第2話 いかがです特技部
学校に行きたくなさ過ぎて地獄だぞい
二人がハンガーに鎮座された鋼鉄の巨人に見惚れていると、背後から複数人の足音が建物内に響き渡った。
人影は2人どちらも壱騎にとっては見慣れた影だ。もっとも杏にとってはそうではないが…
「おー搭堂、今日も早いな」
「先生、お疲れ様です。いやぁ、教室よりここが好きでして…」
先生と呼ばれた男は嬉しそうに壱騎の髪をくしゃくしゃにしていた。随分と距離感が近い。いつもこうなんだろうと後ろの男より背の低い人影が浮かべた苦笑いを見ればなんとなく察せられた。
「そちらのお嬢さんは、入部希望者かな?」
男の興味が杏に移ったようである。知らない男からの質問に杏は戸惑ってしまった。十代の女子に安易に知らない男が声をかければこうなるのは必然である。困り果てた顔した杏を見かねて3人の中でも一番背の低い少女…冊月が助け船を出した。
「先生、初対面の人なんですからまずは自己紹介すべきだと思いまーす」
杏にとってはまさに福音に等しい助け船である。心の中でひそかに特大の感謝を名前の知らない少女に送った。
「確かにそうだな、では私は村松茂雄。年は今年で47、担当教科は倫理」
男に続くように他も続々と自己紹介を始めた。
「私真城冊月!化学工学科の2年生で壱ちゃんとは幼稚園からの幼馴染。得意科目は英語だよ!うーん…後は…あ、好きなものはスマートボール」
冊月は自己紹介の勢いのまま杏の腕を取りぶんぶんとふって興奮していた。目がギラギラと輝いて杏のガラスのような眼をまっすぐ見つめていた。
「眼…綺麗だねぇ…」
感嘆のため息をつきながらそれでも冊月は杏の眼から眼をそらさなかった。はたから見ていた壱騎はまたかとため息をついていた。冊月は一度興味を示すと周りと自分の時間がずれたかのように観察を続けるのだ。小さいころから変わらない冊月のいいところではあるのだが、ほとんど他人の杏を長時間観察するのは少し、というか大分失礼だと思う。注意したい気持ちも山々だがここで手を出すと急激に不機嫌になるのは長い付き合いで把握しているので、ただ杏に同情するしかなかった。
「あの、そんなにみられると恥ずかしい…」
どうやら限界を迎えたらしい。顔を真っ赤にして蒸気が立ちそうだった。壱騎に百合趣味のある男子ならこの状況に涙を流して喜んでいるのだろうが、その手の性癖を持ち合わせていない悲しい男が搭堂壱騎なのだ。
しかし、恥ずかしがった瞬間の顔は写真に撮っておきたかったと若干後悔もしていた。年相応の劣情も持ち合わせているのも搭堂壱騎なのだ…残念なことに。
「どうした搭堂?」
先ほどまで棚を物色していて暇になった村松が壱騎の横に座り込んだ。この建物には巨人の整備以外に時間をつぶす方法がない。あるものと言えば、廃ゲーセンからもらったスマートボール台に球の足りないビリヤード台、動かないパチンコ、壱騎が秘密基地にしている自家製のプレハブ小屋位である。
これでも建物が大きすぎて殺風景に思えてしまう。簡単に言えば飽きる空気が建物内を満たしているのだ。
だから、顧問である村松は大半の時間が暇な時間なので最近では炭火焼用の凹型のコンクリートブロックを持ってきて外で干物を焼いたり、茶室を作るために畳を持ってきたりしている。この学校は自由が売りの校風であるがたいていの場合、生徒よりも教師のほうが自由なことをこの一年で学んでいた
「いえ、また冊ちゃんの癖が出たなぁって」
まだ、あの二人は状況が進んでいない。多分あと10分はあのままだろう。
「ありゃ長くなりそうだな…」
「長いですよ、確実に…」
あの領域に男は侵入できない。もし、しようものなら第三者に殺さる予感がする。男二人にはやってはいけないことが理解できていた、だからこそ冊月を止められないのだが…
15分と少し経った後…
「暇ですねぇー…‥‥‥‥」
「あぁ、暇だなぁ…」
「今日の作業は先輩たちいないとできませんよね…」
