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episode5:ロゼ、誘拐

「なるほど、装備の見直しか。確かに野生の魔物とは訳が違うようだな。」

 城に戻ると零は早速ミロに相談した。ラースにいきなり襲撃を許したばかりである。隊長とはいえ常に零が国境に出向いている訳にもいかなかった。一方で自分たちの城に戻ったラースとシャルルも報告に追われていた。

「二人とも、戻ったばかりで悪いが報告を聞こうか。」

 城の広間にある巨大な円卓の一番奥に座っていた男が二人に声を掛けた。シャルルは同志と言っていたが、この男だけは別格のようである。男の名はダーカー・デスドラゴン。ダーク・キングダムの盟主である。

「ダーカー王。あれは我等が計画の妨げになる存在だ。早めに手を打つべきだと俺は思う。剣も魔法も通じぬ黒煙を難なく倒しやがった。」

 ラースは零に対して危険な匂いを感じていた。

「それは私も同意する。奴はこちらの手の内を悉く見抜いてくる。恐るべき洞察力です。」

 シャルルは自分の言葉を一切の躊躇なく否定をしてきた態度に畏怖さえ感じていた。

「黒煙を倒した事といい、二人がそれほどまでに言うのであれば、ただ者ではあるまい。ならば何か欠点や弱点のようなものは見つからなかったか? 1、2度手合わせしたくらいでは分からぬかもしれんが些細な事でもよい。何かを守ろうとしたとかはないか? 」

「守ろうとしたかは定かではないが、最初に城を襲った時に、前の国境警備隊長を救った速さは尋常ではなかったな。目にも止まらぬとは、まさにあの事だろう。」

 それを聞いてダーカーは少し考えた。

「前の国境警備隊長… 。確か、緋焔帝ミロの妹、ロゼとか言ったな。ならば、その者を拐ってまいれ。」

「拐う? 始末した方が早くないか? 」

 ラースが口を挟んだ。

「いや。下手に始末をしては怒りをこちらに向けるやも知れぬ。奴の能力ちからがお前たちの言う通りであれば、それは避けたい。それより人質として脅し、頃合いを見計らって闇色に染め上げて裏切らせるのだ。もし、その者に効果が無くともミロには耐えられまい。裏切り行為に怒ったとしても、矛先は我等よりロゼに向く筈であろう。」

「その役目、僕が引き受けてもいいかな? 」

 そこに端正な顔立ちの青年が立っていた。

「ラスト・レッド・・・また女を食い物にするつもりか? 」

 シャルルは侮蔑を込めた視線を浴びせた。だか、ラストは気にする素振りも見せなかった。

「妬きもち? 君も食ってあげようか? シャルル・エトワール。」

 次の瞬間、シャルルが剣に手を掛けたがラースが止めた。

「余程、死にたいらしいな、ラストっ! 」

「止めておけ、シャルル。ダーカー王の御前だ。ラストも挑発は止めろ。」

「さすがラース卿。怒りを鎮めるのも御得意だとは知らなかったよ。」

「ラスト、いい加減にせぬか。」

 さすがにラストもダーカーの言葉で控えた。

「よかろう。この件、ラストに任せよう。」

「お任せあれ。」

 ラストはダーカーに一礼をして広間を出て行った。そして、その足でラストは緋焔城に気づかれ難いよう、単身乗り込んだ。

「何者… 」

 寝所に忍び込んだラストに気づいたロゼを当て身を喰らわせて気絶させた。

「ロゼ様… 」

 物音に気づいて入ってきたメイドも同様に気絶させた。

女性レディに怪我は、させたくないからね。そのまま、暫く眠っていておくれ。」

 メイドをそのままにして、気を失っている寝衣姿のロゼを気がついてから暴れないように手足を縛り、騒がないよう猿轡を噛ませた。

「それじゃ、頂いていくよ。」

 ラストはロゼを担いで城を抜け出した。それから暫くして気がついたメイドは慌てて走り出すと、ある部屋の扉を叩いた。

「大変でございます。大変でございますっ! 」

「どうした? 」

 扉から出てきたのは零だった。

「姫様が、ロゼ様が拐われましてございますっ! 」

「ミロに知らせろ。俺は探しに行くっ! 」

 一方で、やはり気がついたロゼは馬上で暴れていた。

「こら、落ちるだろ!? 」

 ラストの言うことを大人しくロゼが聞く筈もなく、落馬した。だか、手足を縛られたままでは満足に受け身も取れず身体を地面に打ちつけてしまった。

「やれやれ。勝手な事をされちゃ困るんだよね。怪我でもしたら、どうするのさ? なんなら、今スグ僕のものにしてあげようか? 」

 半ば狂気にも似た恐怖感を抱いたロゼは声にならない声をあげていた。

(助けて、ゼロっ! )

 次の瞬間、ロゼの姿はラストの目の前から消えていた。辺りを探すと少し離れた場所で猿轡を外され手足の自由になったロゼが、零にしがみついていた。

「ゼロぉ。ゼロぉぉ。」

 余程、恐かったのかゼロの名を呼ぶ事しか出来なかった。

「イチャイチャと見せつけてくれるじゃないか。君が創世の破壊王と同じ名を持つ男、ゼロか。僕もロゼを拐い損ねた男とか呼ばれたくないから名乗っておくよ。ラスト・レッドだ。そのイチャつきぶりを見て決めたよ。僕は必ずロゼを手に入れて、君たちの仲を引き裂いてみせる。それまでは、せいぜい仲良く暮らすんだな。」

 ラストは馬に乗ると走り去って行った。

「追わないのですか? 」

 ようやくロゼも落ち着きを取り戻したようだ。

「奴を追ってたらロゼが風邪ひくだろ? 」

 零に言われて自分が寝衣姿であることを思い出し、ロゼは顔を真っ赤に染めていた。

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