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炉馬ノ休日 リレー小説第参部 伝説編

作者: 機械河童
掲載日:2018/07/29

今語られる、炉馬の壮絶な人生。いくつかの資料、口伝によって書かれている事を了承の上、御覧ください。

第壱章 加具土家 


 西暦2092年7月、加具土炉馬の葬式が慎ましく行われた。

「輝爾おじさん、炉馬じいちゃんってどんな人だったの?」

「そうだな、父さんからはあまり昔の話を聞かなかった、、、というより、聞こうとしてもなんというかその、なんか聞いちゃいけない感じがあったというか。。。ま、いい。この機会だ。グスタフさんにでも話を聞いてみよう。」

輝爾とクルトの二人は、加具土家に代々仕えるロゼッタ家主人、あのエリーゼ・ロゼッタの息子の元へと向かった。

「これはこれは輝爾様。それに次期当主様まで。」

無論、次期当主とは炉馬の孫、クルトのことである。

「やめてよ次期当主なんて。こんな僕がじいちゃんがの後なんて勤まる訳ないじゃないか。本当は父さんがいてくれれば良かったのだけど、、。」

「あの方は良いお方でしたが、、未だに戦地から遺品が届きませぬな、、、それで今日は何の用で?」

「今日は一つお話があるのだけどグスタフさん。炉馬じいちゃんが昔どんな人だったかどうかって、聞いたことある?」

「うむ、そうですな。話せば長くなるので、また後日、ロゼッタ邸にお越しください。」

-3日後-

「やぁグスタフさん。」

「お早う御座いますクルト様。では、早速話をさせていただきます。最初に、私もすべてを知っているわけでなく、母からの伝承及び我が家にございます資料からの引用であることをご承知の上でお聞きください。」


エリーゼ・ロゼッタの伝承1(2059年 A新聞特集)

 私が彼に会ったのは、彼が16歳と3ヶ月を迎えた頃、今で言う少年学校高等科にいた頃です。当時の彼は気が弱く、小心者。本当に人間としては今と違って駄目な人間でした。しかし、彼は特殊能力を持っていたのです。そう、先日あの戦争を終わらせたといくつかのメディアや巷で噂されるあの能力です。あれは実際にあります。あなた方は信じてくれないかもしれませんが、その能力はテレポートでした。先日の戦いで突然敵司令部が機能を失ったのはそれを用いたからです。そしてあの頃の私はその炉馬さんと会ったとき、様々なことがありました。これはまるでアニメのようなことの数々でした。しかしまぁ、そんなこと言っても信じてはもらえませんよね?

「この様な事をよく母は新聞で言っておりました。」

「へーえ。。。あまり信じられないんだけどなぁ。」

「ですよね。まぁ構いません。では、次の話へ。」


エリーゼ・ロゼッタの伝承1(2060年 D局TV特集インタビューにて)

記者「ロゼッタさん。この度は取材をお受けいただきありがとうございます。」

ロゼッタ「構いませんよ、炉馬様はこの様な取材を受けないので。」

記者「それで、炉馬さんが超能力を持っているというのは本当でしょうか?」

ロゼッタ「それについては何もいうなと言われておりますので、、、。」

 他にもクルトはグスタフから話を聞いたが、どれも同じ様な内容であった。

「どうですか?クルト様。」

「正直な所、超能力だ何だって話は信用ならないなぁ。」

「そうでしょうな。私とてこれに関してはあまり信じておりません。ただもう一つ判ることとして、炉馬様は戦争を終わらせた、救国の英雄であったということがあります。それ故、加具土家はここまで立派になったのです。」

「でも何で今は殆ど知られてないの?学校でもあの戦争は敵の将軍が敗北を悟り自害したって習ったけど?」

「おそらくですが、、、その超能力関係の話から世間に『嘘つき』『変人』としたレッテルを貼られたのでは?またはそれを過剰意識したマスコミがその様な理由で無かったことにしたか。」

「でも今家は栄えてるよね?」

「それはお国からの援助が有ったからです。表向きには無かった事にしていても、救国の英雄で有ることに変わりは無いのですから。」

「そんな事があったのか、、、。父さんはそれで自らも軍人に?」

「えぇ。ですが超能力の様なものはなく、また、炉馬様がその様な能力を持っていたことも知らなかったはずです。」

「それを知らずに戦地で、、、父さんにこの話を聞かせてやりたかったな。」

「そうですな。では、今日はもうこの辺で。そろそろ昼食でございます。」

そしてクルトは館へと戻っていった。



第弐章 第34防衛陣地にて


 2080年、炉馬の息子、加具土創羅(そうら )は、帝国陸軍対議会連合戦線第34防衛陣地所属第82装甲擲弾兵師団に配属されていた。

「この戦争はいつ終わるのだろうか。どう思う?」

「さぁな。もう議会が帝国を離れて独立してから13年、その議会連合に対して帝国は攻撃するだけ。攻め滅ぼす気が有るのかそれとも和平するつもりなのかぐらいはっきりさせてもいいと思うけどな。」

