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15話 灯

「ふーん、お前あの探偵事務所の居候なんだ」


「うん、まあ」


 灯と歩きながらそんな会話をする。あの後。障壁は消え、駅は人が戻り元の慌ただしい感じに戻った。


 変身を解いた灯が来ていた制服は……なんと私が着ている制服と同じだった。


 私の変身も自動的に解かれ、もと着ていた制服の姿に戻る。


「あれ? アンタも百合々咲?」


 そうして、互いに同じ学校である事がわかったので取り敢えず一緒に登校することにした。


「えっと……西嶋さんはいつから対魔巫女を?」


「灯でいいって、てかなんで敬語? 同じ一年でしょ」


 彼女は私の制服のリボンを見てそう言った、リボンは学年で色が違うからそれで判断したのだろう。


「あ……うん、じゃあ灯」


「おう、あげは!」


 なんというか、本当に元気っ娘だなぁ。


「で、何の話だっけ……あぁ、いつから対魔巫女やってるって話か」


 そう言うと、彼女は首から下げていた何かを私に見せてきた。


「……これ勾玉?」


 紅色の綺麗な勾玉だった。穴の部分に紐が通してあって首に下げられるようになっている。


「うちの家って昔から対魔巫女しててさ」


 代々続く由緒正しき対魔巫女というわけなのか。


「なぁ、あげはって本当に北條家?」


 灯が唐突にそんな事を聞いてきた。


「ま、まぁ色々と事情があって……」


 その辺りは本当に一言で言い表せないくらい色々あるのであまり説明はしたくない。


「まあいいけどさ……あ〜、これ完全に遅刻だわ」


 灯がスマホを取り出して時間を確認する。駅でのドタバタもあり、若干遅刻気味だったんだけどもう間に合いそうもない。


「はぁ……初日から遅刻とか、不良って思われそう」


「あはは、気にし過ぎ気にし過ぎ。どうせ間に合わないんだしどっか寄ってかない?」


 軽い口調でそう誘ってくる灯。男の頃の私は至って普通の真面目君だったので、そういう誘いには少しワクワクを覚えてしまう。


「いいけど、どこに?」


「この近くに知り合いがやってるカフェあるし、そこいこう」


 カフェ……こんな時間に空いてるのだろうか。



 そうして、私は灯に連れられて街を歩く。オシャレなビル街から少し離れて雑多な建物が並び少しアウトローな感じがする所に。


「よ〜、やってる?」


 準備中というプレートを完全にシカトして堂々とたどり着いたカフェに入る灯、私もそれに続く。


「なんだ、またサボり?」


 カウンターにいた店主さん。なんか、どこか雰囲気が紫電さんと似ているような気がする……


「ん、その娘は?」


「この娘は北條あげは、さっきそこで知り合った」


 灯が私の事を紹介する。


「あー、姉さんのとこでバイトしてる娘か」


 ……やっぱり、この人紫電さんの妹さんか。


「あぁそっか、あの探偵事務所にいるなら紫電とも知り合いなのか」


 灯も紫電さんの事は知っている様だ。


「ココアちょうだい、あげはの分もね」


 カウンターの席に遠慮なく座った灯がそう言った、私もその隣に座る。


「はぁ……準備中の看板見えなかったのかなぁ」


 ブツブツ文句を言いながらもカップを取りココアを入れる準備をする店主さん。


「やー、だってまた影霊現れてさぁ。こっちは疲れてるんだよ、最近出現頻度高くなってない?」


 そう愚痴る灯。


「でも、このエリアは北條家と分担してるでしょ? それを考えればそこまで忙しくもないと思うけど?」


 店主さんがそう呟く、影霊を始めとする色々な事情は把握している様だ。まあ紫電さんの妹ならおかしくはないか。


「まあそうだけどさ……あ〜、これであと二つの家も敵対関係じゃなかったらもっと楽なのになぁ」


 カウンターに突っ伏しながら面倒くさそうな口調でボヤく灯。


「二つの家って……」


「ここ東京には、昔からこの地を守る四つの家があるわ」


 私の呟きに店主さんがそう反応する。そういえば真鶴さんもそんな事言ってた様な……


 この一週間で、真鶴は影霊を始めとする様々な事情について色々説明してくれた。東京にある四つの家……"四天王"の事についてもサラッと教えられた。


「そのうちの二つ、北條家と西嶋家は協力関係にあるの、だけど後の二つの家とは対立気味でね」


 真鶴さんも同じ事を言っていた。四つの家の間では若干の勢力争いみたいな事が起きているとか何とか。


 家の名前については言ってなかったけど予想はついていた。北條……雫と霧の姓。北條家は四天王の一角の様だ。


「家系とか、ホントくだらないよなぁ……みんな影霊を倒す、目的は同じ仲間だろ?」


 不満そうな様子の灯。


「そうだけど、色々と複雑なのよ。はいココア」


 店主さんはカップを差し出す、ココアの甘い香りが店内に漂う、いい匂いだ。


「すみません、ありがとうございます」


 カップを受け取り口をつける。熱々のココアを堪能した。甘くて美味しいなぁ……



 その後、店内でまったりと過ごした。中々いい雰囲気のカフェでまた来たいなぁ、なんて思ったりした。


「……もう一限目終わり頃かな、そろそろ行く?」


 スマホの時計を確認、ゆっくりし過ぎたみたいだ。


「えー、まだいいだろ。もう少しゆっくりしてようぜ?」


 ……もういいか、遅刻には変わりないし。

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