第5話 恥ずかしいよ〜
今回は、お約束の下着ネタです(笑)
その翌日。
「よいしょっと、これはここかな」
今、僕は、荷物の整理をしている所である。
大きな荷物は、数日前に送っておいたので。
その荷物を、整理しているのだ。
大物だけ、先に送っておかげで。
こちらに来るときは、トランクだけを持って身一つでやって来れた。
・・・
そうやって荷物の整理をして、しばらく経った所で。
「はあ、大分、仕分けたかな」
一度手を止め、中を見渡すと。
荷物が部屋の中で、いくつかのグループに分かれている。
「(もう少しやってから、後は、これを家具に収納すればいい)」
そんな事を思っていると、窓を開け放っているので。
朝方の涼しい風が顔に当たり、とても気持ち良い。
「(まだ暑くない午前中の内に、片付けを何とか済まそう)」
そう思って、作業を再開しようとしたら。
「(コンコンコン)」
「入って良いよ〜」
「(ガチャッ)」
不意に、部屋のドアがノックされたので。
僕が許可するとドアが開き、一人の男の子が入った。
「ミズキちゃん、何をすれば良いの?」
部屋の中に、カズちゃんが入って来たのである。
カズちゃんは、部屋に入ると同時に、僕にそう尋ねてきた。
カズちゃんが来たのは、少し前に彼の部屋に行ってお願いしたから。
部屋の机や、本棚などを少し動かしたいので、カズちゃんに頼んだ訳である。
始めは男時代の感覚で、自分で動かそうとしたのだが。
女性化したので、予想以上に筋力が落ちていて、動かせなかった。
まさか、ここまで体力が無くなっていたとは。
自分も予想もしていなかったので、軽くショックを受ける。
ちなみに、送るときは業者の人に運んでもらったのである。
「(良い所に来てくれたよ〜)」
仕分けも大分終わったので。
そろそろ来て欲しいと、思っていた所である。
「じゃあ、カズちゃん。
まずは、これを動かしてちょうだい〜」
僕は、机の隣に移動すると。
机を叩きながら笑顔で、彼にそう頼んだのである。
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「カズちゃん、ありがとう♡」
「別に、良いから良いから」
机や棚などを、動かしてもらった後。
僕は、彼に微笑みながら、お礼を言う。
自分の為に、動いてくれたのだから。
スマイルくらいはサービスしないと。
すると、僕の微笑みを見たカズちゃんが、照れた様になり。
少し、ぶっきらぼうに返事をする。
「はあ〜、動くと思ったけど、動かなかったから」
「確かに、そんなに華奢なら、動かせないだろうね〜」
そんな風に、愚痴っていたら。
カズちゃんが僕の体を見て、そう言った。
「はあ、やっぱり、そうかなあ〜」
「うん、とても力が有りそうに見えないし。
第一、あれだけ体が軽いのだから、筋肉があるとは思えないよ」
わずかに残っている男の意識で、なるべく、考えないようにしていたけど。
その事を目の前に突きつけられて、軽くガックリしていたら。
サラリと、カズちゃんが聞き捨てならない事を、言っているに気付く。
「ああっ、カズちゃん。
あの事は恥ずかしいから、言わないで!」
「う、うん・・・」
僕が、カズちゃんから抱えられた時の事を思い出すと、顔を熱くしながら俯せて。
両手の手のひらを彼に向け、左右に激しく振る。
そんな僕を見て、カズちゃんは口を噤んでしまう。
「じゃ、じゃあ、終わったみたいだから、僕は帰るね」
「(パタン!)」
「(ダダダ〜ッ)」
「あれ?」
「えっ!」
カズちゃんが、僕の様子を見て、慌てて部屋から出て行こうとしたら。
立ってたトランクに当たり、倒れた拍子に、中の荷物が出て来て散らばった。
出て来た物を見て、カズちゃんは不思議そうな顔をするが。
僕の方は、驚いてしまう。
中から出て来たのは丸くまとめたり、重ねられた小さな布で。
しかも、様々な色や柄の物である。
それらには、小さな可愛らしいリボンが付いていたり。
中には、フリルやレースで飾り付けられた物もあった。
そう、これは僕が使っている、女性用の下着である。
それらの中には、出てきた拍子に、まとめていたのが広がってしまい。
あからさまに、どう言う物であるかを主張している物もあった。
「(たたたたっ! さっ!)」
それを見た二人は、一瞬固まったが。
次の瞬間、急いでカズちゃんの前に行き、下着を隠して。
「・・・カズちゃん。
お願いだから、出て行ってちょうだい・・・」
僕は、涙目にながら。
カズちゃんに、必死で懇願する。
「ご、ごめんなさい〜!」
「(バタン!)」
ようやく、自分が見た物が、何かを理解したカズちゃんは。
脱兎の如く、僕の部屋から出て行った。
カズちゃんが居なくなった所で。
僕は急いで、出て来た下着を片付ける。
・・・
自分が女性化してからは。
当然、下着も、女性物を付けなければならなくなった。
最初は何だか、自分が変態になった様で、物凄く抵抗があった。
しかし、特に胸が付けてないと動いてしまい。
不便な場合があるので、付けない訳には行かないのだ。
そうやって毎日、付け続けている内に抵抗感も無くなり、次第に馴れていったが。
馴れてくるににつれ、そのバリエーションの多さに驚き、そして魅了された。
様々なデザインや柄、中には、フリルやレースなどで飾り付けられた物もあり。
それらを身に着ける事に、どんどんハマっていった。
そんな、自分にとって最もプライベートな部分を、男の子に。
しかも、カズちゃんに見られたのである。
僕は泣きそうになる位、恥ずかしくなった。
何とか涙は出なかったが、まだ顔がとても熱い。
「もお〜、恥ずかしいよお〜」
そして僕は、熱い顔のまま。
部屋の中に散らばった下着を、綺麗に片付けていたのであった。