1話 地震の謎
「ただいまぁー……」
俺はカラオケから帰り、家のドアを開ける。
「全く隼人のヤツ………自分だけ思う存分歌いやがって……」
ちょっとした愚痴を零す。
すると、台所から俺の母、皆川 美沙が顔を出した。
「おかえり祈織。顔と手を洗ってきなさい」
「あぁ」
そう言って、俺は洗面所へと足を運び今日のことを色々と振り返る。
まずカラオケ……………………の事はいいだろう…………問題はその前の地震だ……
「なぁ、お母さん」
「ん?何?」
「今日の地震……大丈夫だった?」
すると母は
「………地震?………何のことよ」
「え?」
俺はその言葉に目を見開く。
おかしい、隣町で震度5強程なのにこちらに届いていないというのは明らかにおかしい………
どうしてだ?俺の頭はそれの事でいっぱいになっている。
とりあえず顔と手を洗い、気持ちを切り替えて、部屋に戻る。
そこには俺の相棒であり戦いの必需品でもある。
二丁拳銃が置いてある。
ゴスペル・サリエルとスピード・イーター。
ゴスペル・サリエルはリボルバー式となっていて、威力は申し分ない。撃鉄を一度引いただけで全弾撃つことも出来る。しかし、弾数が少ないのが欠点だ。
スピード・イーターは名前の通り、スピードに長けるよう、最大まで軽量を求めた銃。しかし、強度はどの銃よりも強く、硬い。
弾数も多く連射も出来るには出来るのだが……飛距離や威力はやはり他の銃より劣る。
それぞれ長所と短所がある。
俺が今まで使っていた銃の中で一番の代物だ。
俺はそれをガンホルダーから取り出し隣の部屋にある実践場へ移動する。
ここは、適正者のみが国の補助を得て使える実践場。家の隣に併設しており、これは擬似世界を利用しているので、実際の土地代は要らない。
擬似の世界なので、どれもおらず、二丁拳銃やライフル、スナイパーの場合はこう言った発砲訓練所で自主トレができる。
剣や刀、武闘などは擬似モンスターといつでも戦うことが出来る。
まぁ”適正者”という特別な存在だけだけどな……
二丁拳銃のマガジンを1度取り出し、弾数を見る。
そう言えば……今日の朝変えたばっかだな………
そんなことを思いながらもう一度ガチャンと締める。
そうしてスピード・イーターのコッキングを引き、ゴスペル・サリエルの撃鉄を親指で引く。
「ふぅ………」
俺は一度深呼吸をし、両手を目の前の小さな的に向ける。
そしてその的を見据え……
パァァァン!
ゴスペル・サリエルのみ1弾撃った。
それは真ん中から1センチズレた。
「くそっ………」
舌打ちをし、スピード・イーターも取り出す。
次は二丁両方の銃の引き金を引く。
パァァァン、パァァァン……と大きな発砲音だけがこの部屋に響く。
10弾ほど撃って、真ん中にドンピシャで当たったのは7弾。
なんとも言えない結果だ…………
「はぁ……」
俺はため息をついて二丁の銃のセーフティをロックした。
家に帰るとご飯のいい匂いが俺の鼻を刺激する。
「祈織ー?ご飯できたよー?」
「分かったー、ちょっと待ってて…」
俺は銃を机に置き、自室のドアを開ける。
食卓へ行くと美味しそうなご飯が並べてある。
食事をしながら俺は気になっていたことを母に言った。
「今日、ほんとに地震来なかった?」
「?……えぇ、だって緊急地震速報もしていないでしょ?」
「確かに……」
言われてみればそうだ………
じゃああれは一体…………
その時は何もわからず、そのまま就寝してしまう。
翌朝、俺は準備をして学校に出る。
「今日は実践訓練があるのか……持ってくか…」