「ほんとだよな。全くうちの国の皇帝ときたら。先代はあれほど良かったのに、、、」

「こら!貴様ら何喋っているか!そんな暇があったら偵察の一つでもしてこい!」

「これは創羅大尉!申し訳ありません!」

「まぁ良い。冗談だ。ちょいと司令部の方に呼ばれてな。ここの警備をお前らに託すが良いか?」

「はっ。了解しました!」

「では行ってくる。」

創羅はここである重要な話を聞かされる事となる。

「大尉。今回は貴官にとっては複雑な事を話さなければならない。そして、それに基づく任務も。」

「何でしょう?」

「貴官の父が元軍人であることは知っているな?大尉。」

「もちろん存じております。」

「もしその父が、テレポートが出来る超能力者で、さらに救国の英雄だとしたら?」

「突然なんですか大佐?そんなおとぎ話あるわけ無いではないですか。」

「、、、と、私も思うよ大尉。しかし皇立軍事研究所が本気でそう言っているのだ、、。」

「、、、で、私にどうしろと?」

本当の所向こうが何を言いたいか薄々察していたが、あえて疑問を投げかけた。

「貴官にもそのテレポートの素質があるかもしれん。というわけで本日付で現任務を解任。第1特殊戦分隊に所属してもらう。」

「何です?その部隊は。聞いたこともありません。」

「貴官のための、貴官一人の分隊だ。」

「分かりました。それで、作戦内容は。」

「話が早くて何よりだ。では説明しよう。貴官には研究所が用意した能力覚醒薬を服用し、能力を発揮、敵司令部に突入する。そこで司令官を殺し、可能な限り撹乱した上で基地に戻ってくる。以上だ。」

「そんなよくわからない薬を飲んだ上で一人で突入?到底出来るわけ無いではないですか。」

「では、断るかね?」

「ええ。生まれた息子が待っていますし。」

「クルト君か。」

「はい。」

「だが、君の父はこれを薬などという文明の利器を使わず突入し、『生還』しているぞ。」

大佐は創羅の父親に対する過剰な対抗心を嗅ぎ取っていた。

「どうする?父親にできたことが君にできないとも思わんが。」

「、、、やってやろうじゃありませんか。」

「よし、よく言った。作戦は明日だ。準備しておけ。」

「準備?何をするっていうんです?生還するのですから、遺品の整理も何もいりませんよ?」

「、、、。」

「では、失礼します。」

-翌日-

「これより薬を投与する。準備は良いな?大尉。」

「あぁ。やってくれ。」

その瞬間、創羅の眼前の景色は突然リセットされ、音もなくガラリと、100%変わった。

「これが能力か。さてここからどこへ行けばよいのだ?」

「こちらが無線で指示する。そこから2つ階を上がったところに司令官がいるはずだ。貴官の任務はそれの、抹殺だ。」

創羅は内心とても安心していた。テレポートの瞬間まで、薬と能力どちらも信用していなかったのだ。

「さて、ここを開ければ司令室ださっさと倒して戻ろう。」

しかし、運は続かなかった。

「スパイだ。殺れ。」

その瞬間、痛みも、不運を嘆く暇も、苦しみを感じる間もなく創羅の体に何発もの凶弾が突き刺さった。

 父の正体を知った彼は、その生まれたばかりの息子に父の事を伝えることなく、この世を去った。



第3章 能力軍事転用計画


 2039年4月9日、皇立軍事研究所に於いて、帝国の著名な技術者を招き、国家規模の研究が行われていた。これは、その時に残され、何十年もの間誰の目に触れることなく保管されていた記録である。


