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episode19:怨託会議

 この日、ダーカーは怨託会議の招集した。建前としては同胞であり同士である。拒否権は怨託の騎士にもある。

「ガエンヴィ、俺も怨託の騎士なんだろ? 参加しなくていいのか? 」

 フェランが尋ねるとガエンヴィは作り笑顔で首を横に振った。

「君の怨託の騎士への参加は今日の会議で正式承認してもらってからだ。大丈夫。友達の僕が必ず承認してもらってくるから。」

「そ、そうか。」

 フェランはなんとなく納得してしまった。そんな様子を柱の陰でアルターは呆れながら見ていた。

「面倒だけど、そのお友達ごっこ。もう暫く続けてもらうよ。次の手の為にね。」

 ダーカーが居る限り、アルターが怨託会議に招集される事はない。アルターはそのまま姿を消した。

「皆、揃ったな。皆に託された怨みを晴らす計画に遅れが生じている。先日も同士グローウェイン卿と、その契約罪竜である虚飾竜ヴァニティが倒されてしまった。グローウェイン卿には哀悼の意を表すと共に、新たな怨託の騎士として紫闇帝国のフェラン皇子を迎えようと思う。異議のある者は居るか? 」

 既に決定している事である。たとえ敵対する九帝国の皇子だとしても異議など出る筈もない。それを、わざわざ会議に掛けるのは形式であると同時に総意である事の伝達でもある。個々には知っていても他の怨託の騎士がどう思っているかは知らされていない。それを会議で確認する事によって合議制でありダーカーの独裁ではないと印象づける為でもあった。

「フェラン… 皇子… ですか。」

「パーシュ・ヴァルツ。異議があるなら申してみよ。」

 ダーカーの言葉にパーシュは大きく首を横に振った。

「いえいえ。怨み抱く者であれば異論はございません。ただ… “ロ”無しのフェランに価値があるのかと。」

「“ロ”無し? 」

 パーシュの言葉に今度はシャルルが首を捻った。

「エトワール家は世間に疎いようですね。」

「何っ! 」

「よせ。」

 パーシュの態度にシャルルは反射的に剣の柄に手を掛けたがフリードが制した。

「さすがダーク・フリード卿、冷静なものですね。」

「いいから続けろ。」

 目も合わせずにフリードに言われたパーシュがダーカーの顔を覗くと無言で頷いたので続ける事にした。

「元々、九帝国に分裂する前の帝国を築いたゼロ… 紛らわしいね。始祖ゼロの末裔である九帝国の皇帝は、その名に“ロ”という音を遺すようになったとも、ゼロを倒した九人の将軍がゼロの過ちを繰り返さない為に名に“ロ”の音を遺すようになったとも云われている。何故そんな事をしたのかは大昔の事だから、本当のところは誰にも判らない。どちらにせよ、確かな事は九帝国の歴代皇帝にはある音がフェランには無いという事。御解り頂けたかな? 」

 シャルルはパーシュの言っている事は理解出来たが納得はしていなかった。

「単に“ロ”の付く名前が浮かばなかっただけではないのか? 」

「いや、これは九帝国憲章にも記載がある筈だよ。」

 パーシュの言葉にシャルルは薄笑いを浮かべた。

「そうね… そうだったわね。あいつらは何百年も昔に創られた九帝国憲章などというものに縛られている。変化も変革も反省も無いままに… 。ならば認めましょう。ロ無しのフェランを古めかしき憲章を否定する旗頭として。」

 元々、九帝国に叛意を持つ者の集まりである。シャルル・ダークの言葉はダーク・キングダムの総意として受け入れられた。

「私が紫闇帝国の皇帝に? 噂に聞いた。父上は存命だと。そして執政はメロが執り行っているそうだな? 」

 それは間違いではない。確かにフェロは生きているし、執政を執り行っているのはメロだ。だが、それはフェランが不在である事も一因ではある。しかし、フェランはそう思っていない。自分を排除し、メロに皇位を継がせる準備を進めていると。無論、思い込まされているのだがフェランも自分の出自を気にはしていた。自らの名に"ロ”の音が無い事を。

「気にする事は無い。この九帝国は古き罪竜を、その大地に押し込める為に生まれたようなもの。だが、もはや2つの帝国の地下に罪竜は存在しない。九帝国の秩序は崩壊したも同然だ。この国には改革が必要な時期なのだ。外の国を見てみろ。古き王権を打ち倒し新たなる王が誕生している国など、珍しくもない。そうだろ? 」

 九帝国のように古くから統治が変わらない国が無い訳ではないが、数える程である。

「改革が必要… 改革… いや、革命だ。革命を起こすのだ。そして九帝国を統一し、私が初代の皇帝となるのだ。」

 このフェランの反応はダーク・キングダムの論議の結果を伝えに来たガエンヴィにも意外だった。

(まるで強欲…権力欲か? 欲望が親妹への怨恨うらみを越えたか。『怨託の騎士』にも『九帝国の皇帝』にも資質の欠ける… 所謂は“ロ”無しと云う事か。)

 確かに資質には欠けるかもしれないが、駒として利用するには好都合ともいえた。ダーク・キングダムは紫闇帝国を墜とす為、フェランとその友を標榜するガエンヴィ、それに元々は紫闇帝国に封印されていた淫蕩竜ルッスーリアを基とするロザミアと契約騎士ラストを向かわせた。たったの4人でも紫闇帝国を墜とすには充分であった。

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