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鯊太郎の摩訶不思議短編集  作者: 鯊太郎
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反米

 ある日曜日の朝、久しぶりに早起きをした私はモーニングコーヒーと洒落込みながら、ソファーに座り新聞を読んでいた。

 そこには、世界中で暗躍するアメリカの記事と、それによって苦しむ人々の生活とが、所狭しと掲載されている。


 私は瓦礫と化した街中で、星条旗が燃やされている写真に目を落とす。

 何とその傍らで火をつけていたのは、内戦に苦しむ子供達の姿であった。その怒りに満ちた目と、すす汚れた服とが何とも印象的である。

 まさに世界をその傘下に治めようとするアメリカと、民族や宗教の名のもとに必死に抵抗を試みようとする国々との歪な構図がそこにはあった。


 いつの頃からだろう、「反米」という言葉がイスラム圏や途上国などの間で共通の合い言葉になったのは・・・

 私は妻が入れた二杯目のコーヒーに口を移した。

 


 「おはようお父さん、お母さん。今日は二人とも早いのね」

 娘がパジャマ姿のままで起きてきた。

 「早く朝食を済ませてちょうだいね。お母さんねえ、今日はこの後出掛けなければならないのよ」

 「お父さんも一緒に?」

 「お父さんはゴルフの練習へでも行くんでしょ」


 妻はベーコンエッグとサラダのプレートをテーブルに置くと娘に尋ねる。

 「ご飯にするの? それともパン?・・・」

 「トーストでいいわ」

 娘はバターとマーマレードが入った瓶を冷蔵庫から取り出しながらそう答える。


 「朝はちゃんとご飯を食べなきゃ力がでないだろう?」

 私は新聞を読む手を止めて娘をたしなめたが、娘はパンの耳をちぎりながらこう答える。

 「お父さんは古いのね。お米も小麦も同じ炭水化物でしょ、それにトーストの方がお腹にたまらなくていいわ。ご飯って胃もたれするのよねえ」


 私は今まで読んでいた新聞のその部分を折り返しながら娘に言う。

 「この記事を見てみなさい。世界中にはその日のご飯もろくに食べられない子供たちが沢山いるんだぞ」

 すると娘は、半分にちぎったトーストを指でつまみながらこう反論した。


 「たぶんその貧しい国の子供たちは、ご飯じゃなく主食はパンだと思うわ。それにお父さん知ってる、日本の食材輸入量の三分の一はいろんな食品に加工するときにゴミになって、三分の一は私たちの食べ残しがゴミになっているのよ。お米は自給自足できるからまだ良いけれど、輸入した小麦は私達が食べてやらないとゴミになってしまうのよ・・・」


 「何を訳のわからんことを・・・ おまえはまた、スタイルとかを気にしてパンにしているんじゃないのか?」

 「スタイルを気にした方が良いのは、私じゃなくてお父さんの方でしょ?」

 まったく、憎まれ口だけはずいぶん達者になったものだ。

 

 それにしても、昔っから日本人の朝食は「ご飯と味噌汁」と相場が決まっていたものを、今やパンとサラダが定番だと言う。

 若者はお米ではなく小麦の方を選択するというのだ。


 こんな所にも、小さな「反米」運動が始まっているのかもしれない・・・


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