最期
20××年、12月某日。
「.....この世は才能が全てだ。少なくとも僕の世界はそうだった。拝啓神様....僕の音は誰かに聞いてもらえましたか?僕の最期は誰が音にしてくれますか?.....才能の欲しかった人生でした。僕が死ぬのは僕のせいだ。今日、ようやく受け入れられたよ。」
僕は怜との同居をやめた後、バイトもやめた。だから今は薄手のカーディガンと薄いシャツだけ。もの凄く寒い。でも...もう死ぬからそんなことなんてどうでもよかった。
「せっかく奏って名前だったのにな。音楽しかないはずなのに音楽はできなかった。音楽を奏でられなかった。怜と違って僕は音楽に片想いか....。あの子は才能があるから。きっと音楽で生きていける。頑張ってよ....。」
昔ネットで見た確実に死ねる高さはビルの7階~8階。今いるところは下が見えないくらいの崖。確実に死ねるね。これで辛かった28年も終わりだ。
仕事がある人はもう起きる時間、怜はきっと寝てる時間。僕は落ちた....はずだった。飛び降りようとした瞬間に電話が鳴った。
「はい、もしもし。」
「奏さん!怜です!起きてたんですね、よかった!奏さんが先週だされた新曲が100万再生いきましたよ!見てないなら今すぐ見てください!!」
電話はまさかの怜だった。驚きつつも自分のアップしているアカウントを見に行くと確かに再生数は100万と表示されていた。
「数日前に、僕が生放送したんですけどその時にファンの方から曲を作ってる方で誰を尊敬しているか聞かれて、その時奏さんの名前をだしたんです!そしたら僕のファンの方が放送後すぐに聞きに行ってくれたみたいで....!!」
怜の話を聞きながらコメント欄をみると怜さんから来ました!とかそれに付け加えて今まで知らなかったけど凄く好き!なんでもっと早く出会えなかったんだろうなどというコメントで満ちていた。
「怜...ありがとう。」
その後僕の曲も伸びて怜と同じくらいに安定し、怜とはユニットを組んだ。暗い曲ではなく、暗くても前を向けるような曲作りをしている。
「怜~最近はやりの質問コーナーみたいなの生放送でやらない?」
「いいですね!やりましょう!」
怜とはまた同居をしている。お互い、そのほうがモチベーションが上がることに気づいたからだ。
「はい、次の質問。なになに?奏さんは一時期不登校だった時期があったという噂を聞きますが本当ですか?本当だとしたらその時期にあーすればよかったなどの後悔はありますか?だって。この質問攻めるねー。結論から言うとありました。中学一年から中学二年くらいまでかな?中一のときに体調を思いっきり崩したときがあって、そのままずるずると不登校の沼に....。でもね、それについての後悔は一つもないんですよ。それがなければ今の僕はなかったと思うし。結局人生無駄なことなんてないんですね。だから、もし僕のファンの方の中に不登校だとかそういう方がいて今辛くても、大人になればいい経験だったと思えるから僕らの曲を聞いて頑張ってほしいです。もちろん無理のない程度にね。あと、学校に行けない自分を責めすぎるのも駄目だけれどそれを人の所為にしするのも駄目だからね!これ大切!!」
「僕も不登校ではないんですけど、いじめを受けてた時があって当時ものすごく辛くて、前が見えなかったりしたんですけど今大人になれてるので!人生生きてりゃどうにかなります!」
今はこうやって生放送をしたり、レコーディングしたりの全てが楽しい。僕の昔の暗い音は明るい音に消えた。