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転生した弓道部員が、暇つぶしで弓使いに弓道を教えることになった件

作者: おむすびころころ

なろうラジオ大賞2をきっかけに、初めて小説を投稿します。

初めてなので拙い点も多いと思いますが、よかったらご覧ください。


転生した瞬間、既に魔法学者になることが決まっていた。

俺、体育会系なのに。

学者で研究とか、合わなさすぎね?



その日俺は、自分の小屋で古代文字の調査をしていた。27回目のあくびをしたとき、


ズゴン!!


屋根に矢が突き刺さっていた。 は?


「すみません!

私新人の弓使いなんですけど、練習してたら矢を飛ばしすぎてしまいました!」





矢は毎日、俺の小屋へ飛んできた。

相変わらず魔法学者の仕事を好きになれない俺は、思わず文句を言った。


しょげる女の頭に、垂れる耳の幻覚が見えた。

胸が、謎の痛みに襲われた。

気付けば、弓を教える約束をしていた。

俺には弓道の記憶があったから。






翌日から、元弓道部の俺と弓使いの弓道訓練が始まった。


弓を握りこむな、弦を離すのを怖がるな、必要なところだけに力を込めろ。


ぽおん、と矢が、俺の家の方へ飛んで行った。





遅くに帰って、魔法学者の仕事をする。

目をこじ開けて古代文字を読んでいるとき、ふと我に返った。


なぜ運動好きな俺が学者で、どんくさ女が弓使いなんだ?

俺は戦う方が性に合っているし、俺が弓使いになった方が、何倍も効率いいはずなのに。


そう思ってしまった日から、冷静に教えられなくなった。






「飛ばされる矢がかわいそうだ」

「矢を直接投げた方がマシだろ」


何を言われても、女は弓から逃げなかった。

魔法学者の仕事を放り出している自分には、耐え難いほど眩しく感じた。


なぜか無性にいらついた。

だから、つい吐き捨ててしまった。


「お前は弓使いに向いていない」


あ、泣く。


ほろり。


やってしまった、と俺は素直に思った。


しかし女は、涙を流しながらも新たな矢を手に取った。


構えた弓越しにその涙を見たとき、俺は不思議な胸の痛みを感じた。





奇妙な訓練が始まってから、2度目の満月の日。

矢が、的にあたったのだ。


それはつまり、


本物の新米弓使いになったということ。そして、



この関係も終わりだ、ということ。





弓使いは出発の朝、自分のパーティを俺に見せに来た。


「勇者に僧侶……、戦士系お前だけなのか」

「そうなんですよ、大丈夫ですかね?」


不安に揺れる瞳を見つめる。俺は、初めて優しい声を出した。


「お前ならもう、一人でも大丈夫。

旅の途中、読めない古代文字があったら知らせてくれ」



いってきまーす!

弓使いと仲間たちは、旅に出た。

危険な目にも遭うだろう。新しい仲間とも会うだろう。


俺は、何だか急につらくなった。胸が痛くなった。


寂しい。


この気持ちは、

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― 新着の感想 ―
[一言] それが、しばらく共に過ごした弓使いへの恋や愛なのか、自分の仕事を全うできる弓使いへの羨望なのか、はたまた自分だけそこに置いていかれる寂しさなのか、読み終えた後に人それぞれで考える隙間というか…
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