マジで教会じゃん!
今回はトーク多しです。
まだ平穏に過ぎます。
ホラーどこいったぁぁぁと作者自身も感じております。えへへ。
音羽は地図を頼りにカケスの家へと歩いていた。
執行から大体の所は聞いていたが、いざ歩いてみると目印の十字架がわからない。カケスの家の屋根には十字架が乗っかってるらしい。同じところをぐるぐるしている気にもなってくる。
何の気なしに見上げた空にキラリとは光らない白い十字架が見えた。
「あっあった!」
やっと見つけたカケスの家は洋風な白い壁の建物で、屋根に四角い大きな煙突のようなものが突き出ていて、その上に十字架が立っている。門にはプレートが嵌め込まれていて、黒字に金色でP教会と書かれていた。
「マジで教会じゃん」
しばらく呼び鈴を探してウロウロしてみた。
見当たらない。音羽はどうしようかと考えた。ポストに入れておく? ポストはどこ? あ、あった……。気づくかな?
しばらく考えていると声を掛けられた。
「どちら様ですか?」
「わぁっ!」
ビックリして振り向くと買い物バックを下げた長身の紳士が立っていた。白いシャツにベージュのズボン、髪は丁寧にとかしつけられ、顔はカケスにちょっと似ている。
「家に御用ですか?」
ニコニコと語りかけてくる声は落ち着いていて耳に心地いい。
「あのう、カケ……山懸くん、今日お休みだったのでプリントを持ってきました」
「やっぱり? 制服だからそうじゃないかと思ったんだよ。周防のお友達? わざわざありがとう。周防にお友達が来るのは何年ぶりだろう。ちょっと待っててね。呼んでくるから。朝は熱があったんだけど、もう調子はいいみたいだからね」
カケスの父親は話しながら扉を開けて教会の中に通してくれた。
「玄関は別の所にあるんだけど、ちょっとそこに座って待っててくれる? 教会来たことある? 見物でもしてて」
教会の中は質素な作りで、正面に白い十字架。傍らにはオルガン、あとは木の長椅子が並んでいる。音羽はその椅子の端っこに座った。しばらくするとカケスがやって来た。
「音羽くん! 来てくれたの? ありがとう!」
カケスを見てびっくりした。あの重苦しかった前髪がなくなって、かなりのイケメンヘアーになっている。
「うわぁ! 髪、切ったんだね。凄くカッコイイ! どうしたの?」
「うん、音羽くんがこの間言ってくれたろ? 開き直った方がいいって。だから、思い切ってしてみたんだけど、おかしくない?」
カケスは前髪をイジリながら恥ずかしそうにしている。
「ううん。全然おかしくないよ、自信もってよ。本当にカッコイイから!」
「ありがとう。音羽くんに言われるとなんだかホントに自信が持てる気がするよ」
「うんうん。大丈夫! あっ、これ。持ってきたプリント」
「ああ、そっか……ありがとう」
「それにしてもさ、カケスの家って凄いね。びっくりしたよ。さっきのはお父さんでしょ? 神父さんなの?」
「父さんは神父じゃないよ。家はカトリックじゃなくてプロテスタントなんだ。だから父さんは牧師」
「ふうん。じゃあさ、カケスも将来牧師さんになるの?」
「まだわかんない……多分ならない。そんな気がする」
「そっかぁ」
「ねえっ、また来てくれる? 普通に遊びに……」
「うん、また来るよ」
前の方の椅子の背に白いものが見えた。
何だろうと見ていると、一匹の猫が顔を覗かせて「ニャア」と鳴いた。
「猫がいる!」
「ああ、この子ね捨て猫だったんだ」
カケスは猫を抱いて頭を撫でてやった。猫は気持ちよさそうにしている。青い目で真っ白い猫だった。体つきから、まだ若い猫だろうと音羽は思った。
「ねえ、オレにも抱かせてくれる?」
音羽がカケスの肩に手を置いた。
「痛っ!」
カケスは叫んで体をビクッと震わせ、猫を落としてしまった。猫はひらりと床におりて、椅子の下にもぐってしまう。
「えっ? なにっ? ケガでもしてるの? ご、ごめんねっ、知らなくて……」
「いいんだ……ケガじゃないよ。お恵みなんだ。そんなに驚かないで。音羽くんは悪くないから。それより、ほらっ猫どこいったかなぁ」
「ホントにごめんね。猫……捕まえる?」
「うん。音羽くんはそっちに回って呼んでみて」
猫はすぐに捕まった。抱っこして撫でてやっていても、カケスの事が何処か心に引っかかる音羽だった。