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episode22:沈黙のロザミア

「大丈夫に決まってるでしょ。姉さんを信じなさい。」

 そうは言ったものの、事実レイにはゼロほどの能力はない。そこでレイは小さな匣を取り出した。

「なんだ、そいつは? 」

 ゼロとしては初めて見る代物だった。

「私の造った、ちょっとした秘密道具。あなたも、(もう1人の時空跳躍者も)知らないネ。」

 つまり、ゼロやダーカーが、この世界へ跳んだ後にレイが造った何かしらの道具なのだろう。

「それじゃ、任せたぜ、姉さん(・・・)っ! 」

(自分で言うのはいいけど、零に言われると何か腹立つわね。)

 ゼロはくすりと笑って紫闇帝国へと跳んだ。それを待っていたかのように見覚えのある見知らぬ少女が現れた。

「よく出来てるわね、ロゼさんそっくり。」

 レイの言葉に少女…ロザミアは警戒した。ラストでさえ本物と見間違えた自分が、一見で疑いもなく見破られるとは思っていなかった。それ以前にレイは明らかにロザミアが現れるのを予見していたと思われる。

「何、驚いてるの? ゼロと戦った事が有るんでしょ、淫蕩竜ルッスーリア… の残留思念から造られたホムンクルスさん。」

 確かにゼロと対峙した時、ルッスーリアの攻撃がゼロを捉える事はなかった。しかし、その場にレイは居なかった。何を知っている。何処まで知っている。罪竜といえど未知なる者が存在る。そして、それがゼロだけではない事を知った。しかし言葉を持たないロザミアには返す言葉も無かった。一方でレイも精神感応テレパシスでロザミアの意識に飛び込む事は危険と感じていた。相手はホムンクルス、自然生命体ではない。ロザミアは身構えると瞳の色が朱く変わった。

「へぇ。データどおりね。ホムンクルスの擬似感情を刺激すると目が赤くなる。私の世界には現物ホムンクルスが居なかったから実際に見られるなんて思わなかったわ。」

 ロザミアの苛烈な一撃がレイを襲った。しかし、ゼロの時と同様にレイを捉える事は出来なかった。

「パワーは本物ロゼより上のようだけど当たらなければ関係無いのよね。」

 今のロザミアには言葉も無い。翼も無い。牙も無い。岩をも砕く爪も無い。武器は力と道具を持つ事の出来るようになった2本の腕。魔力は元々が色欲の罪竜、戦闘向きではない。

「貴女の目的、当ててみましょうか? ロゼさん… の躰でしょ? 器としてのロゼさん。確か資料に在ったわね。ラストとかの為? 元罪竜にしては健気よね。ホムンクルスにされる時に操作でもされたのかしら? 」

 突然、ロザミアは咆哮を挙げた。声にならない声。まるで地響きのような唸り。人の姿でありながら、さながら竜のように。そして朱き瞳は輝きを増していた。

「形態維持限界、越エマス。」

 突然、レイの匣から機械的な音声がした。言葉を持たないロザミアには、そんな音声さえも気に入らない。限界をを越えたロザミアの筐体は崩壊を始め、中から淫蕩竜ルッスーリアの残留思念が吹き出した。と同時にレイはテニスボールほどの球体を投げつけた。そして、みるみるうちに淫蕩竜ルッスーリアの残留思念を吸収してしまった。

「ふぅ。結果は分かっていても心臓によくないわね。この世界の封印を参考に、内圧を考慮して球形にした罪竜封印機… よく出来てるでしょ? 」

 レイの視線の先にはアルターが立っていた。

「あぁあ。せっかくマアリンに造らせたホムンクルスだったのに…。その技術、ダーカーより未來から来たんだよね? 良かったら仲間にならないか? 君なら僕と未来を変えられそうだ。」

 レイはアルターの顔を見ながら小首を傾げた。

「えっと… アルター・デスドラゴン… だっけ? ダーカーのレプリカの。」

 するとアルターかやや不満そうな顔をした。

「レプリカは酷いな。僕は、純粋な魔術的同位体だよ。君のデータベース、更新しといて貰えるかな? 」

「データベース… なるほどね。ダーカーのレプ… じゃなかった、同位体だけあって私たち(むこう)の世界の事も多少は知っている訳ね。」

 それを聞いてアルターは今度は苦笑いを浮かべた。

「今、わざと間違えたでしょ? 僕は罪竜ほど単純じゃないんでね。そんな安い挑発には乗りませんよ。」

 するとレイは呆れたように溜め息を吐いた。

「貴方って大して重要人物じゃないから、あんまりデータが無いのよね。」

「だから安い挑発には… あぁ、そうか。アルターとして表舞台に立つ事は、ほぼ無いからね。僕が表に立つ時は次のダーカー・デスドラゴンとしてだよね。」

 するとレイは大きく首を横に振った。

「違うわね。貴方は今のダーカーより先に歴史の舞台を降りるのよ。つまりアルターとして消える運命さだめなのよ。」

 さすがにアルターの表情も苛立たしそうだった。

「君の世界に、どう記録されているか知らないけど、そんな物は僕が書き換えてみせるよ。」

 アルターの言葉に、またもレイは首を横に振るのだった。

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