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第24話 どこまで進んでいるの?

 ある日の夕方。




 「瑞樹ちゃん、ニンジンの皮を剥いてちょうだい」


 「は〜い」




 僕は今、叔母さんと一緒に台所に居た。


 なぜかと言うと、二人で夕飯を作る為である。


 とは言っても、僕は叔母さんの補助にしかならないけどね。


 さっきまで、ショッピングモールにあるスーパに出かけ。

叔母さんと一緒に買い物をしていた。


 それから買い物を終え、車で家まで返ると。

そのまま台所に向かい、二人並んで流しの前に立ったのだ。




 「(シュ、シュ)」




 僕はピーラーで、ニンジンの皮を剥いていく。


 そうやって、叔母さんの隣で皮を剥いていたら。




 「ねえ、瑞樹ちゃん」


 「何ですか?」


 「和也と、どこまでいっているの?」


 「えっ!」




 突然、叔母さんがこちらを向き、そう話したので。

僕は思わず、ニンジンを落としそうなった。




 「ど、ど、ど、どうしてですか〜!」


 「うん、だって、瑞樹ちゃん。

 いつも和也の事を、眼で追っているじゃない」


 「えっ?」


 「それに、いつだって瑞樹ちゃん。

 和也の事、話すときには嬉しそうだしね」


 「・・・」




 僕は叔母さんの話に、黙ってしまった。

言われてみれば、確かに、心当たりが有ることばかりである。




 「だから、瑞樹ちゃん。

 和也の事が、好きなんじゃないかと思ったのよ。

 違った?」




 ”違った?”と言いながら、絶対の自信がある顔で。

叔母さんが、僕の事を見ている。




 「う〜ん、カズちゃんの事は好きだけど。

 叔母さんの、言う様な事じゃ無いと思うんだけど・・・」


 「はあ〜、まだ自分の本心に目を向けてないわね・・・」


 「?」




 僕の言葉を聞いて、叔母さんがガックリ肩を落とした。


 確かに、実の姉弟みたいに仲が良くて、安心できる従姉弟として。

いつも一緒に居てくっ付いたり、お互いジャレ合ってるし。


 ・・・くっ付くのは、カズちゃんの感触が気持ち良いからなのは、内緒だけどね。


 それに僕は、カズちゃんの前なら自然に女の子になれるけど。

しかし、それ以上の感情に付いては、表現のしようが無い。




 「それに、私は元男ですよ」


 「それがどうしたの?」


 「えっ?」


 「だって、瑞樹ちゃん。

 どこからどう見ても女の子じゃない」




 僕の中で、常に(くすぶ)っていた事を話してみると。

意外な答えが返ってきた。




 「でも、カズちゃん、昔の。

 男だった頃の、記憶だってあるし」


 「あら、でもね、小さい頃は男の子以上にお転婆だったけど。

 成長してから、大和撫子になったって話だってあるのよ。

 だから、あの子だって、そう思っているはず」


 「えっ?」


 「瑞樹ちゃん。

 あなたは自分が女の子である事に、自信を持ちなさい」


 「・・・」


 「あなたはモールで騒いでいた、あの娘達よりも、よっぽど女性らしいと思うわ」




 その時、モールにあるホールで大声で騒いでいた。

濃いメイクに、ケバい服装の同年代の女の子達が、脳裏に浮かんだ。




 「それにね、あの人だって。

 “こんな娘が欲しかったんだ”って、言ってのよ」


 「叔父さんが?」


 「そうよ瑞樹ちゃん、あの人の世話を甲斐甲斐(かいがい)しく見てるんでしょ。

 最初は瑞樹ちゃんを見て、ビックリしていたけど。

 その内、あなたの事を物凄(ものすご)く気に入って。

 “和也の嫁になってくれたらなあ”って、言い出し始めているんだから」


 「始めて聞いた・・・」


 「で、職場で同僚の人達に、瑞樹ちゃんの事を言っているらしいの。

 "ウチには、こんな出来た娘が居る"なんて。

 それで同じ年頃の娘が居る人間に、凄く(うらや)ましがられているとか。

 そんな事を、私に自慢気(じまんげ)に言っているのよ。」




 叔父さんが、僕の事をそんな風に思っていたなんて、始めて知った。




 「(トントントン)」




 叔母さんが、僕が皮を向いたニンジンを切っている。


 トントントンとリズミカルに、まな板の上で切っているが。

それも、僕と会話をしながらだ。


 さすがは長年のキャリアである。


 僕は感心しながら、次にジャガイモの皮を向いていた。


 ちなみに、今日はカレーだそうだ。

暑い時に、熱くて辛い物を食べて暑気(しょき)払いをすると言う事らしい。




 「でも・・・」




 まだ納得いかない僕は、そう呟く。




 「それに瑞樹ちゃん、体も女性の体になったよね」


 「はい・・・」


 「それなら、瑞樹ちゃん子供が生めるでしょ。

 だったら、中身もお淑やかで思いやりがあるし。

 どこをどう見ても、正真正銘(しょうしんしょうめい)の女の子じゃないの?」


 「えっ?」


 「うふふっ、思ったよりも早く、孫の顔が見れそうだわ。

 あ、そうは言っても、まだ学生だから今はダメよ。

 する時は、シッカリ避妊しなさい♪」


 「お、叔母さん!」




 叔母さんが含み笑いをしながら、そう言い出した。


 突然言い出した、叔母さんの言葉に。

僕は、顔から火が出るほど熱くなったのであった。



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・思い出の海と山と彼女
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