第27話 こんな僕でも良いの?(前)
話の途中で第三者視点に変わる所があるので、注意してください。
それからはと言うもの。
「(カズちゃんだ・・・)」
「(さささっ)」
カズちゃんの姿を見たら、隠れるようになったり。
「あっ、ミズキちゃん。ちょっと良い?」
「ご、ごめんね、後で良い?」
「(たたたっ)」
「・・・」
彼の前から、逃げるようになった。
別に、カズちゃんの事が、嫌になった訳ではないが。
一緒に居ると、辛くなってしまう。
しかし、そうやって逃げた後。
自分がした事への後悔と。
逆に溢れ出す、彼への思いで却って辛くなった。
「(僕は何をしたいんだろうか・・・)」
そんな自分に、次第に嫌悪感が出て来てしまう。
「はあ〜・・・」
僕は、自室のベッドの上で膝を抱えたまま。
溜め息を吐いていたのであった。
・・・
(*その頃、和也の方は)
「ねえ、和也〜」
「なに? 母さん」
廊下を歩いていた和也が、突然母親から呼び止められた。
「最近、瑞樹ちゃんの様子がおかしいの。
アンタ、何か知ってるの?」
「まあ、心当たりが無い訳じゃないんだよね・・・」
「アンタ、瑞樹ちゃんに何かしたのね!」
母親からの質問に、和也が言葉を濁した様に答えたので。
母親が、そう問い詰める。
「してないよ! してないよ!」
「じゃあ、何でアンタを露骨に避けているのよ!」
「心当たりがあるけど、誤解だよ〜」
そう言って詰め寄る、母親にタジタジになった和也が。
焦りながら、返す。
「瑞樹ちゃんが、誤解すると言う事は。
アンタが、紛らわしい事をしてたからでしょ!」
「そんな無茶苦茶だよ〜」
和也が、声を上げて抗議する。
「とにかく、和也。
アンタが、瑞樹ちゃんの所に行って謝るんだよ」
「そんな〜」
「未来のウチの嫁になるんだから。
早く、仲直りしなさい」
「誰の嫁だよ! 誰の!」
母親が、サラリと言った一言に。
和也は、血相を変える。
こうして、何も悪いことをした覚えが無い和也が。
一方的に、謝らなくてはならなくなった。
しかし、様子が変な瑞樹に。
何かをしてやりたいと、思っていたことは、確かであった。
こうして、和也は瑞樹と話をしようと、思い立ったのである。
************
それから夜になり、部屋でまた膝を抱えていたら。
「(コンコンコン)」
「ミズキちゃん、ちょっと良い?」
「・・・カズちゃん、後からじゃ、ダメ?」
「ミズキちゃん、今、話したい事なんだよ?」
「・・・うん、分かった・・・」
カズちゃんが、部屋にやって来たのだけど。
会う気持ちになれない、僕は断ろうとするが。
彼の言葉に、渋々、了承した。
「ねえ、ミズキちゃん、最近何か変だよ。
僕の事を妙に避けているし」
「(ビクッ!)」
部屋に入ったカズちゃんは、僕を見ると、イキナリそう言う。
その言葉を聞いた僕は、一瞬、体を震わせ。
そして、近くに有った枕を、思わず抱き締めた。
「もしかして、あの娘の事?
だから、あの娘は本当の妹みたいだ物なんだから・・・」
「(ブルブルブル)」
カズちゃんが、そう言うけど。
僕は、首を振った。
確かに、あの娘の事もあるけど。
でもカズちゃんには、他にも思いを寄せている娘が、何人も居るのも知った。
あの娘と、仮に何も無かったとしても。
他にも、好意を持っている娘達が、次に近寄ってくるかもしれない。
だから、その事を考えたら、あの娘に対する不安も霞んでしまっていた。
「・・・そう、じゃあ、何か心配事があるのなら、話してみて。
僕が出来る事ながら、何でもするから」
「やめて!」
僕の返事の聞いた、カズちゃんが、続けて言った言葉を聞いて。
僕は、思わず叫んでしまった。
「やめて、やめてよ、カズちゃん・・・」
「・・・ミズキちゃん」
「そんなに優しくしないでぇ・・・」
そして、抱いていた枕を横に置き。
膝を抱えていたベッドから、立ち上がった。
「カズちゃんに優しくされると。
私、どうして良いのか、分からなくなるの・・・」
「落ち着いて、ミズキちゃん」
「だって、だって、私はカズちゃんの事が好きだから!」
興奮した僕は。
激情のまま、自分の思いを口にしていたのであった。




