作曲
20××年4月某日。ついに3年生になってしまった。あの後2年生の後半からはみんなと同じように普通に学校に行けるようになっていた。住人は消えなかったけど。前まで学校に行くたびに机に入っていたゴミもいつからか消えていた。毎日6時半には起きて一時間後くらいに家をでる。それを週に5回。ようやく中学生の生活を取り戻すことができた。
同年12月某日。高校受験の季節になった。僕は中学受験の二の舞にはなりたくなかったから、比較的偏差値の低い校則の緩い学校を選んだ。そして勉強はもともとできるほうだったから。勉強は必要最低限しかせずにゲームをしていた。そんな生活でも高校は楽々受かった。
高校に入ってパソコンと作曲に必要なものを全て買った。部活には入らないで学校から帰宅後は作曲の勉強にのめりこんだ。いつのまにかずっと頭の中でしていた3つの声もしなくなっていた。
「ついに...できた!怖いけど投稿してみるか.....。」
作曲を始めて3か月。ようやく一曲できたので歌を家に誰もいない時に録って知っているサイトに投稿をしてみた。投稿してしばらく経ったあとコメントが何個かついて見てみると評判はよかった。歌詞に共感できるとか、メロディーが独特で中毒になるとか、声がいいとか。その後何曲も作って投稿したがその初投稿の曲の再生数だけは上回らなかった。小学生のときに恥ずかしながら書いたシンガーソングライターの夢は高校生で叶えられたと思うと誇らしかった。
しかし、初投稿から2年が経つと新曲をだしても話題にならず、コメントにも最近の曲は独創性がないと書き込まれるようになっていた。曲をアップしはじめて知り合い、よくお世話になった作曲家の人にも、昔は今まで経験した辛さとかを音にだせててよかったのに最近は音が平坦だね君には明るい曲は向いてないと言われてしまった。
「やっぱ君は僕たちがいないとダメだね。」
何年かぶりにあの声が聞こえた。
「君は僕らに責められて辛い経験がいないといい音楽は作れないんだよ。音楽を作る才能はないんだ。だから明るい曲は向いてない。暗い曲しかつくれない。その事実を受け入れなよ?そしたらまた前みたいな曲がつくれるよ。」
「そんな...受け入れられるわけないだろう?あの曲たちは僕の才能で作ったんだ...!!お前らの...お前らのせいだ。お前らにそうやって責められるから僕は暗い曲しか作れないんだ...。明るい曲を作ろうと思って作っても評価されないんだ.....。」
「いいえ、違うわ。貴方の才能がないだけ。今までは経験で才能がない分を補えていたけどもう尽きたみたいね。諦めなさい。貴方は闇に包まれてなければ音楽では生きていけない。楽しく生きて楽しく音楽をやるのはできないのよ。何故なら才能がないから...!!」
おかしそうに笑う彼女の声が僕の心を壊していく。