとこなのかな?
真鶴さんに教えてもらった事を頭から引っ張り出す。あそこは"朧"という空間であるらしい。
詳しいことは難しくてよくわからなかったけど、取り敢えず影霊は朧を住処としているとかなんとか。
私は朧に迷い込んだのだろうか?
そうして、戦っている最中に新しい退魔巫女にも出会った。西嶋灯……中々明るくてパワフルな娘だったなぁ
そんな事を考えているうちに電車がやってくる、私はそれに乗り込み探偵事務所への帰路に着く。
揺れる電車の中、何の気なしにスマホを取り出してみると二件のメッセージが入っていた。
一件は灯から、『退魔巫女仲間としてこれからよろしくね〜♪』という軽い調子のメッセージだった。
そうしてもう一件は……霧からだった。
『帰ったら私の部屋に来て』
という短いメッセージだった。よくわからないけど、帰ったら霧の部屋に行った方が良さそうだ。
私はスマホの画面を落とす。なんかちょっと眠い。
……少しだけ寝ようかな。
〜〜〜〜〜〜〜
またおかしな夢を見た。私と雫、そうして今度は灯も一緒だった。
私たちはまた"何者か"と戦っていた。例の如くコイツのことを思い出そうとするとまた記憶に靄がかかる。
そうしてその何者かの攻撃。その時の私は何故かズタボロで、身体が動かずよける事が出来なかった。
死ぬ……と思った、だが私の目の前に灯が立ち……
「あげは……後は頼んだよ……!」
そこで目が覚めた。
〜〜〜〜〜〜〜
「……」
なんだったんだ今の夢……
何故か凄く悲しい気持ちになった。そうして、思い出す事が出来ない"何者か"への怒りが湧いてきた。
「……ん、あっ、降りなきゃ!」
気がつけば探偵事務所の最寄駅に到着していた、危ない危ない、乗り過ごすところだった。
電車を降り、ホームを出て改札を通り地上に出る。探偵事務所はここから徒歩数分だ。
……今更だけど、真鶴さんに遅刻の連絡とか入ってないよな? 連絡されてたら怒られそうだ。
一応あの人が私の保護者って事になってるらしいし。
「た、ただいま……」
だけど、そんな心配は杞憂だったようだ。真鶴さんは探偵事務所にいなかった。あの人朝からどこに行ってるのだろうか。
バッグを自室に放り投げる、そうして探偵事務所を出て三階に向かった。
「はいるぞ……ん? 雫ここにいたのか」
霧の部屋の中、雫が霧と一緒にモニターに向かって何かの映像を見ていた。
「……何見てるの?」
私も後ろからそれを覗き込む。
「あれ? これ私と灯?」
……退魔巫女姿の私と灯、そうしてあの武士のような影霊。朝の戦闘の様子がそこには映っていた。
「はぁ、動きがまるで素人ね」
それを見た雫がそう呟く。私の事だろうか、仕方ないじゃん、その通り素人なんだから……
「で、なんでこんな映像が?」
私が霧にそう聞くと、彼女は「よくぞ聞いてくれました!」みたいな雰囲気でこちらを向く。
「フフッ……私の力、どんな場所でも見通せる……」
いや、怖いんですけど……




