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episode7:ダーカーの憂鬱

「申し訳ありませんでしたっ! 」

 隊員たちは深々と零に頭を下げていた。操られていた訳ではないので零を襲おうとした記憶はハッキリと残っていた。

「お前たちがロゼを慕っている事はよくわかった。」

「それでしたら… これからもロゼ様をよろしくお願いいたしますっ! 」

 隊員たちは一列に並ぶと深々と頭を下げた。

「いきなりだな? 」

「今回の件で我々のように心の隙を突かれるようではロゼ様も国も守りきれません。ゼロ隊長、宜しくお願い致しますっ! 」

「こちらそ、宜しくだ。俺一人で全てを守れる訳じゃない。頼りにしている。」

「はいっ! 」

 心の隙と聞いて零は心の中で自嘲していた。超能力戦サイキック・ウォーの最前線に居た零からすれば隙など見せられる筈もなかった。

「どうやら片付いたようだな。」

「寝たんじゃなかったのか? 」

 それは寝ると言って引っ込んだ筈のミロだった。

「寝たのだが、気になって目が覚め・・・いや。お前に嘘は通用しないのだろ? お前がやられるとは思っていないが気になってな。途中から隊員たちをどうするか見ていたよ。皆も尽くせよ。」

「はっ! 」

 国境警備隊員たちはミロに一礼をすると、その後ろ姿を見送った。

「お前らも早く寝ろ。」

「はっ! 」

 内部崩壊を目論んで、逆に結束を固めてしまった。この状況をダーカーは憂いていた。

「ガエンヴィ。勝手に出向いておいて、なんたる様だ。」

「あれは、ゼロの事を甘く見ていたからだよ。今度は上手くやるよ。」

 だが、ダーカーは首を横に振った。

「お前はラース・ロットやシャルル・ダークの報告をちゃんと聞いていたのか? ラスト・レッドの失敗を見ていたのか? 暫く謹慎しておれ。」

「ど、どうしてだよ!? 皆だって失敗したのに、どうして僕だけ謹慎なんだよっ! 」

 叫び続けるガエンヴィをダーカーは強制的に下がらせた。

「さてと、どうしてものかな。」

 ダーカーとしては時を見て兵を起こした筈であった。魔法の通じない軍団を築いた時点で勝利を確信していた。それが突如現れた一人の男の所為で計画が狂ってしまった。

「私が参りましょうか? 」

 一人の騎士が歩みでた。

「いや、ダーク・フリードよ。奴等の魔法が通じないという我々の優位性が、あのゼロという男には通用しない。ここでお前が失敗するような事があれば全体の士気にも関わる。」

 九帝国のうち、最南端に位置する緋焔帝国を早々に落とし、北上する予定であったが、それが落とせない。ダークキングダムから攻め込むには常套手段かと思われたが、そうもいかなくなった。ダーカーとしては頭の痛いところである。

「どうなさいます? 緋焔帝国を避け、山越えをして先に別の帝国を攻めますか? 」

「いや、ゼロの能力を探るのが先だ。ラストがロゼ王女を拐った時の尋常ではない駆けつけた速さ。山越えなどしていたら、簡単に見つかるだろう。」

 ラストからの報告によれば、一切の痕跡を残さなかった筈にも関わらず、ロゼが目を覚ました途端にゼロが現れたという。

「ならば、なおさら私が参りましょう。並みの兵士ではゼロの能力を探るどころか、何の情報も得られますまい。」

「・・・よかろう。だが引き際を見誤るなよ。」

「御意。」

 ダーク・フリードは早々に一人で出立した。

「シャルルは居るか? 」

 ダーカーの声に応えるようにシャルルが姿を現した。

「ここに。」

「シャルル。山を越え、橙雷帝国を落とせ。緋焔を背後から突く足掛かりを築くのだ。」

 ダーカーの指示にシャルルも驚きを隠せなかった。

「橙雷の雷帝マロも、元はと言えばエトワールを滅ぼしたエクレールの将。怨みを晴らす絶好の機会。躊躇う必要はあるまい? 」

「エトワールの名はとうに捨てました。シャルル・ダーク、ダーカー王の将として橙雷帝国を落として見せましょう。」

 シャルルもまた、少数の精鋭を引き連れて出立した。

「前門の狼、後門の虎ですか? 」

 シャルルと入れ代わりに一人の騎士が入ってきた。

「パーシュ・ヴァルツか。全ての策を伝えていてはゼロに読まれるような気がしてな。」

「いいんじゃないですか。さすがは、我らが盟主。我らは一人では晴らせぬ怨みをダーカー王に託した怨託の騎士団。託したからには、如何なる策であろうと従うまでですよ。」

 パーシュの言葉にダーカーは満足そうに頷いた。

「ならば、パーシュ。ダーク・フリードの後を追い、危うくなったら助けよ。」

「構いませんよ。城の中から離れた山の上のガエンヴィに気づくような化け物だ。どうせ、ゼロにはバレるでしょうけどね。」

「であろうな。だが、こんな志し半ばにも満たない時点で、ダーク・フリードを失う訳にはいかぬのだよ。シャルルの方もラースに追わせる。」

「シャルルも、ですか? ゼロ以外に我らの相手になる者が居るとも思えませんが? 」

「山越えには時間が掛かる。九帝国は同盟関係だ。ゼロが駆けつけぬとも限らぬ。」

「・・・つまり、ダーク・フリードには勝てないと? 」

「あやつは勝負に行ったのではない。ゼロの能力を探りに行かせたのだ。撤収が早くなれば、そうゆう事もあり得ると云う話しだ。」

 分からぬゼロの能力にダーカーの不安は拭えなかった。

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