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episode21:追放のメロ

 翌日、紫闇帝国から正式に皇帝フェロの急な病による逝去とフェランの即位が発表された。それと同時にメロの皇位継承権剥奪と追放処分も発表された。その詳細は何も語られなかったが、それが憶測を呼び、フェロの死に関わるのではないかと噂された。

「メロ殿、どうなさる? これはあきらかな簒奪に他ならない。」

 ミロからの質問にメロも迷っていた。メロはフェロの今際の際の言葉どおり、ゼロを頼って緋焔帝国に身を寄せている。ただ、身柄の引渡しの要求をされぬよう内密にしていた。国内にメロ擁立派が居るうちはフェランにとっても都合が良かった。

「兄上、メロもようやく辿り着いたばかりです。もう少し… 」

「よいのです。」

 メロを庇おうとしたロゼだったが、メロ自身がそれを制した。

「兄上の背後には邪悪なる別の意思を感じました。これは紫闇帝国の巫女として申し上げておきます。」

「けれど、操られている訳ではない? 」

 ミロの言葉にメロが頷くとゼロが溜め息を吐いた。

「フゥ… 面倒だな。精神支配を受けているなら解除すればいいが、そう思い込まされているとなると、自分自身の意思という事になる。広義的には操られているともいえるが、こいつは本人を納得させないとならない。」

「そして、九帝国の中いる以上、九帝国に仇成す者とも言い難い。どうする、ゼロ? 」

 ミロも困ったようにゼロに問い掛けた。九帝国最南端の緋焔帝国は実情、ゼロが居る事でダーク・キングダムを抑止している。そしてフェラン率いる紫闇帝国は九帝国の北端に在る。つまり挟み撃ちにあっているような状況だ。瞬間移動テレポートしたとしても体が2つになる訳ではない。

「行きなさい、ゼロ。こっちは引き受けてあげる。」

 それはゼロには懐かしく、ミロやロゼには聞き慣れない声だった。

「ひか… 」

(ここじゃレイって事にしといてくれる? )

 名前を呼ぼうとしたゼロの頭の中に相手の声が直接、響いてきた。

「何者だ? どうやって此処へ参った? 」

 するとレイは片膝を着いて頭を下げた。

「お初にお目に掛かります。ゼロの姉でレイと申します。」

(姉!? どういう… )

(後で説明するから口裏合わせてくれる? )

 2人のテレパスは他の人間には聞こえていない。確かな事は、多少見た目が変わっているがレイと名乗った女性が地球連邦軍でオペレーターをしていた麻野ひかり本人だという事だ。

「ゼロのお姉様? でも、初めて逢った時には行く宛も帰る所も無い風来坊だって… 」

 ロゼは驚きを隠せなかった。

(行く宛も帰る所も無い風来坊? 何、下手な格好つけてんのよ。)

 レイは呆れたようにゼロに視線を送っていた。

故郷ふるさとは既に無く、行くあてもないるろ流浪の身。間違ってはおりません。」

「あいわかった。ならば、ゼロは即座に紫闇帝国に出向いて貰えるか? 」

 ミロは疑う事無くレイの言葉を受け入れた。いや、正確には違和感はあった。しかし、ゼロが否定をしないのであれば今は信じるしかない。ゼロに代わって緋焔帝国を守ってくれるというのならば、ゼロと同等ではなくとも同様の能力を有しているのだろう。そうであるならば、ダーク・キングダムに対して有効な手段が増えた事になる。焔帝としては感じた違和感なぞ些細な事に過ぎない。ロゼの兄としては別の思いもあったが、今はそれを言っている場合ではない。

「では策を練りますので少しばかり、弟と時間をいただけますか? 」

 ミロが頷くとゼロとレイは席を外した。

「何か老けた? 」

 レイの拳が勢いよく振られたが、ゼロのこめかみを軽く小突いただけだった。

「こんな事まで予知しないでよ。面白味が無いじゃない。…そうよ、零を見つけるのに5年も掛かっちゃったからね。そこから零の消えた年に来たんだもん。零の歳、追い抜いちゃったわよ。」

「それで“姉”か。ひかりが現れるのが分からなかったのは時間軸が違う所為だな。」

 年齢の上下関係が逆転した事をゼロは気にする様子も無かった。

「私がこの世界に来る前に、もう1人。零が来るより前の時間へ来た奴が居るの。まぁ、お陰で零の居場所も掴めたんだけどね。」

 それを聞いてゼロは小さく頷いた。

「なるほどね。奴も俺と時間軸が違う訳か。どうりで… 」

 そこで言葉を止めたのはメロがやって来たからだ。

「お話し中、申し訳ありません。私も紫闇帝国にお供させていただけますか? ゼロ殿は不意に空間を跳ばれるので、早めにお願いしなくてはと参りました。」

 少しレイは呆れた。レイが止めたのも聞かずに瞬間移動テレポートをして、この世界に飛ばされたというのに、不意に空間を跳ぶとは懲りていないようだ。

「ゼロ、連れていってあげなさい。姉さんからもお願いするわ。」

 レイには思惑があった。そして、この場面でゼロがレイの考えている事を読みにこない事を知っていた。

「仕方ないな。けど、こっちは本当に大丈夫なんだろうな? 」

 ゼロが心配するのも無理はない。どう考えてもオペレーターだったレイがゼロほどの能力を5年で身につけられるとは思えなかったからだ。

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