1話 誰だよこの美少女!?
俺、南野真紘の人生は、一言で言えばあまりにも退屈なものであった。
ごく普通の家庭に生まれ、ごく普通に成長して、ごく普通の高校生活。
特に、自分の置かれた環境に不満があったわけではない。けれどもこの余りにも退屈な毎日は自分にとっては"つまらないもの"としか言いようがなかった。
「はぁ……」
そして、今日も退屈な1日が始まる。学校へ向かう通学路、いつもと変わらない見飽きた道。
ふと、側にあるコンビニのガラス面に自分の姿が反射したのが見える。黒髪で若干癖っ毛、冴えない顔。
うん、なんとも陰キャ。自画自賛したくなるほどの地味メン。
「はぁ……つまんね」
俺はガラスに映り込む自分を一瞥し道を歩き出す。
空を見上げる、気分が重くなるくらいの曇り空。東京の今日の天気は一日中曇り。
はぁ……二重に気分が重くなる。
そうして、そのうちトンネルにたどり着く。このトンネルは通学路の途中にあるのだが、薄暗いし、雰囲気が悪いのでここを通る人は殆どいない。
でも俺はここがかなりの近道になるのを知っているのでいつも通ることにしているのだ。
「……」
コツン、コツンと自分の足音がトンネル内に反響する。
「──っ?」
トンネルの半ばあたり、ふと立ちくらみの様な感覚を覚えた、貧血だろうか。
「朝メシ食ってねえからなぁ……」
先程のコンビニで何か買っておけばよかったと後悔。
そうしてトンネル内を歩く、っ……! 今度は頭痛、まずいな、風邪でも引いたのか……
「……はぁ、はぁ」
何故だか身体がすごく熱い、そうして全身を刺すような痛みも襲ってくる。これは本格的にまずいな、今日は学校を休もうか……
やがて出口が見える。"私"は歩みを進める。
「……は?」
トンネルを抜けた私の目に入ってきたのは、信じられない光景であった。
「ここ……どこだよ?」
私は当たりを見渡す、広がるのは崩れた建物、建物、建物、なんだこれ、まるで戦場だ。
そして、さらに異様だったのは空、一面が血をぶち撒けたかのような赤に染まっていた。夕暮れでもこんな赤くはならないぞ……
なんだこれ、タチの悪いドッキリ?
「……ん?」
その時、ふと自分の声に違和感を覚えた。なんか……すごく高いというか、女の子の声? なんで自分からこんな声が。
私は何の気無しにチラリと自分の身体を見てみた。
……胸が膨らんでる、なんだよこれ。一体何がどうなってるんだ。
「……んっ」
私はそーっと自分の胸と思わしき物に優しく触れてみた……や、柔らかい!
そして、私は恐る恐る股間に手を伸ばしてみた、そこにはあるはずのものがなかった。
「嘘だろこれ──」
私は慌てて側に倒れていたミラーを覗き込んでみた。そこに写っていたのは、見知らぬ黒髪の美少女であった。
「だ、誰だよこの美少女!!!」