「そうだな…」
男たちは暇を持て余し人生の貴重な時間を浪費していた。もはや彼らの眼に生気は宿っていない。やることのなさと春の陽気に当てられ脳みそは思考を停止し寝落ち寸前だった。
このままでは部室内に百合紛いと寝落ちした男二人という混沌としたあまりうれしくはない状況になってしまうことを神様も察したのだろう。
部室に二人の男がやってきたのは壱騎が寝落ちする寸前だった。
「すいませーん!遅れました!」
「同じくで…ございます‥‥‥」
がっしりとした体格の高い男がパンパンに膨れ上がったバックパックをしょって部室に入ってきた。バックパックを後ろから支えるように坊主頭のメガネの男が玉のような朝をかきながら息を切らしている。
「はぁ…はぁ‥‥」
あまりにもバテバテなので男も心配になって声をかける。今のメガネの男は生まれたばかりの小鹿のように足を震えさせている。
「大丈夫か、智電?」
「はぁ…君だけに持たせるわけにはいかんですよ…」
「こんくらい大丈夫だって」
一連のやり取りからも男たちが仲のいいことがわかる。もっとも、この学校でガチムチの男ともやし男のコンビはそこまで珍しくもないのだが…
そんな男たちのもとに眠気の吹き飛んだ壱騎がかけよる
「お疲れ様です御伽先輩、智電先輩」
「よぉ、搭堂」
「遅れて申し訳ないであります」
ガタイのいい男_御伽はナイスガイなスマイルで応え、もやし男_智電が深々とお辞儀をした。
「あれ?茂さんと真城は?」
「先生はあそこで寝てます。冊ちゃんは…」
壱騎が流し目で指したその先には_数十分前と同様に冊月が杏の眼を見ていた。変わったことと言えば杏が諦め目線が明々後日の方向を向いていることくらいだろうか。
「冊月女史が見つめている女性は誰でございますか?」
「あぁ…孤門杏さんっていうんですけど……なんかよくわかんない子です」
「なるほど、分かんないでございますか‥‥‥」
言われてみればあの少女のことについて全く知らなかった。彼女が持っていた壱騎のラジオは秘密基地に戻したが、なんで彼女が秘密基地からラジオだけを持っていたのかもわからなかった。唯一分かることと言えば眼がガラス玉のように透き通っていてきれいで少し触れてしまった体がびっくりするくらい柔らかかったことくr…そこまで考えて壱騎は思考を止めた。このままいけばダメな方向に意識が持ってかれてしまう。
とりあえず、このことについてはあまり考えないようにしよう。そう壱騎は決意した。
「なぁ、搭堂、真城どれくらいあぁしてるんだ?」
「うーん、30分くらいですかね?」
「よし」
そう言うと御伽はワイシャツの袖をまくりおもむろに冊月たちのところへ歩き出した。慌てて二人が制止に入る。
「御伽先輩!?それはまずいですよ!?」
「夢路、それはアウトだ。下手しなくても殺されますぞ」
だが、筋骨隆々のこのマッチョマンをヒョロガリもやしボーイと一般男子高専生が止めようとしたしたところで台風を前にしたチリの山に等しい。
やがて二人の体力が底をつき御伽が全身を再開した。二人の顔に絶望が張り付くのと同時に救世主は現れた。
『冊月ちゃん、全員集まったよ』
突然、ハンガーの巨人が目を覚まし冊月に声をかけた_少女の声で。
「あ、テトラちゃん!押忍押忍!!休日も元気してた?」
『よっすです冊月ちゃん。休日はマスターとパーツの買い出しの後門限までの時間が余ったため小一時間ほど海辺で散歩をば』
「えーいいなぁ。壱ちゃんなんて、この前一緒に買い物行ったのに河川敷で寝ちゃって散歩なんてしてくれないんだよ?」
『アタシは眠るということができないのでうらやましいなぁ。ですがそれも、寝顔をさらすことができるほど信用しているということじゃないかな?』
「え、そうかなぁ~そういわれると照れるなぁ」
