第一話 異世界ってWi-Fiないの?
初投稿です。
更新ペースも遅いですが暖かい目で見守っていただけると嬉しいです
「はあ、ついに新学期か。」
そう呟き僕は誰もいない家を出る。
一年間引きこもり続けた僕、黒野 習真は今日入学式へと行く。
高校生になり、引きこもる理由もなくなったから今日から普通の日常を過ごすことになるのだろう。
その時学校では集会が行われていたが指摘する人間もいないため気付かずに時間は過ぎていた。
~*~*~*~*~*~
家を出てから数十分、ついに学校に到着し、校門をくぐったところで体育館からの音が漏れてきた
「それでは我が校に入学してきた皆さんには異世界に行ってもらいます」
その声を聞いた直後まばゆい光に包まれ意識が途切れた
~*~*~*~*~*~
目が覚めるとそこは大きな扉が一つあるだけの広い部屋だった。
「ここどこだろ、見たこともない場所だなぁ。まあ、WI-FIあればどこでもいいや。」
そんな緊張感のない声を上げた習真に対し回りから罵声が飛んでくる。
「バカなのかお前!」
「もし校長が最後に言ってたことが本当ならここは異世界なんだぞ!」
「ふざけたこと言ってる場合じゃないのよ!」
周囲にいた生徒たちから次々に罵声を浴びせかけられ、その声にまわりが注目する。
「ヒェッ…人多すぎでしょこれ…引きこもりには辛すぎるって。」
習真は、改めて回りを見渡してみる。回りの目は自分に集中しているではないか!!
「あっ無理だ。」
そう言ってパタリと倒れてしまう。
一年間引きこもっていたせいでコミュニケーション能力が消滅してしまった習真には人からの注目は刺激が強すぎたのである。
~*~*~*~*~*~
習真が倒れてから数分後…
「おい、お前たち王がお呼びだ。来てもらうぞ。」
開かないと思われていたその扉が開き、屈強な兵士が現れ、辺りはさわがしくなっていく。
「そもそもここはどこなんだよ!どこにいるかもわからないのにいきなり王に会えだなんて素直に従うとでも思ってたのかよ!」
「従わぬ者は殺めてしまってもかまわん。と我々は王から言われている。その意味はわかるな?」
突如身に迫ってきた恐怖に皆我を忘れて扉へと走って行く。兵士が扉の向こう側へと消え、取り残された生徒たちも次々と入っていく。
ただ一人気絶している習真を除いて…
~*~*~*~*~*~
「こっち見ないでよぉ!」
目を覚ました習真は辺りを見回し、回りに誰もいないことに気づいた。
「あれ?僕以外誰もいなくなってる…まあいいや。別に誰もいなくても。」
習真はそう呟くと早速コートのポケットに入っていたスマホを取り出す。
「WI-FIがない…だと!?僕はどうやって生きてけばいいんだ。」
そう。ここは異世界だからWI-FIなんてあるわけがなかった。家に籠っていたから習真からすればWI-FIはあって当たり前のものなのであった。
習真はいかにもめんどくさそうにしながら、
「WI-FIないならもういいや、そこの怪しい扉にレッツゴー。さっさと家に帰るしかないな。」
~*~*~*~*~*~
習真が目覚めたのとちょうど同じころ…
「これより陛下がここにこられる。貴様らは所詮召喚され、こちらの常識もないのだから抵抗などしてくれるなよ?」
釘を刺され、召喚された生徒たち120人は皆目立ちたくないと言わんばかりに下を向いている。
「ひざまずけ、王の御前であるぞ。」
頭を下げ抵抗する気はないと伝える。
「面を上げよ。貴様らを召喚したのはここから遥か北に住まう魔王を討伐してもらうためだ。」
「俺らただの学生だぞ!」
「戦いなんてできるわけ無いじゃない!」
口々に文句をいい始めると、
「口を慎め!貴様らは召喚された時点で勇者の力に目覚めておるわ!訓練する施設だって用意しておる。文句は死にかけるまで訓練してから言え。」
「あのーすいませーんここってWI-FI使えます?」
習真が扉をくぐり直進して初めて見つけた部屋はなんと謁見の間であった。
「貴様何者だ?」
「あっ、あ、あの?ぼぼぼ僕は習真です。」
「名など聞いておらん!」
「この城は家臣のものか召喚された異世界人しか入れないはずだ!」
「ぼっ、僕召喚された異世界人です。多分だけど…」
「おい!報告では全員まとめて部屋から出たと言っておったよな。」
「はは、陰キャは存在すら許されないのかよ。目から汗でてきた。」
「とにかく、貴様らには明日から戦闘の適正をはかった上で訓練に参加してもらうぞ。おい、宰相、勇者達を案内しろ。」
「かしこまりました。それでは皆様こちらの部屋でおくつろぎください。お部屋は二人一組となっておりますゆえ各自で決めてください。」
ホテルのスイートルームのように豪華な部屋だった。入学式な遅刻し、悪目立ちしすぎた習真と同じへやに入る人はいなかった。
「僕は一人か。僕以外誰もいない空間。なんて素晴らしいんだ。」
こうして、異世界転移して最初の夜は更けていくのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございました