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12話 姫神.exe(応答なし)

「姫神、退魔の巫女に力を与えている存在ね」


 と、真鶴さんのその言葉を聞いて私はある事を思い出した。もしかして昨日雫と一緒にいた娘ってその姫神という存在なのではないだろうか。


 私は真鶴さんにそれを聞いてみた。


「あら? 見たのね、あの娘は翡翠(かわせみ)。雫ちゃんのパートナーよ」


 やはりそうだったのか。それにしても姫神かぁ……


「私が初めて変身した時はそんな存在欠片も感じなかったけどなぁ」


 私にもそういう存在が憑いているのだろうか? 全く実感がわかない。


「うーん、アナタの場合は特殊すぎるというか。そもそもそんな機械で変身する娘なんていないから」


 真鶴さんは私の腕のスマートウォッチをチラリと見てそう言った。


「……それで、私の序詞は……ん、なんか何となく頭の中に思い浮かんできたような」


 不思議な事に直感的に頭の中にある言葉が浮かんできた。


「……姫神揚羽(あげは)、私に力を」


 揚羽……何故かその言葉が自然と出てくる。


『序詞を認識しました、魔装憑着システムを起動します」


「うおっ、喋った!」


 聞き覚えのある無機質な機械音声。


『……エラー、姫神.exeは動作を停止しました。魔装憑着システムを強制終了します』


「え」


 そうして、その後スマートウォッチはうんともすんとも言わなくなった。


「うーん、何か変身するには条件が必要なのかしら」


 真剣に考え込んでいる真鶴さん。


 とりあえず、変身に失敗したという事で良いのだろうか。


「あの時は普通に変身出来たんだけどなぁ……」


 未来に迷い込み強引にスティーブンに魔法少女にされたあの時だ。


 そういえば最後、なんかエラー吐いて強制的に変身解除されてたような気がする。


「仕方ないわね、それに関してはもう少し私と霧ちゃんで分析を進めておくから」


 と、真鶴さんは私の腕についているそれを指差してそう言った。


「はい、よろしくお願いします」


「じゃあここはもういいから、一階にいきましょうか」


 一階というと……あのケーキ屋さんの事だろうか? 何か奢ってくれるのかな?


 私と真鶴さんは射撃訓練場を出てエレベーターに乗り一階に向かう、そうして一階にたどり着く。


「ここは“SHIDEN KAI”よ」


 辿り着いたのは二階や三階の雰囲気とは正反対のオシャレな外観のお店だった。私は看板を見つめる、そこには真鶴さんが言った名前が。SHIDEN KAI……下には小さく漢字で紫電改とも書かれていた。


「ここの店主さんは私たちの協力者なの」


 協力者、影霊退治に関わっているという事だろうか。


 私は真鶴さんに続いてお店に入る。んー、中も落ちた雰囲気、アンティークな小物が並び上品な雰囲気が漂っている。影霊退治なんて血生臭い事には関わってなさそうな感じなんだけど……


「紫電ちゃん、ちょっといいかしら」


 真鶴さんはお店の入り口正面。様々なケーキがガラスケースの中に並べられているカウンターの奥、厨房らしき場所を覗き込みながらそう言った。


「あ? なんだよ真鶴」


 そうして出てきたのは……このお洒落な雰囲気とは正反対のちょっと怖い感じの女の人だった。


「ウチに新しい娘が入ったから、あとバイトも探してたでしょ? 紹介するわ、あげはちゃんよ」


 と、真鶴さんは私の事を紹介する。


「えっと、あげはです……」


 そこで私はある違和感覚える、違和感の正体はすぐにわかった。名字だ、そういえば名字どうしよう……


「へー、こいつが? 姫神の気配しないけど」


 姫神という単語が出てきた。その辺りの事情は知っている感じなのか。


「あぁ……まあその辺りは色々あってね」


 紫電と呼ばれた女性は私を目つきの悪い視線でじろじろと見る。うぅ……なんか怖い。


「霧から話は聞いてたけど、お前本当に未来に行ったんだって?」


 私にそう問いかけてくる彼女。あれ、というか霧にその事話したっけ? 真鶴さんから聞いたのだろうか。


「ええ、今の時代では完成していない例のデバイスも持っているわ」


 私が答えるより先に真鶴さんがそう答えた。例のデバイスとは私の腕に付いているこれの事だろうか。


「ふーん、まあいいけど」


 そうして紫電さんは店内を見渡す。


「ウチは見ての通り洋菓子店……だけど仕事の関係で影霊退治に役立ちそうな物とか、色々手に入る。例えばこういうのとか」


 紫電さんはケーキの箱をどこからか取り出し私に差し出した、私はその箱をそっと開けてみる。中には……黒く冷たい光を放つ銃と手のひらサイズの小箱が沢山入っていた。


「し、仕事って?」


「あー、私の同僚だったの。今もだけどね」


 真鶴さんが答えた、確か何処かの研究所とか言ってたっけ。一体どんな組織なのだろうか……


「まあ、その辺りは追々話してやるよ」


 若干はぐらかされたような気がするけど、まあ今はいいだろう。


「で、ウチでバイトしたいんだって?」


 ……ん? そんなこと私言ったっけ?


 あ、そういえば真鶴さんが最初私を紹介する時「バイト探してたでしょ?」とか言ってたような……


「ちょ、真鶴さん?」


「あげはちゃん! がんばってね!」


 ……いやいやいや、こんな物騒なケーキ屋さんでアルバイトとか嫌すぎるんですけど!?

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