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episode27:虚飾の残映

「この程度では満たされません。この身は血に飢え、渇いておりまする。次の獲物をお示しくださいませ。」

 謹慎中に何があったというのだろうか。トリヴィランの様子が以前とは変わっていた。いや、変えられていたと言うべきかもしれない。それを裏付けるようにダーカーは当たり前のように接していた。

「獲物は大きな方がよかろう。まずは手頃な皇帝を仕止めてまいれ。」

「御意っ! 」

 トリヴィランは頷くと姿を消した。

「ダーカー王、手頃なとは曖昧な支持ではありませぬか? 」

 ダーク・フリードからすれば、ダーカーの明確な意図の見えない指示を不思議に思った。

「これはゼロとの駆け引きだ。予め暗殺対象を決めてしまえば奴の事、先回りをしてくるに違いない。ならば、敢えて対象を定めずトリヴィランの自由に任せる。今のトリヴィランに計画性など無い。本能の赴くままに獲物を狙う。野生の獣よりも行動は読めぬぞ。」

 ダーカーの言葉にフリードは納得して部屋を後にした。

「ゼロが精神感応テレパスでこちらを読んでいるならトリヴィランの行動は読めぬだろう。だが、予知であれば、あまり効果は期待出来ぬがな。」

「なかなかに超能力者サイキックとは厄介な存在のようですね。」

 姿を見せずに声だけがした。

「お主の魔法とて敵に回せばなかなかに厄介であろう、マァリン。」

 マァリンは苦笑したがダーカーには見えていない。

「して、A2(アルターツー)の仕様はどうなさいます? 野心は削りますか? 」

 するとダーカーは一瞬考えたが、すぐに答えを出した。

「野心を削っては私に成り代わった時に先が見えぬ。アルターシリーズは我が分身。私の野心は向上心でもある。私に対する忠誠心を高めるだけでよい。」

「なるほど、貴方が逝かれたら野心が膨れ上がるようリミッターを設けるのですね。承知いたしました。」

 そう言い残してマァリンの気配は消えた。その頃、トリヴィランは九帝国の一つに居た。ゼロは自分の能力を自分で制御している。それは予知能力も然別である。能力が高過ぎて制御しなくては森羅万象あらゆる未来が見えてくる。そんな先の見えた人生など歩みたくはないし飛び込んでくる情報量が多すぎるからだ。故にゼロの意識の範疇から漏れた未来は見えてはいなかった。

「何か用かな? もう白陽帝国に虚飾竜ヴァニティは居ない。君たちには用無しだと思っていたのだけどな。」

 皇帝ソロに声を掛けられたのはトリヴィランにとっても意外であった。

「まさか気づかれるとは思わなかったな。」

 トリヴィランの言葉にソロは苦笑するしかなかった。

「見栄も外聞も棄てた私は、ただの普通の皇帝だ。」

「ただの皇帝か。それはそれは手強そうだな。」

 虚飾を纏い続ければ嘘が嘘を呼び、やがては綻びを見せる。今のソロは簡単には綻ばないのかもしれない。トリヴィランとしては暗殺するつもりで来たとはいえ腕には自信がある。不意討ちではなく正攻法でも負ける気はしなかった。

「さしずめ、罪竜が不在となった帝国の警備は手薄になっていると踏んだのだろう? 此方としては残念な事に正解だよ。それに罪竜が不在となった三帝国の中でもフェランの件があった紫闇帝国、皇帝ヒロを失ったばかりの藍嵐帝国と比べて白陽帝国が一番の手薄だ。いい狙い目だよ。」

 ソロの態度にトリヴィランは警戒を強めた。ソロは自分が狙われると知っていた。

「罠か… ゼロの仕業か!? 」

 ここまで読んで来るのはトリヴィランにはゼロしか思い当たらなかった。しかしソロは首を横に振った。

「いや、ゼロの姉上からの連絡だ。話しによると君はただの陽動らしいな。ゼロの姉上が現れた事でダーク・キングダムは2つの陽動を用意した。本命は直接、ダーク・キングダムと対峙する位置に在る九帝国の最南端、緋焔帝国だ。ゼロは元々、緋焔帝国国境警備隊隊長。そちらを優先して貰った。ゼロの姉上には、もう1つの陽動の対応をお願いしてある。どうだい、なんとも君に有利な状況だろ? 」

「何の為に!? 」

 トリヴィランには理解出来なかった。自分が殺される状況をわざわざ作り出し、更に警備を手薄なままにしているソロの考えが。

「警備を厚くしたら君が来ないかもしれないだろ? 君を1人で迎え撃つ事にしたのは理由は2つ。1つはロゼ殿に対する… 最後の見栄かな。もう1つは… まだ秘密にしておきたい事があってね。」

 トリヴィランは両手に漆黒の鎌を構えた。

「見栄だの秘密だのと… 所詮は虚飾の残映だな。」

 それを聞いてソロはクスリと笑った。

「虚飾の残映か。上手いことを言う… いや、大して上手くもないか。まぁいい。勝つのは私だしね。」

 不意を突くようにソロの放った光弾はトリヴィランの頬を掠めていった。思わず頬にやったトリヴィランの手に血が着いた。

「バ… バカな!? 貪食竜ディヴァゥアの加護を受ける俺が何故、九帝魔法でダメージを受ける!? 」

 焦りを見せるトリヴィランをソロは冷静に見つめていた。

「理由は2つ。1つは既に貪食竜ディヴァゥアの加護は君の物じゃない。こんな事をするのはマァリンだろうね。もう1つは… やはり、まだ秘密だよ。」

 余裕を見せるソロにトリヴィランは不吉なものを感じていた。

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