消える
20××年、2月某日。その日は中学受験の合格発表日だった。模試の結果はよかったからきっと受かっただろうと思って帰宅後母からの発表を待った。結果は不合格だった。ここから人生が変わった。
20××年、12月某日。
「.....この世は才能が全てだ。少なくとも僕の世界はそうだった。拝啓神様....僕の音は誰かに聞いてもらえましたか?僕の最期は誰が音にしてくれますか?.....才能の欲しかった人生でした。」
寒い。コートなんて買うお金はなかったから薄手のカーディガンと薄いTシャツだけ。12月にしてはおかしい服装である。でも...もう死ぬからそんなことなんてどうでもよかった。
「せっかく奏って名前だったのにな。音楽しかないはずなのに音楽はできなかった。音楽を奏でられなかった。怜と違って僕は音楽に片想いか....。あの子は才能があるから。きっと音楽で生きていける。頑張ってよ....。」
昔ネットで見た確実に死ねる高さはビルの7階~8階。今いるところは下が見えないくらいの崖。確実に死ねるね。これで辛かった28年も終わりだ。
仕事がある人はもう起きる時間、怜はきっとまだ寝てる時間。僕は落ちた。
音に消える




