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廃園のウワサ

 数日経ったある日の昼休み。音羽と二郎丸は教室の窓際の席で雑談をしていた。


 そこへ一ノ瀬愛理(イチノセアイリ )がやって来た。愛理は明るい性格で男女ともよく話す。顔はまぁ可愛いほうだと音羽は思っている。


「ねぇねぇ、昨日さぁネット見てたら"裏野ドリームランドのウワサ"ってのがあってね。メリーゴーラウンドがチョーヤバいんだって」


「裏野ドリームランド? あの廃遊園地?」

 音羽は二十年前に閉鎖された海沿いにある廃園を思い出した。二十年前と言うと音羽達は生まれていないが、両親との話の中でその廃遊園地が話題に上がった事もある。

「確かジェットコースターの事故があって閉園になったんだよね」


「おー、よく知ってるね。そのウワサも書いてあったなー。でもね、今回ヤバイのはそこじゃないんだなー」


「どんなウワサなんだよ」

 二郎丸が面倒くさそうに先を促す。


「えーっとね、稀にだけどメリーゴーラウンドが光り輝いてて、勝手に廻ってることがあるんだって」


「それの何処がヤバイの?」

 音羽はほけーっとした顔で聞き返す。


「点検じゃね?」

 コレは二郎丸。


「ふふふーん。ココからがヤバいんだって! その廻ってるメリーゴーラウンドに好きな人と一緒に乗るとね、二人は永遠に結ばれるのよっ! どう? ヤバくない? もーほんとっロマンティック!」


 なんだか乙女チック全開な話に音羽と二郎丸は顔を見合わせた。


「ぷっ……へへへ……ふふふ……ぶわぁーっはっはっはー」

 二人は腹を抱えて笑い出してしまった。


「ちょっ、それっ、本気で言ってんの? マジ受けるー」

「はいー座布団5枚ー」


「何よぅ二人共、馬鹿にしてぇ」


「よう! 三人で何の話?」


 割って入ってきたのは執行将大(シギョウマサヒロ )だ。


 ガキ大将の一人で親玉。執行は体格も良くて行動力もあるので知らない内についてまわる人間が現れるのだが、本人は親玉というのを自覚してない所がある。執行建設の社長令息。いわゆるお坊ちゃまなのだ。


「裏野ドリームランドの噂の話……」

 愛理がちょっとすねた感じでボソリと言った。


「あーん? あそこかぁ……俺も知ってるぜ。地下に拷問部屋があるとかミラーハウスから出てきたら人格変わってたとか。他にもあるみたいだけど、全部根拠の無いガセじゃん? 」


「もおー。執行くんまでそんな夢のないこと言ってぇ」


「はいはい、夢見る夢子ちゃんはやんわり生きてて羨ましいですね」


「ちょっと! 二郎丸くんも!からかわないでよ!」


 そこへ、女子の委員長である田川紗々(タガワササ )がやって来て二郎丸の前に立った。


「二郎丸くん、さっき先生からプリント預かって来たの。今日山懸くんお休みしてるから持って行ってやってくれって。あなた男子の委員長なんだからよろしくね」

 そう言ってプリントを二郎丸の机に置いた。


「ええーっ、今日俺部活あんだよ。ムリムリムリ。……あっ、音羽行ってやれよ。てか、お願いします。音羽様!」


 おおっ!珍しく二郎丸が手を合わせてお願いポーズ。これはレアだ。


「えー? うーん、まあいいか……ジロちゃん剣道部で忙しいもんね」


「森多くん、ホントにいいの?」

 紗々は怪訝そうな顔で音羽に聞いた。


「うん。オレ文ボラだろ? 結構ゆるい部だからさ全然イイよ」


 文化ボランティア部。花壇の整備をしたりお茶の作法を習ったり、老人ホームへ行ってお茶を振舞ったり。参加は自由だから時間の融通はきくのだ。


「そう。じゃあ、よろしくね」


「ああー、そうだ!」


 立ち去ろうとする紗々を遮るように執行が大声を出した。


「もうすぐ夏休みじゃん? ……だからさ、みんなで行こうぜ」


「何処に?」

 音羽と二郎丸、愛理の声がハモる。

 紗々は離れるタイミングを逃したようだ。


「裏野ドリームランド」


「はぁ? 皆んなって? まさか執行くんの取り巻き連中じゃないでしょうね」

 横目で愛理が睨んだ。


「んん? 取り巻き? そんなのいたっけ? 違うよ。ここにいるみ・ん・な」


 執行は紗々の方をチラチラ見ている。


 ははぁ。さてはコイツ田川に気があるな!

 音羽と二郎丸はピーンときてしまった。


 紗々は学年でトップクラスの才女。オマケに美人だ。緑の黒髪とは紗々の髪のようなことを言うのだろう、長く揺れる髪からはふわっといい匂いがしてくる。


「俺パス」

 二郎丸が即決。

「えっ、オレもパス……」

 音羽はつられて。

「ええー……行ってみたいけど……夜とか無理」

 愛理は迷ってる。

「…………。」

 紗々は無言で立ち去っていった。

「ちぇっ! ノリわりぃなぁ!」

 執行は紗々の後ろ姿を見ながら残念そうだ。


 この話はもうおしまいとばかりに二郎丸がカケスのプリントを音羽に手渡しながら「よろしく!」と言ってきた。


「ああ、うん。えーっと。カケスの家は……あ、地図もあるんだね……」


「カケスの家? アイツんち教会だぜ。あそこ建てたの俺んトコだ」


 執行はそう言った。





なんだかまどろっこしく進みます。

「ホラーな感じ全然せぇへんやん」的なご意見はごもっとも! なのですが、どうか長い目で見てやって頂きたい……です。



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