11話 普通の女子高生が【魔法少女】を始めてみた。
「んっ……」
意識がハッキリとしてくる、頭が少しボーッとする。
「ふわぁ……」
大きなあくびが漏れる。時計……今何時だ? げ、もう十時……随分とぐっすり寝てたなぁ……
昨日は……どうしたんだっけ? 歓迎会が終わった後、シャワー浴びて、あぁそこで自分の身体を……その後寝る前にソファーでも色々と……
「うわぁぁぁぁ!!! 何やってんだ私!!!」
恥ずかしさと自己嫌悪に陥る。
……まあでも仕方ないよね。うん、男が女の子になっちゃった時のお決まりだ。私は悪くない、私は悪くない。
〜〜〜〜〜〜〜
「えっと、高校……ですか?」
起きて、事務所に向かう、そこにいた真鶴さんから告げられたのは意外な言葉だった。
「ええ、アナタ15歳なんだから。キチンと高校は行くべきよ」
真面目な口調の真鶴さん。
「まぁ……そりゃそうですけど……」
そうは言っても。今の私って住民票や戸籍も無いだろうし、そんなんで学校に行けるのだろうか。
「安心して、その辺りは私がなんとかするわ! 知り合いの高校に入れるように話をつけてあげる!!」
なんかサラッとすごい事言ってるんですけど。どんなコネなんだ……?
この人には昨日から驚かされっぱなしというか。五千万円オーバーのスーパーカーを持っていたり、退魔巫女と協力して影霊を退治を手伝っていたり……
しまいには物騒な拳銃を当たり前のように持っていたり……
そう、あのモデルガンだと思っていたグロックは驚くべきことに本物だった。夜、暇だから弄っていたんだけど……明らかにモデルガンでは無かった。
真鶴さんに恐る恐る聞いてみる。彼女は「ええ、本物よ」とサラッと答えた。
彼女はグロックのスライドを引く、装填されていた9mmの弾丸がポロッと転がり出てきた。
それを手に取り私に見せてくる。
「この弾丸には特殊な呪符が施されているの」
退魔弾と呼ばれるその弾丸により、影霊に一定のダメージを与えられるらしい。
これがあるなら普通の人間も影霊と戦えるんじゃ? と思ったけど、どうやらある程度の魔力がないと使えない代物らしい。
自分的には退魔弾の事よりグロックが本物だったことの方が驚きだ。
場末の探偵事務所にしちゃ持っているものがとんでもないというか……
「はぁ……高校生かぁ」
話を元に戻そう。
「えぇ、雫ちゃんも通ってる高校よ」
雫……そういえば見当たらないけど学校に行ったのだろうか。今日はサボらないつもりなのだろうか。
「わかりました、そういう事なら」
まあ、そんな今日すぐに転校なんて出来るわけないのでどちらにしろここ数日は暇してなきゃいけない。
その後、真鶴さんの許可を得て事務所内にあった色々な資料に目を通してみた。
「うーん……難しくてよくわからないなぁ」
ダンボールの中に詰まっていた色々なファイルを取り出して中を見てみる。
複雑な式や難解な言葉が多く流石に理解できるレベルじゃなかった。
「この辺りは何となく言ってることわかるかなぁ」
影霊の歴史について纏めているファイルだ。これによると影霊と言うのはかなり昔から存在するらしい。
「同じく、退魔巫女も古くから存在し……」
対魔巫女も同様に、古くから存在するらしく影霊から人々を守る為に戦っているとの事。
「あの未来は、守りきれなかった結果って事か……?」
頭の中に未来の光景が過ぎる。
「はぁ……もっと未来についての情報が知りたいなぁ」
もう一度未来に行くことは出来ないのだろうか。あのトンネル潜ったらまた未来に飛んだりして?
そうして、夢中で資料を探ったり、色々なことを考えているうちに気が付けば時刻は十五時、随分と夢中になっていたようだ。
「……甘いものが食べたくなってきた」
そういえば、一階にケーキ屋さんがあったような気がする。あぁ、でもお金なんて持ってない。
「あげはちゃん、ちょっといいかしら」
と、部屋のドア越しに真鶴さんの声が聞こえた。
「えっと、何ですか?」
ドアを開け部屋の中に入ってきた彼女。
「さっき学校の方に連絡入れてきたわよ、一週間後から学校に行ってね」
連絡ねぇ……一体どんな連絡をしたんだ?
「それで、それまで暇でしょ?」
「え? はいまあ」
「暇を潰せる二つの場所を案内するわ、ついてきて」
真鶴さんはそう言ってさっさと部屋を去ってしまう。暇潰しできる場所って……どこだろう。
私は部屋を出て真鶴さんについて行く、そうして事務所をでてエレベーターに乗った。彼女はポチッとB2ボタンを押す。
そうして、辿り着いたのは……広めな地下空間であった。
「こ、ここは……?」
「射撃訓練場よ」
真鶴さんがそう言った。ホントなんでそんなものが探偵事務所の地下に……
「半分は私の趣味、もう半分は雫ちゃんの為かなぁ」
そういと、残念そうな表情で「でも雫ちゃん、銃は嫌いって対魔弾使ってくれないのよね……」と呟いた。
「あ、そうそう。今更だけどあげはちゃん、アナタの力見せてくれないかしら?」
力、つまり変身して見せろという事だろうか。
「……わかりました」
そうして、私は腕に付いているスマートウォッチを見る。
「……どうすればいいんだ?」
今更だけど、変身するにはどうしたらいいのだろう。最初の時はなんか自動的に変身してたよな……
「あ、画面ついた」
しばらくそれを弄ってみる。
「ま、マニュアル?」
スマートウォッチにインストールされていたソフトの中にご丁寧にマニュアルがあった。
「えっと……変身するにはまず……序詞を詠唱する、そうすると自動的に魔装憑着システムが起動……」
序詞ってなんだよ、全く心当たりないんだけど……
「序詞が必要なのは雫ちゃんや霧ちゃんと同じなのよね」
真鶴さんが説明してくれた。要するにそれは変身するときに契約した姫神の力を呼び起こす詠唱文……らしい。
……いや、姫神ってなんだ?




