転生した弓道部員が、暇つぶしで弓使いに弓道を教えることになった件
なろうラジオ大賞2をきっかけに、初めて小説を投稿します。
初めてなので拙い点も多いと思いますが、よかったらご覧ください。
転生した瞬間、既に魔法学者になることが決まっていた。
俺、体育会系なのに。
学者で研究とか、合わなさすぎね?
◇
その日俺は、自分の小屋で古代文字の調査をしていた。27回目のあくびをしたとき、
ズゴン!!
屋根に矢が突き刺さっていた。 は?
「すみません!
私新人の弓使いなんですけど、練習してたら矢を飛ばしすぎてしまいました!」
◇
矢は毎日、俺の小屋へ飛んできた。
相変わらず魔法学者の仕事を好きになれない俺は、思わず文句を言った。
しょげる女の頭に、垂れる耳の幻覚が見えた。
胸が、謎の痛みに襲われた。
気付けば、弓を教える約束をしていた。
俺には弓道の記憶があったから。
翌日から、元弓道部の俺と弓使いの弓道訓練が始まった。
弓を握りこむな、弦を離すのを怖がるな、必要なところだけに力を込めろ。
ぽおん、と矢が、俺の家の方へ飛んで行った。
◇
遅くに帰って、魔法学者の仕事をする。
目をこじ開けて古代文字を読んでいるとき、ふと我に返った。
なぜ運動好きな俺が学者で、どんくさ女が弓使いなんだ?
俺は戦う方が性に合っているし、俺が弓使いになった方が、何倍も効率いいはずなのに。
そう思ってしまった日から、冷静に教えられなくなった。
「飛ばされる矢がかわいそうだ」
「矢を直接投げた方がマシだろ」
何を言われても、女は弓から逃げなかった。
魔法学者の仕事を放り出している自分には、耐え難いほど眩しく感じた。
なぜか無性にいらついた。
だから、つい吐き捨ててしまった。
「お前は弓使いに向いていない」
あ、泣く。
ほろり。
やってしまった、と俺は素直に思った。
しかし女は、涙を流しながらも新たな矢を手に取った。
構えた弓越しにその涙を見たとき、俺は不思議な胸の痛みを感じた。
◇
奇妙な訓練が始まってから、2度目の満月の日。
矢が、的にあたったのだ。
それはつまり、
本物の新米弓使いになったということ。そして、
この関係も終わりだ、ということ。
◇
弓使いは出発の朝、自分のパーティを俺に見せに来た。
「勇者に僧侶……、戦士系お前だけなのか」
「そうなんですよ、大丈夫ですかね?」
不安に揺れる瞳を見つめる。俺は、初めて優しい声を出した。
「お前ならもう、一人でも大丈夫。
旅の途中、読めない古代文字があったら知らせてくれ」
いってきまーす!
弓使いと仲間たちは、旅に出た。
危険な目にも遭うだろう。新しい仲間とも会うだろう。
俺は、何だか急につらくなった。胸が痛くなった。
寂しい。
この気持ちは、