2039年4月9日 第1回会議

「ようこそ、我が国の研究者諸君。この度は我々軍部の研究の手助けをしていただき誠にありがとうございます。」

「いえいえ。で、私ら研究者は何をすればよいのかな?」

「それを今から説明いたします。少佐、お入りください。」

「やぁ諸君。今から君たちにやってもらうのは『能力軍事転用』のための研究だ。」

「と、申しますと?私らが先日発見した『発動者』を平気に仕立て上げるということで?」

「そうだ。その『発動者』の中にテレポーターがいただろう?そいつの能力をより完全なものにし、兵士として育て、敵司令部内に直接送り込んでしまえという計画だ。」

「そうですか。しかし、それだけならこんなにも多くの研究者は必要ないのでは?」

「作るためだよ。」

「、、、は?」

「その能力を人為的に発動させるための研究を君たちにはしてもらう。テレポーターだけでない。あらゆる能力をだ。そしてそいつらを前線に投入する。」

「壮大な作戦ですな。」

「私はこの作戦を『D作戦』と命名する。国家の存亡をかけた作戦だ。それをよく理解した上で研究に励むように。」

「了解しました。」


2039年4月20日 第2回会議

「やぁ諸君。研究は進んでおるかね?」

「はい。理論はすべてできております。あとは試すだけです。」

「で、必要なものはあるかね?」

「はい。テレポーターの被験者が1名。」

「名は?」

「加具土炉馬、37歳。現在無職です。金を見せればおそらく寄ってくるかと。」

「分かった。連れてこよう。今日中にな。」

「ありがとうございます。それと、薬の方が完成次第もうひとり試験用に連れてきてほしいのですが。」

「構わんよ。連れてこよう。」

そう言うと少佐は部屋を出ていった。

「さて、そいつが来るまでお茶でも飲んで待とう。」

-数時間後-

「加具土炉馬です。よろしく。」

「早速本題に入ろう。君はテレポートが出来るのだね?」

「えぇ。」

「では、やってみてくれ。」

炉馬はいつものようにテレポートした。これは一定のインパクトを与えたものの、研究者たちの反応は薄かった。

「なぜ驚かない?」

「私達は『それ』の研究者だ。今更驚かんよ。」

「だが見たのは初めてだろう?」

「いや、別の能力者がすでにいる。」

「そいつに会わせてくれ。」

「半死体だが良いか?」

「何?」

「そいつはもはやこの世には居ない。意識はな。科学の力で無理やり動かしている。体を『機械』としてな。」

「それでそいつは何の能力者だ?」

「原子崩壊だ。」

「ほう、、、よくわからんが。」

「そいつから抽出した情報を貴様に投与すれば、お前はこの2つの力を手にする。更に、今のお前の能力では間に物がある場合はテレポートできぬだろう。」

「あぁ。」

「だがこいつの能力と併用すれば物なんぞ関係なくなる。さぁ。試しに飲んでみなさい。」

「それは安全か?」

「一般人には判らん。だがお前は能力者だ。だから体が合わせてくれる。」

炉馬はこの薬を飲んだ。

「さぁ。テレポートしてみろ。」

すると実際、壁は関係なくなってしまった。つまり、実験は成功したのだ。研究所の壁に大穴が空いたことを除けば。

「これはすごいな。」

「だろう。我々の研究の成果だ。」

本日は非常に良い結果となった。だが、これは本当に生み出してよかったものなのか?原子崩壊が出来るということは、外部からの接触をすべて立つことすら出来る。そんなやつが、もし暴れたりしたら?我々は恐ろしい怪物を生み出したことになるだろう。


2039年5月17日 第3回会議及び対一般者試験

「本日の被験者は?」

「羽咲優香であります。少佐。こいつは能力を持ちませんし、炉馬の知り合いなので実験は進みやすいはずです。」

クアトロカタリストの能力は付近に能力者が居なければ意味がない。能力を消す能力なのだから。そのため、彼女の能力に気づくものはなかった。

「それでは、実験を開始します。」

「今回の実験の説明を頼む。」

「今回は、一般の能力を持たないものに対しての投薬試験です。これが成功すれば、あとは実戦投入です。」

「成功しなくても、だ。戦線はこちらの都合に依らず動いている。来週には実戦投入、来月には量産のつもりでいろ。」

「はっ。それでは、実験を開始いたします。」

薬が投与され、優香の体に能力が与えられるその時。

「パターン青!体内の内側から、能力の高エネルギー反応!」

「何!こいつ、能力者か!」

ただでさえ一人に2つの能力は通常に比べて負荷が高い。それなのに体内で能力の打ち消し合いが始まったのだ。体がそれに耐えきれるはずなかった。

「パンッ」

それはまるで赤い水風船のようだった。


2039年5月24日 実践投入『D作戦』第1幕 終戦

「炉馬、心の準備は良いな。」

「はい。少佐。ただ、私はあんた方のために戦うのではありません。優香の為です。」

「先日の件は償えないということは分かっている。ただ。あれは事故だ。我々も、優香君の事は残念に思っているよ。」

「少佐!薬の準備が完了しました。」

能力を強めるため、強化薬が炉馬に投与される。不本意だが、炉馬は優香の為と自分に言い聞かせた。そして、とてつもない緊張に襲われていた。軍のためでも国のためでもないと思っていながら、この作戦で国の存亡が決まると考えると、やはり緊張してしまう。

「それでは、作戦を開始します。目標は敵司令部。目標は敵司令官及び周辺機器だ。」

「行きます!」

その瞬間、目の前の景色が秒速でリセットされる。音も無く景色がガラリと、そう、物体の位置が100%変わった。

参考資料

A新聞旧刊大全集

D局アーカイブス

帝国陸軍D作戦参謀本部機密資料

加具土創羅氏旧友

第82装甲擲弾兵師団戦闘詳報

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