少女とハンガーにつられた少女の声でしゃべる鋼鉄の巨人がガールズトークを楽しむ、という傍から見たらちょっとどころでは済まないほど異質な光景にヒョロガリと一般男子は安堵していた。とりあえず、御伽が第三者によって抹殺されるという危険性は無くなった。そうなれば始まるのは一つである。
「壱騎くん、デート中に河川敷で寝るとは君もなかなかやるですな」
「先輩もテトラと海デート何でいいシュミしてますねぇ」
「「…‥‥‥」」
「「羨ましいわー」」
そう世間話である。この話に混ざれないナイスガイは目の前で問題が解決し、気恥ずかしさで頭をかいていた。
さて、この異質な光景を一般的な感性と常識を持った人間が見たらどうなるのか、その答えは先ほどまで冊月におもちゃにされていた杏の顔を見れば簡単にわかる。
〔思考放棄〕
孤門杏は目の前で起きた彼女の常識の範疇を超えるに理解を放棄した。これはそういうものなんだと魂に刻み付けていた。驚きの言葉もない。言葉さえ未知の衝撃で吹き飛んでしまった。もっとも彼女の言葉の中にこの状況に自分を対応させる魔法の言葉などないのだが…
「おう、何だ全員来てたのか」
昼寝から生還した村松が眠そうな顔を隠そうともしないまま随分と不遜な態度で部員を集めた。
「さて、今日集まって貰ったのはほかでもない。例の話の事なんだが」
「ちょっと、もったいぶらないでくださいよ、先生」
壱騎はワクワクが抑えられないといった様子だった。ほかの面々も壱騎ほどではないにしろ皆一様に村松の言葉を待っていた。
「まぁまぁ、そう焦るなって。‥‥‥okだ」
「‥‥‥マジですか?」
「大マジだ」
沈黙。一瞬にして場の空気が刃物のようなエッジを纏った。
「や…」
「「「「やったぁ!!」」」」
そしてその空気を吹き飛ばすような歓喜の雄たけび。4人全員が歓喜していた。
「よし!これで俺のジャンクランナーの初陣じゃぁ!!!」
天に向かって己が喜びを叫ぶもの。
「それではシステムの調整でもするでございますかね」
『お手伝いしますマスター』
喜びをかみしめ自分の仕事を進めようとするもの。
「やったね壱ちゃん!」
「うっし!!あぁー気合入ってきた!!」
闘志を燃え上がらせるもの。
皆一様に気分を高揚させていた。無理もない理由も理由なのだから。
さて、そんな熱気の外にいる人物がいた。杏である。ようやく思考を再開したと思ったら、今度は自分以外のほとんどの人間が狂喜乱舞しているのだからまた気をやりそうになった。
「あのー大丈夫?」
そんな彼女に声をかけたのは冊月だった。杏に緊張が走る。
「さっきはごめんね。あたし一回興味を持つと周りの声聞こえなくなっちゃうタイプで…」
とても申し訳なさそうな顔をしている冊月をみて不思議と笑いが込み上げてきた。
「えー何で笑うのさ」
「なんだか少しおかしくって…」
悪い人ではないのかもしれないと杏は思い始めた…行動を除いては。
「そういえば、私の自己紹介してなかったね。私、孤門杏」
「孤門杏…いい名前だね!」
「ありがとう」
悪い人ではないのだろう、杏の名前を褒める彼女に悪意と呼べるものは感じられない。仲良くなれるかもしれないとそんな淡い思いも湧き上がってきた。
「ねぇねぇ、これから杏ちゃんって呼んでもいい?」
「うん、じゃぁ私も真城ちゃんって呼ぶね」
「どうぞどうぞ。よろしく杏ちゃん」
「よろしく、真城ちゃん」
仲良くもなれたしあだ名も手に入れた。上出来だ。うれしくってなんだかホクホクしてきた。
「おや、復活したようでございますな」
タブレット片手に部室内を歩き回っていた智電が声をかけてきた。
「あ、はい」
「おっと、自己紹介がまだでございましたな。私は智電瑛太。電気工作科の三年です。主に電気系統の作業を担当しております。」
見た目からは想像もつかないほど紳士的な智電に意表をつかれた。見た目さえよければモテるのだろうなとそんな失礼なことを考えてしまう。
「あっちの筋肉モリモリマッチョマンのナイスガイは私の同級生の御伽夢路。あいつは機械科でございますな。この部のメインメカニックを担当していて、どんなものでも現実にしてしまう様から「魔法使い」と呼ばれてるでございます。頼りになる最高のナイスガイであります」
