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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

狂宴のマリオネット

作者: 雪逸花紅羅


こんにちは!雪逸花紅羅です。

今回は結構クレイジーな作品となっておりますが宜しいでしょうか?

大丈夫と・・・それでは後悔せずに

終わらぬ狂宴を存分にお楽しみください!


この美しく醜い世界で何を求め、何を目指せというのだろうか。

この平凡なつまらない人生の何を愛し、何を成せというのだろうか。

嗚呼、全く・・・可笑しいにも程がある。なぁ、君はそう思わないかい? 

常識は社会の模範であり、普通というのは多数派の意見なんだと。可笑しいね。

そんなものは只の偏見に過ぎないのに、多くの人間はそれを望んでいるんだよ。

バカバカしい。普通?常識?平凡?

そんなものは、いつでも変人が生み出してきた。


狂ったような実験を試し、

憑りつかれた様に同じことを繰り返しながら思いつく術。

そんな術の数々を常識といい平凡というんだ。

そもそも認識が間違っているんだよ。

でも、まぁ・・・これも私の独断と偏見に過ぎないのだけどね。

 

私は変わり者だと言われるが別にそうでも構わないじゃないか。そうだろう?

この世界を操ることが出来たのであれば少しはマシな人生になる。面白い人生に。

私は別に世界の頂点に立ちたい訳じゃないんだ。

いつまでも、狂っていたいんだよ。


独りになろうが、陰口を叩かれ様が知ったことか。

見なかったことにすれば良い。

私は私のやり方で自分さえも操って見せる。

この狂気が覚めないようにな。

 

作家が物語を書くように、盤面に駒が並ぶように運命とは始めから定まっている。

だが作家が違えば物語も違うだろうし、主が違えば駒もまた違う運命を辿るのだ。

君はどんな終焉を望むんだい?

ハッピーエンド?バッドエンド?

それとも一番つまらないトゥルーエンドかな?

失望させないでくれよ。私は信じているからね。

君はきっとどんな終焉よりも終焉を選ぶ。

言っている意味が解るかな?

まぁ・・・解らなくても大丈夫さ。

君の終焉は既に定められているのだからね。


もう十分だろう?

さぁ君の答えを聞かせておくれ。私は狂いに狂っているよ。

そして君も私がそう在ることに感謝する。


「さぁ準備は整った。存分に狂え、愛しきマリオネット・・・」


誰かが俺を呼んでいた。

悲しみと寂しさに勝る笑顔を以て語り掛けてきたのだ。


男が俺を造ったのだろう。

その狂いに狂った我が神は、新たな時代を築く気でいる。

何の為に?そこに意味など無かった。

只の茶番でしかないのだろうな、この人には。


造られたマリオネットという存在とそれを操る創造主。

確かに舞台には最適だろう。

しかし、その舞台が世界そのものというのであれば

酔狂と取るか無謀と取るか・・・

どちらにせよ俺は望むままに動けば良いのだろう。

そこには、正義も悪も関係ない。否、どちらにしても大差ない。

元より選択肢はあっても拒否権は無いのだからな。


神より与えられた三つの権限。それは世界を変える為の大いなる力。

俺には余りある代物だが使えと命じられたのならば力の限りを尽くそう。


一つ目は不老不死・・・つまり無限の体力だ。

疲れを感じることはなく、死ぬこともない。痛みを感じることもない。

そもそも俺に命など無いのだから生きてもいなければ、死ぬこともないのだ。


二つ目は文武両道・・・つまり知恵と生き抜く為の力。

冷静に考え判断出来る頭脳に加え、あらゆる生物に負けない術と技を持っている。

しかし狂った神は俺に分岐路を迫った。終焉を選べと言ったのだ。

それは同時に自分が裏切られる可能性をも孕んだものであるが、

俺には忠誠心がある。

神を裏切ることはしないと固く誓った。

そこには同情もあったのかもしれない。


三つ目は喜怒哀楽・・・その通りに感情だった。

人間が持つ全ての感情を俺は持っている。

人一倍、忠誠心は強いが・・・仕方ない。

神もそのように俺を造った訳では無いのだろうが、そのように出来てしまった。


これらが俺の持つ力。

明らかに人間より優れ尚且つ人間に近いものになっている。

神の性格上、

納得しか出来ないが悩んでいても解決策など無いのだから割り切ろう。


俺は人間ではなく生物でもなく造られた偽りの存在に過ぎなかった。

そして生きている訳でもなく、それでいて死ぬことも滅びることもない存在だ。

永遠に悩み続け、存在し続け、最終的には狂うことしか出来ない存在だろう。

神の望んでいる終焉とは永遠に存在し続けること。終焉など無い本当の終焉か。


それでも神は選択肢を与えてくれた。分岐路を用意してくれたのだ。

例えそれが容だけのものであったとしても俺には嬉しかった。少しの自由でも。


様々な道が存在した。

険しい道があれば楽な道もある。景色が違えば想いも変わる。

そう。定められた運命の中でいかに存在し、何を思うのか。それが大切なんだ。

限りある命にしてもそうでないとしても

必ず希望があるのだということを教えたい。

出来ることなら、この狂演の主に少しでも希望の光を見せてあげたい・・・。

どれを選んでも答えは同じ。ならば一番、納得できるものを選ぶべきだ。


「狂演の主よ、何をご所望か?」


「何も望みはしない。只、剣舞をしてくれれば」


嗚呼、そうだとも何も望みはしない。何も思いはしない。

だってほら、この心は空っぽだ。中には何も入っていない。

何も注がれていない器と同じだ。何ら意味のない飾り物だよ。

だから壊れるしかないじゃないか。狂うしかないじゃないか。

誰にも認められない存在は存在している意味がない。

平凡な世界はつまらない。だから滅ぼせ、完膚なきまでに。

世界という舞台で狂演を開こうじゃないか。きっと観客も大盛り上がりだ。


剣が紅く染まり、大地が紅く染まろうとも狂演は終わらない。

大勢が地に伏し、息絶えようとも喝采は鳴りやまない。

そして狂演の主が倒れようともマリオネットは狂演に興じる。

世界の終わりと世界の始まり。果たしてどちらだろうね?


マリオネットは鮮やかに舞う。

その目に涙を湛えながら。その手を紅く染め上げながら。

休むことなく、慣れた手つきで舞い続ける。

絶えない喝采の中、一人また一人と虜にしていく。

全ての観客が息を飲んだ。その光景に目を疑った。

それ程までに剣舞が素晴らしかったのだから。


観客は居なくなり・・・

最後、マリオネットは微笑んでいた。

自らも紅く染まりながら、狂演の主に向かって手を伸ばした。

剣は朽ち果て、拍手も鳴りやんだ。残るは静寂。

それでも狂演は終わらない。

まだ役目を果たしていないのだから。


「神よ・・・貴方の望みは何だったのですか?」


朽ちた剣を片手にマリオネットは最後の仕事に執りかかった。

神の信じた世界を創ろう。この手で新たな舞台を創ろう。

それが神の存在する証。俺こそが終わらない狂演の主催者となろう。

奇しくも歴史は繰り返す。あらゆる時代の天才によって・・・。


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