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episode6:姿なき攻防

「帰るぞ。」

「はい。」

 零はロゼに自分の上着を掛けて抱き上げると一瞬で緋焔城へと戻っていた。さすがに馬で運ばれた距離を、寝衣姿で裸足のロゼと歩いて戻る訳にはいかない。

「このまま部屋に返してやりたいところだが、ミロにも顔を見せて安心させてやらないとな。」

 零はロゼを抱き上げたまま広間に入った。

「えっ!? あの… おろしてくだ… 」

 あわてふためくロゼだったが零は構わず最初に知らせてきたメイドに声を掛けた。

「すまない。ロゼの履き物を持ってきて貰えるか? 」

「お、お帰りなさいませ。た、ただいまお持ちします。」

 ロゼの顔を見るまで責任を感じて沈み込んでいたメイドは、嬉しそうにロゼの履き物を取りにいった。すると入れ替わるようにメイド長が入ってきた。

「よくぞ、御無事で。ゼロ様もよく姫様を見つけてくださいました。」

「あぁ。ロゼの声が聞こえたからな。」

 するとメイド長は首を捻った。

「姫様、気絶されていたと伺っておりましたが、そんな大声を出されたのですか? 」

「いえ。猿轡をされていたので心の中でゼロ殿の名を叫んだだけで… 」

「まぁ、素敵っ! 」

 大きな声を出したのはロゼの履き物を持って戻ってきたメイドだった。

「姫様とゼロ様は心と心が通じ合っているのですね。まるで物語のようですわ。」

「騒々しいぞ。」

「申し訳ございません。」

 待ちきれずにミロの方からやって来たのでメイドは慌てて三歩ほど頭を下げたまま下がった。

「ロゼよ。心の中で、お前は俺ではなくゼロの名を叫んだのか? 」

「そ、それは… 。」

 ロゼはメイドの持ってきた履き物を履いて恥ずかしそうな申し訳なさそうな表情で零の後ろに隠れた。その様子にメイド長が困ったお方だと云う表情で視線を送るとミロも笑い出した。メイド長にはミロが今まで見たことのない様子のロゼをからかって楽しんでいるのがわかっている。その頃、緋焔城の風上にあたる山の上に二人の男が立っていた。

「ガエンヴィ、本当に上手くいくのか? 」

「ラストは一度失敗したんだから黙って見ててよ。僕だって考えているんだからね。」

 ガエンヴィが硝子の小瓶の蓋を開けて赤い霧のようなものを撒くと風に乗って緋焔城へと流れていった。

「何だい、それは? 」

「対魔草から抽出した魔薬です。吸引すると人間の負の感情を刺激します。あのロゼという国境警備隊の前隊長さん、隊員たちに中々の人気者だったそうじゃないですか。」

「あぁ、中々のいい女っぷりだったぜ。」

「嫌だなぁ、品の無い。ともかく、この魔薬で隊員たちのゼロに対する嫉妬心を増長させます。殺意を抱くほどにね。別に操る訳じゃないから、簡単には気づかれない筈ですよ。」

 直接、乗り込んだラースやラストの失敗を考えれば、ガエンヴィの策は一考の余地があるかもしれない。ラストはガエンヴィの物言いが気に入らなかったが様子を見る事にした。

「さぁ、時刻も遅い。皆も寝るがよい。なんならロゼ、ゼロに寝室の警護を命じようか? 」

「け、け、結構ですっ! 」

 ミロは顔を真っ赤にしてメイドと一緒に下がっていった。

「陛下、あまり度が過ぎると姫様に嫌われますよ。」

 メイド長がタメ息を吐きながら言った。

「男勝りかと思っていたロゼが、あんなに浮わつくとは思っていなかったので、ついな。だが、控えるとしよう。ゼロ、先ほどの事もある。ロゼの寝室とは言わないが、警護を頼めるか? 」

 しかし、零は首を横に振った。

「いや、やめた方がいい。どうやら、次の狙いは俺のようだ。巻き込む訳にはいかないからな。」

「・・・そうか。では、気をつけてな。お主に何かあると、ロゼに叱られてしまうからな。」

 零は軽く会釈をすると中庭へと向かっていった。

「へ、陛下。宜しいのですか? ゼロ様の勘はよく当たります。ゼロ様にも護衛をつけるとか… 。」

「よい。あれは勘などという不確かなものではない。確信を持った眼をしておった。それに、ゼロの戦い方は根底から異なる。下手な兵など邪魔になるだけだ。すべてゼロに一任して俺は寝るっ! 」

「へ、陛下? 」

 メイド長は零の向かった中庭の方とミロの向かった寝室の方を戸惑いながらキョロキョロとするばかりだった。

「5人とも出て来い。」

 見つからぬよう、つけていたつもりが、あっさりと見破られて4人間隊員たちが姿を現した。

「樹の上っ! 5人ともと言ったはずだ。」

 渋々と弓に矢をつがえたまま5人目も姿を現した。予知能力を持つ零に不意討ちなど通用しない。

「悪いが、お前らの望みを叶えてやる訳にはいかない。」

 精神感応を持つ零には隊員たちの考えている事などお見通しだ。だが、殺意という部分には違和感を感じていた。念動力で隊員たちの動きを封じ込めると、中の一人に手を触れた。精神を研ぎ澄まし違和感の元を探った。

(そこかっ! )

 山の上で城の様子を窺っていたガエンヴィが突然、頭を押さえて踞った。

「どうした、ガエンヴィ!? 」

 突然の事にラストも動揺した。

「頭の中に… 奴の… ゼロの声が… 俺に小細工は通用しないと… 」

 ラストはそのまま気を失ったガエンヴィを連れて引き返して行った。

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