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メリーゴーランド

 二郎丸は木馬に乗っていた。かなりの悪人ヅラになっている。眉根が寄り、目が据わって口がへの時に曲がっている。ちゃぶを台ひっくり返す前の頑固親父さながらだ。逆に隣の木馬に乗っている愛理は上機嫌だった。二郎丸が史上最悪の悪人ヅラしていても気付かない程に。


「ねえねえ、二郎丸くん。この木馬ちょっと前に光らなかった? あのウワサホントだったのかな? これで廻ったら完璧なのにね」


 まったく、何が"完璧" なんだ? 所々塗装が落ち、金属部分はメッキが剥がれて錆だらけ。そんな木馬に並んで座っていると、なんともマヌケに思えてくる。


「そろそろ花火が上がる頃じゃないかな? 一ノ瀬があっちこっちウロウロするから執行達ともはぐれちゃったし、音羽達は連絡してきたっきりだし、探さなきゃな」


 音羽はカケスを追って消えたっきりだ。本当は音羽と一緒に廃園の中を回ったりしたかったのにと二郎丸は思った。


 一方、愛理は上機嫌だった。廃園のウワサをネットで見つけた時、頭に浮かんだのは二郎丸の姿だった。「永遠に結ばれる……なんてステキなの!」と思った。執行から二郎丸も花火に見に行くと聞き、こんなチャンスを逃す手はないと目を輝かせ、夜の外出も花火大会行くからと親には許してもらった。


 少々手荒に意中の二郎丸をこ汚い木馬に乗せることができたし、後はメリーゴーランドが廻ってくれたらいいのに。今の自分は世界で一番ツイてる。きっと神様は期待を裏切らないはずだ……と思う。

 

 二郎丸は横目でじろりと愛理を見た。人を無理やりこんなのに乗せといて、なんでそんなにウキウキしてんのか分からない。早くみんなと合流しなきゃな。と思っていた時だった。


「ドーンッ! パパーッ」


「花火はじまったじゃん! 」

「ホントだっ! ここからでも見えるねっ」



 カタン……キィィィ……。



 錆び付いた歯車が軋んで回り出した。



 カタンカタン……


 木馬が上下に動き、メリーゴーランドも静かに廻り始めた。


「うわっ! 動いた!?」

「わぁっ! 凄い! 神様ありがとう!」

「ちょっと! なんで動いてんだよ! キモッ」

 

 心底驚いている二郎丸とは反対に愛理は自分に舞い降りた奇跡に酔いしれていた。

 

 木馬の目から光が溢れ出し口からは灼熱の吐息が吹き出した。そしてハリボテの馬は段々と熱を帯びていく。


「なんか……熱くない?」

「おいっ、一ノ瀬。降りろ!」


 気づいた時には遅かった。


 またがっていた両の足が異形の塊に押さえられている。


「きゃああああ! 何!? これっ何っ!?」

「クソッどけっ! なんだお前ら! どっから出てきやがった!?」

「熱いっ! 助けて! 二郎丸くん!」


 木馬は一気に燃え上がった。


「ぎゃあああ!!」


 炎の愛撫が内蔵までをも舐め尽くした時、二人は木馬から落ち、重なるようにして果てていた。


 メリーゴーランドは青い炎を纏ってくるくる廻り、木馬たちは生き生きといななき、木馬としての呪縛に終わりを告げ夜の廃園に地獄の炎をまき散らしながら駆け出していった。


メリーゴーランドなのか、メリーゴーラウンドなのか、未だに迷っていますが、物語が終わる頃にはハッキリさせて統一したいと思います。


よろしくお願いします。


この物語はフィクションです。

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