ゴスペル・サリエルとスピード・イーターの両方をガンホルダーと共に腰にかけ外に出る。
「じゃ、いってきまーす」
「はい、行ってらっしゃい…」
そのまま俺はスタスタと歩くと
「おう、紫音と隼人。おはよ」
「おはよ」
二人同時に挨拶された。
そのまま3人で歩く。
「なぁ、隼人」
「なんだ?」
「昨日の地震のこと…聞いたか?」
「あぁ、聞いた」
どうやら隼人も同じ質問を家族にしていたらしい。
「ねぇ、地震って何のことよ?」
「お前は感じなかったのか?昨日地震があったのに」
「?………何言ってんのよ………地震なんか起きてないわよ?」
どうやら紫音も地震を感知していないらしい。
数分歩くともう学校についた……………が、何かがおかしかった。
校門が開いていない。もう目の前に生徒は500人を超えている。
ガヤガヤとなっている。
「な、なんで開いていないんだ?」
隼人が少し焦燥の顔を浮かべて俺に聞く。
「なぁ、ちょっと嫌な予感するの……俺だけか?」
「俺もだ………祈織」
「私もかも……」
俺達3人は少し冷や汗をかきながら校舎を見る。
すると、校内放送が大音量で流れた。
「大至急。適正者と戦闘形態が決まっている生徒は直ちに校庭へと入ってほしい!繰り返す_____」
「な、なんだよ?」
「まぁここにいても仕方ない!行くぞ!隼人、紫音!」
俺達は校門を飛び越え、数十人と共に走る。
走っている途中にリロードを終え、校庭へと着く。
そこには………
刀を持った大男3人。銃を持った大男2人の計5人が次々と先生を殺していっている。
校庭の砂はもう鮮血に染まっていた。
「くそっ………!」
俺はゴスペル・サリエルとスピード・イーターを刀を持った大男の1人に向ける。
「ほぅ………こんなガキどもの相手をするなんてな……」
「……ガキで悪かったな………」
俺がそう言うと全員が戦闘態勢に入った。
剣を持った隼人は自慢の運動神経で相手の懐に入り込んでは斬り………というのを繰り返し、隼人は数分で1人を倒した。
紫音のスナイパーライフルの銃声が奥から聞こえる。
しかし、その銃弾を軽々と避ける。
「こりゃまた凄い技術をお持ちで………」
俺は感嘆の声を上げる。
「……ふん、「白世界」のヤツに言われても嬉しかねぇな……」
不敵な笑みを浮かべ、刀を棒のように扱っている。
「………黒世界のやつか……」
「あぁ、この学校には最強の銃使い、「禁弾の炎」がいるはずなんだけどな………その前にお前らを殺すか……」
すると、目にも留まらぬ速さで大男は刀を俺に突き刺してきた。
「遅せぇ……」
俺は言葉に出るほど余裕に避けた。
なんだこいつらは?
「なっ?!俺の刀を……」
相手は焦燥と驚きの顔を浮かべている。
「………滑稽……って言うのかな……」
その言葉が気に障ったのか、相手は歯を食いしばってもう一度こちらへ向かう。
「貴様ぁぁぁぁぁ!!」
くるっと一回転し、刀を綺麗な弧を描いて横に一閃。
しかし、それを俺は身を屈めて躱す。
その後俺は大男のみぞおちにゴスペル・サリエルの銃口を力いっぱい刺す。
「ぐぁ………ッ!!」
俺はみぞおちに銃口を当てたまま、1発、発砲した。
大男の背中からは鮮血が飛び散り、そのまま俺の横に倒れた。
「お、お頭ぁぁ!」
幹部のひとりと見られるやつがそのお頭とやらの近くに行く。
そうして俺は残っている「黒世界」のヤツらにゴスペル・サリエルを空へ発砲し、注目を浴びせ、こう叫んだ。
「俺の名は皆川祈織!「白世界」最強の銃使い、「禁弾の炎」だ!その目にとくと焼き付けておけ!」