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第4話 熱烈な歓迎

 バスが目的地に着くと、そこで降り、歩いて叔父さんの家へと向かう。


 もちろんトランクは、カズちゃんが持っていてくれている。




 「へえっ、綺麗になったんだね〜」


 「うん、2、3年前にリフォームしたから」




 久しぶりに見た、叔父さんの家は、真新しい外見になっていた。


 そして、バスの中で感じた気まずさは、歩いている内に大分(だいぶん)軽くなっていたので。

カズちゃんとは、多少ぎこちないが普通に話をしている。




 「さあ、中に入ろう」


 「うん」




 カズちゃんがそう言うと、僕も返事をして一緒に玄関へと向かった。




 ************




 「(ガラガラガラ〜)」


 「ただいま〜」


 「おじゃましま〜す〜」




 二人で玄関に入ると、奥から音が聞こえる。




 「あらあらあら〜」




 奥から、声を上げながら叔母さんが出てきて。

その後ろから、遅れて叔父さんが出てきた。




 「瑞樹ちゃん、こんなに可愛くなっちゃって〜」


 「・・・瑞樹くん、本当に女の子になったんだな」




 叔母さんは、僕を見てテンションが高くなり。


 叔父さんは、女の子になった僕を見て、絶句する。




 「よかった〜、女の子が欲しかったから。

 瑞樹ちゃんが来てくれて、嬉しいわ〜」




 すると叔母さんは。

僕に近付き、ペタペタと体を触った。




 「叔父さん、叔母さん。

 これから(よろ)しくお願いします」




 僕は、テンションが高い叔母さんに引きながらも。

帽子を脱ぎ、胸元に置きながら、二人に挨拶をする。




 「良いのよ、良いのよ。

 やっぱり、女の子は良いわあ〜」


 「あ、ああっ・・・」




 僕の挨拶を聞いて、ますますテンションが高くなる叔母さん。


 それとは相反して、呆然とする叔父さん。




 「そんな所に居ないで、さあさあ上がって」


 「うん、瑞樹く・・・、女の子になったから、瑞樹ちゃんか。

 さあ上がりなさい」




 叔母さんはテンションが高いまま。

叔父さんは気を取り直して、僕にそう言った。


 こうして、僕だけでなくカズちゃんも、叔母さんのテンションに引きながらも一緒に上がって行った。




 ************




 「は〜、疲れたなあ〜」




 今、僕は、ダンボール箱が積まれた自分の部屋で、溜め息を付いていた。


 風呂上りの濡れた髪を乾かして、ようやく落ち着いた所である。


 それもあってか、思わず溜め息を付いたのであった。



 ・・・



 叔父さん達は、二階の部屋を僕にくれた。


 丁度、カズちゃんの隣の部屋になる。


 僕の為にわざわざ部屋を一つ、明けてくれたのだ。


 それで、上がって、すぐ部屋に向かい。

布団など、取り合えず一晩必要な物だけ出しておいた。





 「(しかし、こんなに歓迎させるとはねぇ・・・)」




 そして、僕は部屋のベッドの上で。

パジャマ姿で、ペッタンコ座りになりながら、そんな事を思っていた。 


 確かに、(すす)めてきたのは叔父さん達だが。

実際に、歓迎されるのかどうか、不安であった。


 しかし、実際に来てみれば、その不安は無かったけど。

逆に、熱烈な歓迎に困惑もしていた。


 ・・・主に、叔母さんのおかげで。


 例えば、夕飯を作る時とか

 



 「あ、叔母さん、私も手伝うね」




 叔母さんが台所に居るので、手伝おうとすると。




 「瑞樹ちゃん、長旅で疲れてるでしょ?」


 「ううん、これからご厄介になるから、少しは手伝わないとね」




 微笑みながら僕がそう言ったら、叔母さんが。




 「あ〜ん〜、やっぱり、女の子が居ると違うわ〜」




 そう言いながら、僕をハグしてきた。


 僕は、そんな叔母さんに苦笑するしかなかった。


 その後も、夕飯の支度や後片付を手伝う度に感激して、僕をハグしてくる。


 そして叔父さんも。




 「女の子が居ると違うな」




 と言って感心するけど。

叔母さんほどの、テンションになっている訳では無い。


 ちなみに、家事の手伝いは、女の子になったから急にし出したのでは無く。

男時代から、母親の手伝いを良くしていたのである。




 「ミズキちゃん、そうしてると、とても女の子らしいよ」




 そんな僕の様子を見て、カズちゃんもそう漏らしていた。



 ・・・



 僕は、その時のカズちゃんの言葉を、思い出していた。




 「そう言われちゃうとねえ・・・」




 カズちゃんが言った言葉に、僕は複雑な感情を抱いた。



 ・・・男として、そう言われてガックリ来たのだが。

女としては、彼からそう言われる事に、嬉しくなる。


 昼間、カズちゃんから綺麗と言われた時は。

カズちゃんが良い男に変わった驚きと、そんな相手から()められた動揺で、余り意識してなかったが。


 僕は今だに、女の子として褒められる事に、違和感を持っていた。




 「はあ〜・・・」




 僕は、そんな複雑な思いのまま。

もう一度、ベッドの上で、溜め息を付いたのであった。



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・思い出の海と山と彼女
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