やたらと褒められたナイスガイの御伽はハンガーの巨人に左腕を取り付けているところである。
壱騎も同じく取り付け作業を行っている。
「あの、あのマーシャル?ってなんですか」
「あー、そういうのはあそこにいる壱騎くんに聞くといいよ」
智電の言葉を受け、ハンガーへと向かう。その途中、冊月から「危ないからこれ付けてね」とヘルメットを渡された。なるほど、壱騎が必死の形相で止めようとしてたのは危険だったからかと先ほどの行動の意味を知ると同時に、悪いことを言ったことを後悔した。
ハンガーでは壱騎と御伽がせわしなく可動部の調整や接続の調整を行っていた。
機体内部での作業をいったん休憩しようとしていた壱騎の眼にもじもじしている杏の姿が映る。
隣接されている階段から地上へと降り、彼女のもとへ駆け寄る。
「どうしたんですか?」
「あの、その‥‥ごめんなさい」
「!?」
正直、壱騎は驚いていた。いきなり押し倒したこっちのほうに非があるし、危険だと伝えなかったのも悪かった。謝られるとは思ってもいなかった。
「私が不用意に近づいて危なかったから止めてくれたんだよね。それなのにひどいこと言ってごめんなさい」
「いえいえいえいえ、事情を伝えなかったこっちも悪かったですし何より年頃の女性を押し倒すという最低の行為をしてしまいました。本当に申し訳ありません」
頭を下げる杏よりもさらに深々と頭を下げ、謝った。先ほどの喜びは罪悪感で消えてしまった。
「「‥‥‥」」
黙り込んでしまう二人。何とも言えない空気が二人の周囲に漂う。
見かねた御伽が助け船を出す。
「お二人さん、仲良く謝ったんだし仲直りでいいんじゃないか」
今日ほど御伽のことをありがたいと思ったことはないと壱騎は心の中で感謝していた。
「えと、じゃぁ仲直りということで」
「うん、仲直り」
壱騎と杏の二人は巨人の背面にある椅子と機材が詰まった空間にいた。壱騎が椅子に座り、杏が横の階段に腰掛ける形である。その空間は人一人がぴったり収まるほどのサイズで上部にはふたも備えられており密閉できるようになっていた。
「ここはジャンクランナーのコックピット。ブロックタイプの脊髄兼用埋め込み型で脱出機能有もちろんパラシュートもついてるよ。型番は10年以上も前だから廃盤になってる古い奴だけど、内部の機器は比較的に新しいのに変えてあるよ」
「うーん、なるほど‥‥‥後半の脊髄云々はわからなかったけど、ジャンクランナーってのはこの子の名前?」
やはり、杏はこの手の話題には疎いようである。
「そう、こいつは我が部のマーシャルで俺の機体のジャンクランナー」
自信満々な顔で胸を張って紹介する壱騎はなんだか幼い少年のようである。説明は続く。
「もともと、この建物に放置されていたこいつを去年から1年かけてどうにかこうにか修復してるとこと。脚部は既存の機体と同じくらいのスペックは出せるようになったんだけど、腕部はまだマニュピレーターが完成してないから今は代替えのハンマーアームを取り付けてる。こいつもすごいんだぜ、なんてったって孤高の殴り屋「カエストス」とおなじハンマーなんだから!レプリカだけど…」
早口でまくし立てる壱騎に少し押され気味の杏。なるほど熱意はすごいのだとそれだけは実感できた。
「好きなんだね…」
勢いよく身を出す。
「当たり前だよ!なんてたって世界で一番カッコいいからね!俺の目標はアストロボーイみたいなヒーローになることだから!!」
天高くこぶしを突き上げる壱騎。だが天井に近いため勢いの付いた拳を思いっきり鉄骨にぶつけてコックピット内で悶える。声にならないか細い叫びでのたうち回ってコックピットのシートの上で2転3転する。
「あの、大丈夫?」
もちろん、大丈夫そうには全く見えない。
『仕方がありませんね、ここからはアタシが説明しましょう』
