14話 巫女の一閃
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「な、なんでこんな事に……」
私、通学途中だよね? なんでこんな場所に?
辺りを見渡す、一見するとここは地下駅の駅のように見えるが……まるで人の気配がしない。
今は朝、通勤通学ラッシュドンピシャな時間帯。だが周りには面白いくらい人がいない。
「それに……」
私は自分の着ている服を見る。今来ているのは学校の制服じゃなくて、例のあの黒っぽい忍者みたいな衣装だ。
「あんなにどうやっても変身出来なかったのに……」
まったく、気まぐれというかなんというか。
私は周辺をウロウロしてみた。何故か地上に出る入り口は全て不思議な障壁により封鎖されていた。
「なんだろうこれ……壁?」
少し透明だけど若干モヤモヤしてて「あぁ、壁があるな」って感じがする。
そのモヤモヤにはなんとも不思議で幾何学的な模様が。
「とにかく、これ完全に閉じ込められてるってわけだよな」
外に出れない。果たしてどうしたものか……
駅の構内は驚くほど静かだった、不気味なくらいだ、全く人の気配がしない静かな駅に私の足音だけが響く。
そうして、ホームに戻ってきたその時だった。
「なんか、変な感じ」
肌を刺すような危険な感覚。これは間違いなく何かがいる。さっきまでは感じなかったのに……
私は警戒して辺りをキョロキョロと見渡す。しかし何もいない。
「なんだよ、どこにいるってんだよ……」
太ももについているホルスターから銃を抜いて構える。我ながら拙い姿勢だと思うけどまだ慣れていないし仕方ない。
カン……カン……カン……
何処からか甲高い足音が聞こえた。間違いなく気配はコイツのモノであろう。
「……あ」
そうして、ホームの暗がりから現れたのは甲冑を被った、まるで武士のような出立ちをしている"何か"だった。
一目で人間じゃないとわかった。だって本来顔が見える部分は……真っ暗だ。
「こいつ……影霊?」
どうやら私が迷い込んでしまったのは影霊の巣のようだった。
奴が手に持っている大袈裟な太刀が妖しくキラリと光る。どうやら歓迎ムードでは無さそうだ。
「ホールドアップ!! リリースユアウェポン!!」
無駄だとは思うけど銃を構えて警察官みたいな警告を発してみる。
「……」
当たり前だが応答は無い。そうして武士は太刀を構える。刺激してしまったのだろうか。
太刀を構えた武士は……一気にこちらに向かって駆け出してきた。
「マジか……!」
そうして、横に向かい一閃。私はしゃがんでそれをかわす。かなりギリギリだった。
「このやろ……っ」
私は武士の土手っ腹に向かいグロックをセミオートで撃つ。拳銃の弾を目標に当てるのは難しいけど流石にこの距離なら外すことは無い。
二発の弾が武士の腹に当たる、あまり効いていない様子だったが、隙は作れた。私は後ろに大きく跳ねて距離を取る。
「そりゃ、全身あんな鎧着てちゃな……」
影霊が着ているんだから勿論タダの甲冑じゃないんだろう。
だがこっちも撃ち込んだのはタダの弾じゃない。
「……!」
驚いたような雰囲気の武士。奴の腹に撃った二箇所に小さな魔法陣のようなものが浮かび上がっている。
「対魔弾って、本当に効果あるんだな……」
疑っていたわけではないけど、実際にこうして効果を目の当たりにすると感心する。
「よし、これなら!」
私一人でもいけそうだ、そう思ったその時だった。甲冑の武士は大きな咆哮をあげ再度こちらに突進してきた……!
流石に二発程度じゃどうにかなる相手では無かった様だ、私は再度グロックを構え直す……
と、その時だった。ふと何者かの気配を感じた、一瞬雫が加勢に来てくれたのかと思ったのだが……
「うぉりゃぁぁぁ!!」
叫び声、そうして現れたのは……雫では無かった。
私の背後から一人の少女が勢いよく武士に向かい突っ込んでいく。彼女は綺麗な血のように赤い刀身をした日本刀を持っていた。
ガキイィィィン……!
あたりに響き渡る激しい鍔迫り音、一瞬の出来事だった。
押し負けたのは武士の方だった。奴が持っていた刀が弾かれる。
そうして、彼女は奴の腹に勢いよく蹴りを入れた、数メートル先に吹き飛ばされる影霊。中々豪快な戦いっぷりだ……
「……って、いや誰!?」
「ん〜? あれ、お前雫じゃないな。お前こそ誰だよ」
振り返る彼女、紅みがかった瞳が私を見据える。髪も瞳と同じような紅っぽい綺麗な色をしている。
どうやら雫を知っているようだ。知り合いだろうか?
「北條の家にこんな奴いたっけ……覚えてねぇなぁ……」
彼女は私のことをジーッと見つめる。
「あ……後ろ後ろ!!!」
と、そんな会話をしているうちに吹き飛ばされた影霊が起き上がっていた。
影霊は腰にさしているもう一本の刀を抜く。そうして警戒しながらこちらにまた近寄ってきていた。
「はぁ、めんどくせえなぁ……」
そう呟き、再度影霊に向き直る彼女。そうして彼女の瞳と同様に紅みがかったポニーテールがふわりと揺れる。
「西嶋流抜刀術、烈火弍型」
紅い刀を鞘に収め静かにそうつぶやく彼女。周囲にはメラメラとした炎のようなオーラが。
「はぁッッ……!!!」
勢いよく引き抜かれる刀。
「……ア………」
続いて聞こえた影霊の断末魔、一瞬の出来事だった。刀より生み出された綺麗な炎撃により真っ二つにされた影霊は霧のように消えていった。
「手応えなさすぎ」
つまらなさそうにそうつぶやく彼女。
「お、お見事……」
としか言いようが無かった。本当に鮮やかで豪快な戦い方だった。
「そりゃどうも……で、アンタ誰?」
「えっと……北條あげはです」
とりあえず名乗っておいた。ちなみに今更だけど、何故か私の名字は「北條」という事になった。
真鶴さん曰く、対魔活動をするなら雫と同じ名字を名乗った方が良いとかなんとか。そこら辺は何か私が知らない事情がありそうだ。
「ん〜……そんな名前の奴、北條の家にいたかな……」
考え込む様子を見せる彼女。北條という家について知っている雰囲気なんだが、何者なのだろうか。
「……まあいいや。北條性でその格好、この空間にいるってことは同業者でしょ。私は西嶋灯、よろしく」




