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episode30:貪食竜

 それは緋焔帝国の門前にラースとパーシュが現れたのと、ほぼ同じ頃だった。橙雷帝国に乗り込んできた1人の騎士をレイが待ち構えていた。

「… 噂には聞いてるぜ。あんたがゼロの姉貴とかいうレイだな。」

「あいつ、誰だっけ? 」

 レイは匣に問い掛けた。

「でーた照合… 怨託ノ騎士、暴食ノぐーる・はっと。契約罪竜ハ貪食竜でぃう゛ぁぅあ。」

 グールは他に人気ひとけも無いのに声がしたので辺りを見回した。

「あぁ、そっか。トリヴィランとかいう騎士から付け替えられたんだっけ? 」

 レイはグールの名前を聞いて事前に読んだ資料を思い返していた。その様子を見ていたグールは薄笑いを浮かべていた。

「なんだか知らないが、その匣に秘密があるみたいだな。」

「そうよ。で、貴方はこれを奪おうとして失敗するの。」

 澄ました顔で答えるレイがグールには気に入らなかった。

「奪えないなら、まとめて喰らってしまえばいい。目覚めよディヴァゥアァッ! 」

 地鳴りが始まり橙雷帝国の大地が揺れる。だからといってレイに慌てる様子はなかった。

「うん、予定通り。あなたが罪竜を呼び出すのは判ってた。… ゼロみたいに事前に倒せると楽だったんだけどね。先にお城の皆さんには避難して貰ってあるから後は封印して御終いよ。」

「訳の解らない事、抜かしてんじゃねぇぞっ! 」

 グールはゼロが事前に憤怒竜イーラを倒した事を知らない。その時、匣から声がした。

「来マス。」

 その声と同時にゼロが姿を現した。

「じゃグールの相手は宜しくね。私は罪竜を封印してくるから。」

 レイはグールをゼロに押しつけるように、その場を後にした。大空に舞い上がったディヴァゥアを見上げるとレイはルッスーリアを捕らえた時と同じ球体を取り出した。

「さてと、お城ん中じゃ調整難しくて出来なかったけどディヴァゥアの動きを止めるわよ。念動力サイコキネシス増幅して。」

 匣は、そのままではゼロほどの力を持たないレイの念動力を増幅してディヴァゥアの動きを止めた。球体は投げて届くような高さではなかったが、この大きさならレイの能力ちからだけでも瞬間移動テレポートさせるのは簡単だった。上空で動けないディヴァゥアの上に球体を瞬間移動させるとポトリと上に落とした。罪竜自体は欲望の塊のようなものであり、ルッスーリアの残留思念を吸収した時と何ら変わらなかった。落下してきた球体に念動力で制動ブレーキ を掛けて受け止めるとレイは鞄にしまい込んだ。

「後は零にお任せっと。」

 元々、ゼロに罪竜の加護は通用しない。そしてディヴァゥアを封じられた事により九帝国の者でも魔法が通用するようになった。

「また、世話になったな。」

 そこには橙雷帝国、橙閃の雷帝マロ・グール・ラスコーが居た。

「貴様もグールを名乗るそうだな? 二人もグールは要らんだろっ! 」

 マロの放った魔法を弾いた者が居た。

「私が来るのも、判ってたんでしょう? 」

 そう言った者の視線はゼロに向けられていた。

「久し振りだな… シャルル・ダークだっけ。へぇ。初対面の頃より粗暴さが抜けたようだな。… いや、ダーカーが掛けさせた暗示が解けかけているのか。」

「暗示? 」

 ゼロの言葉にシャルルは思い当たる事があるのか一瞬戸惑ったが、それを振り払うように剣を構えた。

「そんな事で私が謀れると思うなっ! 」

 そんなシャルルをマロは暫く何かを思い出すように見つめていた。

「お前、エトワール王国のシャルル姫か? 大きくなったな。だか、何故ダーク・キングダムに身を寄せた? それにシャルル・ダークとは? 」

「うるさいっ! 」

 矢継ぎ早に質問を浴びせられてシャルルは苛立ちを隠さなかった。

「何が雷帝マロだっ。私にとってはエトワールを滅ぼしたエクレールの将に過ぎんっ! 」

 シャルルの言葉にマロは困惑したように首を傾げた。

「うぅむ。以前、エクレールで将を務めていたのは確かだがエトワールを滅ぼしたのはエクレールではない。」

戯れ言(ざれごと)を言うなっ! そのオレンジの甲冑に身を包み、兵を率いてエトワールを襲ったんだ。私は覚えて… 覚え… て? 」

 シャルルは覚えているつもりだった。しかし、マロを目の前に思い出そうとすると所々、記憶が曖昧になりハッキリしない。

「橙雷の血筋だったから皇帝を引き受けはしたが、この甲冑はその時に誂えた物だ。エトワール救援の際に纏っている筈がなかろう。」

「何を戯言たわごとを… 救援だと? そんな筈は… 」

「退くぞっ! 」

 戸惑うシャルルの腕をグールが掴んだ。しかし、罪竜の加護を失ったグールなどマロの敵ではない。

「まだ、話しの途中なのでな。」

 グールはマロにシャルルから引き剥がされると衛兵によって拘束され連れて行かれそうになった。だが、今度はその衛兵たちが吹き飛ばされた。

「へぇ。今度はダーク・フリードか。今日はちゃんと自分の得物を持ってきたか? 」

 ゼロとフリードは視線を交わすと緊張が走った。

「ゼロ。シャルルの暗示を解けるか? 」

 フリードの言葉にグールとシャルルは違う意味で耳を疑った。

「それはどういう… 」

 シャルルは意味を問おうとした。

「なんでバラしちまうんだっ!? 」

 焦ったグールの言葉がシャルルには答えに聞こえた。

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