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episode15:九帝国の罪竜

 九帝国の中で唯一、他の帝国以外と接していない国がある。それが九帝国のちょうど中心に位置する蒼海帝国だ。ただし、蒼海と言っても内陸の帝国。巨大な湖と樹海が占める自然豊かな国である。その宮殿は湖にある孤島に聳え立ち防衛面から九帝会議の会場ともなっていた。

「それでは只今より九帝会議を開催する。なお、紫闇帝国は先日の一件によりフェロ皇帝が負傷され皇女メロ殿の出席となる。また、紫闇、橙雷、緋焔の三帝国の承認により緋焔帝国国境警備隊の隊長ゼロが出席する。本日の議長は蒼海のネロ・グラデュウス・カイザーが務める。」

「早速だが、ダーク・キングダム。奴らへの対策について協議したい。」

 口火を切ったのは橙雷の皇帝マロだった。零が所属する緋焔から言い出すよりよかろうと云うマロなりの配慮だ。

「そのゼロというのは身元は確かなのだろうな? 今回、出席を承認した3ヶ国とて、そのダーク・キングダムとやらの襲撃を受けた時には、その者が絡んでおったのだろ? 」

「そもそも禁忌ともいえるゼロを名乗っている時点で怪しいのではないのかな? 」

「違… 」

 違います、そう叫びかけたロゼをミロが制した。

「我が緋焔帝国の国境警備隊長をお疑いという事は、この第110代緋翼の焔帝ミロ・レーテ・スティングを、延いては緋焔帝国をお疑いと云う事ですかな? 」

「我が藍嵐帝国だけではない。今回、あの者の参加を承認した以外の6ヶ国は創世の破壊王の名を名乗る余所者を信じてはおらぬ。」

「な… 」

 今度は大声を上げそうになったメロをマロが制した。

「双方、落ち着くがよい。藍嵐のヒロ皇帝も見知らぬ者を信用出来ぬのだろう。」

「そん… 」

 口を挟もうとしたロゼをマロは視線で制して話を続けた。

「では、今後、ゼロをそちらの6ヶ国には立ち入りを禁止しよう。」

「さすがマロ皇帝。理解頂けたか。」

「何があろうと。」

「うむ。」

「罪竜が暴れようと。」

「!?」

 マロの一言は効果的だった。一瞬にして6ヶ国の皇帝の顔色が変わった。現に紫闇帝国に封印されていた淫蕩竜ルッスーリアは復活した。皇帝フェロが手も足も出なかった事から伝承通りか、それ以上の強さであると思われる。今の各国にそれを止める手立ては存在しない。そして、そんな罪竜を、たった1人で封じる事が出来るとすれば零しかいないのである。

「い、いや。ヒロ皇帝は6ヶ国と申されたが、我が白陽帝国はゼロ殿も緋焔帝国も信を置いている。」

「わ、我が緑樹とて信じておりますぞ。」

 するとネロは辺りを見舞わした。

「マロ皇帝。藍嵐帝国ヒロ皇帝の提出したゼロの不信任動議は棄却という事で収めて貰ってもよいかな? 」

 マロがミロを見ると、ミロは零に視線を走らせた。そこで零が頷いたので収まる事になった。ロゼだけは不服そうな顔をしていたが。

「では、本題に戻るとしよう。罪竜の復活について現場で巫女を務めていたメロ殿から伺うとしよう。」

「はい。私はいつもと同じように封印石に祈りを捧げておりました。あの日、突然地鳴りがして地震が起きたかと思うと一瞬で封印石に亀裂が入りました。初めは私が抑え込んでいたのですが、途中で父上が代わるから逃げるようにと。外へ出ると宮殿が崩れ兄上の行方が分からぬと。そこへロゼと… ロゼ殿とゼロ殿が駆けつけてくださいました。瓦礫の中から罪竜が現れるとゼロ殿に何か言っておりました。」

「してゼロよ。罪竜と何を話した? 」

「俺… 私が話したのは竜ではなく、そこに宿っていたダーク・キングダム怨託の騎士を名乗る者の1人、ラスト・レッドなる者。」

「なるほど。緋焔からも橙雷からも、その怨託の騎士とやらに魔法が効かぬと報告が上がっていたが… どうやら罪竜と契約を交わしているようだな。」

 このネロの発言に九帝会議はざわついた。なぜなら、ネロの言うとおりであれば、ラスト以外の怨託の騎士にも魔法が通用しないと云う事は他の罪竜も目覚めている事になるからだ。となると、既に目覚めている罪竜をどうするかと云う事が問題となってくる。

「ゼロ… いや、ゼロ殿。貴殿の母国に救援は頼めぬか? 」

 冷静な判断である。零の超能力を体系の異なる魔法と認識している。そして自分たちの魔法は通じないが零の魔法(だと思っている能力ちから)は通用する。もし、零の母国に零のような魔王使い(能力者)が他にも居るのであれば圧倒的に優位に立てる。だが世の中は甘くない。

「無理だな。第一に母国と連絡がつかない。第二に連絡がついたとしても今、私の母国(地球連邦)は戦争中だ。そして何より自分で言うのもなんだが私ほどの能力者(第一級超能力戦士)は母国にも滅多に居ない。」

「そう都合よくもいかぬか。それに戦時中とあれば連絡がつけばゼロ殿ほどの戦士は母国でも必要とされよう。… ミロ皇帝、ゼロ殿に罪竜については九帝国全体の警備をお願いしても宜しいか? 」

 ネロに問われてミロがヒロを見やると渋い顔で頷いた。

「どうする、ゼロ? 」

「1人じゃ無理だな。紫闇の時もロゼが一緒だから跳べたが。」

「ならば緋焔帝国国境警備隊長ゼロ殿及び皇妹ロゼ殿に罪竜の件はお任せする。無論、同時多発に暴れだした際は緋焔帝国を優先して頂いて構わぬ。」

 零の明確な回答を待たずに決定が下された。実際、誰も他の選択肢が浮かぶ者はいなかった。

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