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トモ 1-8

(奥さん)

(殺された)

(種なし)


 消化するまでに長い時間を必要とした。

 体もボロボロだったけれど、何故だか、心も張り裂けてしまいそうに苦しくなっていた。パスの態度が軟化して嬉しい筈なのに、寂しい気持ちが勝っていた。

 白い筈の室内が段々と暗くなっていく。心を映すように、闇が濃くなっていく。目の前に大きな空洞が口を開けてトモが落ちてくるのを待っているようだった。

(息が、できない)

(誰か助けて)

 しかし、もうトモの周りには誰もいない。ダントは殺されてしまった。

(精霊王信仰組織––黒ずくめの集団がお兄ちゃんを唆さなければ)

 空洞の中の誰かと目が合った。

 それはトモ自身だった。どんな感情も読み取ることができない、空っぽのトモ。鏡に映されたかのように、じっとこちら側を見つめている。トモの奥底に潜む感情を言い当てようとしている。


「復讐」


 2人の唇の動きが重なる。

「復讐してやるんだ。先生の奥さんの分まで。だって、既にひとり、燃やしてしまっているんだし。今さら何を躊躇うことがあるの? そうすればきっと、この苦しさから、解放される」

 トモは瞳を閉じて、瞼の裏に映る景色を受け入れた。


***


「すまん。プリンはもうなかった。代わりに––」

 パスが気まずそうに扉を開けると、ベッドはもぬけの殻だった。

 白くて眩しすぎる室内に、カーテンが勢いよくはためいていた。

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