最終話 一緒に行こうね
あれから、日にちも過ぎ。
今日は、二学期の始業式の日。
「(コンコンコン)」
「カズちゃん、時間だよ〜」
「・・・」
「(コンコンコン)」
「カズちゃん、今日から学校でしょ〜」
「・・・」
制服に着替えた私は、カズちゃんを起こしに彼の部屋へ行き。
ドアをノックして、カズちゃんを起こすが、中からは何の反応も無かった。
「もお〜、入るよ〜」
「(ガチャ)」
「(zzzzzzz・・・)」
「あ〜、まだ寝ている〜」
反応が無いので、仕方なく、私はカズちゃんの部屋に入ると。
その当の本人は、まだ気持ち良さそうに寝ていた。
”もう、夏休みも終わったんだから、気を引き締めないといけないのに〜”
そう思いつつも、気持ち良さそうに寝ている彼の顔を見て。
お仕置きを兼ねた、イタズラを思い付く。
私は、意地悪な笑みを浮かべながら。
カズちゃんのベッドに近付き、座り込んだ。
「(zzzzzzz・・・)」
そして、寝ているカズちゃんの近くに、一度顔を寄せ。
可愛い彼の寝顔を眺めると、次に彼の鼻を摘んだ。
「(zzzz・、zzz・・、zz・・・)」
「(くすくすくす)」
「ふぐ・・・、うぐ・・・、ううう・・・」
「(くすくすくす)」
「ぶはっ!」
「(ガバッ!)」
「はあ、はあ、はあ・・・」
カズちゃんの鼻を摘みつつ、その顔を笑顔で眺めていたら。
彼は最初、安らかな顔だったのが、次第に顔を歪ませ。
そして最後に急に起き出し、荒い息を吐いた。
「はあ、はあ、はあ。
もお〜、ミズキちゃん、何をするんだよお〜」
「ほら、カズちゃん起きなさい。
今日から、学校でしょ」
「あっ、そうかあ」
イジワルな起こし方に、カズちゃんが寝起きの状態で抗議するけど。
私がそう言うと、今日から学校である事を思い出したようだ。
「・・・でも、ミズキちゃん。
もう少し、優しく起こして欲しかったなあ・・・」
「ごめん、ごめん。
じゃあ、お詫びにカズちゃんにサービスしちゃうよ〜」
しかし、まだブツブツ言うカズちゃんに。
ヤリ過ぎたかなとも思った私は、彼にそう言った。
「・・・カズちゃん」
「(すうっ・・・)」
「(チュッ♡)」
「えっ?」
私は、カズちゃんの名前を呟きながら。
彼の頬を、両手を包み込むように添えると、彼の唇に軽いキスをした。
そして予想もしなかった不意打ちのキスに、カズちゃんは驚く。
あれから二人は、何回かキスをしたけど。
私の方から、しかも不意打ちのキスなど初めてであるから。
カズちゃんが、予想以上にビックリしていた。
「ふふふっ、カズちゃん、早く着替えて降りてちょうだい。
もうすぐ、朝ご飯が出来るから♪」
「・・・う、うん」
不意打ちのキスに、呆然としているカズちゃんを尻目に。
照れくさくなった私は、慌てて立ち上がると。
そう言って、一階へと向かった。
「(さ〜てと、早く降りて。
叔母さんの手伝いをしないとね)」
自分でしたことなのに、照れくさくなった私は。
そんな事を考えながら、階段を降りたのであった。
************
朝食を済ませた後、学校へ行く準備を終えると。
私たちは、一緒に玄関を出発した。
玄関を出るとき、遅れて出勤する叔母さんから。
「和也の事をよろしくね〜」
と言ったけど、カズちゃんが。
「今日は、僕が面倒をみるんでしょっ!」と突っ込んだ。
それから玄関を出発して。
少し憮然とするカズちゃんと対照的に、私はクスクスと笑っていた。
・・・
今日は、始業式であると共に。
私の初登校日でもある。
私が編入する学校は、カズちゃんと同じ学校なので、一緒に登校している。
彼は電車通学で、駅まではバスを利用しているから。
バス停まで、歩いて向かっている所だ。
ちなみに、学校の制服は伝統的なセーラー服で、男の子も学生服である。
試しに夏の制服を着てみたが、思ったほど野暮ったくなく。
スカートも都会みたいな短さではなく、膝丈であるけど。
それが逆に、清楚で上品な雰囲気を醸し出していた。
新しい制服を着た姿を、カズちゃんに見せてみたら。
彼は、しばらくの間ボーとしていた。
後で、私に見惚れていたんだと気付くと。
何だか恥ずかしくなった。
「今日から、新しい学校に編入するのか・・・。
はあ〜、緊張するなあ〜」
「ミズキちゃん、落ち着いて落ち着いて」
私は、カズちゃんに告白してからは。
不思議な事に、女の子としての自分に、何の違和感も持たなくなり。
反対に、男だった事は、意識しないと思い出さないまでになった。
だから会話だけでなく。
心の中の声も、自分の事を”私”と呼ぶようになっていた。
そして私は、歩きながら不安な心情を漏らしていたら。
カズちゃんが、すかさずフォローしてくれる。
「・・・まあ、大丈夫だとは思うんけど。
でも、チョットは不安があるね」
でも、まだ不安がある私は。
敢えて口にして、気を紛らわそうとした。
「大丈夫だよ」
「えっ?」
「大丈夫だよ、ミズキちゃん」
すると、隣で歩いていたカズちゃんが、力強く言ったの聞いて。
私は、一瞬驚いたが。
それに続いて、なおも彼が言った。
「ミズキちゃん、学年が違うから、すぐには飛んでは行けないけど。
でも、出来るだけミズキちゃんの側にいるから、大丈夫だよ」
「・・・カズちゃん」
そして、カズちゃんは優しい笑顔を見せながら、そう言ってくれた。
「だって、ミズキちゃんは僕の彼女なんだからね〜♪」
「もお〜、カズちゃんたら〜」
しかし、次に戯けたように言った言葉に、私は苦笑した。
「ねえ、カズちゃん」
「なに? ミズキちゃん」
「手、繋いでもいい?」
「いいよ」
そうやって歩いていたら、何だか手を繋ぎたくなった私は。
思わず、カズちゃんに言ってみた。
すると、カバンを持ってない左手を差し出して来たので。
私は右手で、彼の手を握った。
大きくて暖かな手。
今では、それが側に有る事が当たり前になっていた。
「カズちゃん」
「うん?」
「これからも、こうしてずっと一緒に行こうね」
「そうだね、ミズキちゃん。
いつでも、ずっと一緒に行こう」
僕がそんな事を言うと、カズちゃんがそう返してきた。
二人とも、何気なく言った言葉だったが。
しかし理由は分からないけど、言った後、何だか誓いの言葉の様に感じてしまった。
「あ、急がないと、遅れるよ」
「そうだねカズちゃん、急ごう」
妙に照れくさくなった二人は、そう言ってバス停へと急ぐが。
なおも、手は繋いだままである。
こうして私たちは、手を繋いだままバス停へと向かったのであった。
こんな僕でもいいの? 終わり
最後までお読みになられまして、有り難うございます。
今回、目標のブックマ100件越えも達成しました。
これも、皆様のおかげです。
しかし内容的には、相も変わらぬチラシの裏で。
特に今回は、句点と改行に関して指摘を受けました。
これからはこの点に付いて、少しでも改善出来るよう努力します。
それでは、皆様の御健康と御発展を願いまして、この話を終了とさせて頂きます。