突然、コックピット前面の円状のモニターに球体の上半分を分割してその間から大きな丸い目を覗かせる謎の銀色の存在が映り、声をかけてきた。
「どぅわぁぁぁぁ!!‥‥‥さっきの声?」
『初めまして孤門杏さん。アタシはテトラ。マスターによって造られた情報統合管理制御用多目的人工電脳…いわばAIです。本来はマスターのスマホの中に入っていますが、部活中はこのジャンクランナーないにジャンプし機体の情報処理、問題個所の精査を行っています。質問はございませんか?』
「いっぱいあるんだけど…とりあえず、マーシャルってなに?」
『なるほど、それでしたら紹介用の動画がありますので再生しますね』
さっきまでテトラがいたモニターに動画が再生され始めた。
『初めまして。僕は特殊ロボット技能部の搭堂です。これから特殊ロボット技能部の紹介とジャンクランナーの説明を始めます。』
動画に映るっていたのは杏のすぐ横で痛みに悶えている塔堂だ。緊張して声も上ずっている。
「めっちゃ緊張してるね」
『この動画を撮ったのは一か月ほど前ですが、壱騎がここまで緊張しいだったとは思いませんでした』
その間も動画は進む。ホワイトボードに書かれた年間の活動予定を棒きれで指しながら部の概要を説明していく。
簡潔に言うと、
・当面の目標は夏に行われる全国大会地区予選への出場
・活動はそれぞれの自由、土日は休み
・人数が足りないので入部してほしい
の3つが説明された。続いて場所はホワイトボード前からハンガー前へと移った。
『では、ここからはジャンクランナー及びマーシャルとは何なのかを説明させていただきます』
「お、ようやく私の見たかった所だ」
『えー、まずマーシャルとは何なのかの説明をさせていただきます。1990年代後半から世界では人型の作業用重機「ワーカー」が普及し始めました。これは学校でも習いますね。で、このワーカーを総合格闘用…言ってしまえばワーカーによるプロレス用に製造されたのが総合格闘競技用特殊軽車両、英語で言うとMartial Arts Special Light Equipment頭文字をとってマーシャルと呼ばれています。燃料、動力炉はワーカーと変わらないですが、それぞれが個別にお金をかけてチューンされているので運動性能なんかはワーカーとは比較になりませんね。スポーツカーと一般車両の違いみたいなもんです。』
「なるほどなるほど」
頷いてはいるが、全くわかってなかった。
『それではこの部のマーシャルであるジャンクランナーの説明をさせていただきます。機体名ジャンクランナー、全高5.8メートル、重量1.5トン。動力炉はタイニーエレクトロニクス社製のTE-LAR-33光粒子撹拌増幅炉。最高出力50000kwのナイスな奴です。燃料にはFEポッドを2個積んであります。正直2個でもかなり無理してます、スペースがないもんでして・・・。こいつの機体フレームは20年以上も前のコックピットブロック脊柱一体型のレトロな奴です。コックピットブロックの製造も終わってますし、正直言うと最近の胴体コックピット一体型に比べると時代遅れもいいとこなんですが、分解のしやすさではコイツのほうが勝ります。総じて扱いやすくて素直な奴です』
最後に、勧誘の願いで動画は終わった。
それと同時にモニターにテトラが戻ってきた。
『どうです?少しはわかりましたか?』
「まぁ、なんとなく…」
ようやく痛みから戻ってきたのか壱騎がコックピットからひょっこりと顔を出した。
「あのー杏さん?動画見てもらえれば分かると思うんですけど、できれば、その、特技部に入ってくれると嬉しいなて…」
「‥‥‥」
沈黙。杏は考え込むように頭をうなだれる。
しばらくして顔を上げた。
「無理かなぁ…‥‥」
どうやら、人員カツカツ問題は永久に解決しそうになさそうである
つづく
一回全部書いたのが消えて地獄でした。
まだまだ心は折れてません。