表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/29

第19話 海に行って遊ぼう4

 僕は、そのままカズちゃんに、抱かれたまま震えていたのだが。




 「(カーーーーッ!)」




 落ち着いてくると、今度は逆に体が熱くなってきた。


 今、二人は、水着を着ている状態で抱き合っている。


 つまり、”ほぼ裸で抱き合っているのと、変わらないんじゃないの!”

そんな変な事を妄想してしまい、それで熱くなってしまったのだ。




 「(ドクンドクン)」




 そして、重なった肌を通して、カズちゃんの鼓動が伝わってきた。


 多分、カズちゃんも、その事に気付いたのだろう。

伝わる鼓動は、鐘が鳴る様に早かった。




 「カ、カズちゃん、ありがとう。

 もう、私は大丈夫だから・・・」


 「う、うん・・・」




 さすがに、恥ずかしくなったので。

そう言って、カズちゃんに廻した腕を緩める。


 すると、カズちゃんの方も、僕から離れてくれた。


 カズちゃんから、離れた事にホッとした反面。

あの抱き締めてくれた、腕の感触が肌に残り。

逆に、まだ触れて居たくなる様な、未練を感じてしまった。




 ************




 あれから再び、みんなと合流した後。

海の家で、昼食を取る。


 例の二人組が居ないか、心配だったが。

どうやら、既にどこかへ行ったのか、姿が無かった。


 それで安心して、昼食を済ませたら。

午後は、自由時間となった。




 「カズちゃん、海に入ろうよ〜」


 「あ、待ってよ、ミズキちゃん!」




 結局、僕はカズちゃんと、行動を共にしている。


 例の二人組の件もあるけど。

航くんたちも、カズちゃんの目が無いと、手を出してくる心配があるので。

カズちゃんに、くっ付いているのである。


 最初、航くんたちは、僕と二人きりになるのを狙っていたのだが。

“カズちゃんと一緒が良い”と言って、意思表明した所。

諦めた航くんたちは、カックリ肩を落としながら、他の娘をナンパしに出かけてしまった。


 そしてカズちゃんと、二人きりになった途端。

あの二人組の事も忘れて、無防備になると、海へと向かって駆け出した。


 一方のカズちゃんは、そんな僕の後を追った。




 「(バシャ、バシャ、バシャ)」


 「(バシャ、バシャ、バシャ)」




 水音を立てて走る僕と、カズちゃん。




 「それっ!」


 「(バシャッ!)」


 「うっぷっ!」




 一旦、止まって振り返り。

追いかけてくるカズちゃんに、海水を掛ける。




 「それそれそれ!」


 「(バシャバシャバシャ!)」


 「ちょ、ちょっとお、待ってよお、ミズキちゃん!」


 「ほらっ、カズちゃん捕まえてごらんなさい〜」




 カズちゃんに水を何回か掛けて、(ひる)んだスキに逃げると。

逃げる僕の後を、カズちゃんが追いかける。


 しかし僕は逃げながらも、時々振り返り。

舌をチロリと出しては、カズちゃんを挑発したのである。



 ・・・




 「ちょっと、ミズキちゃんストップ!」


 「きゃっ!」




 しばらく逃げて、カズちゃんが僕を捕まえようとした所。

足元を砂に取られ、僕に倒れ込んできた。


 それに気付き振り返るが、何とかカズちゃんを受け止める事が出来た。




 「ご、ごめん!」


 「(ギュッ!)」


 「・・・ミズキちゃん」


 「お願い・・・、このままで居てちょうだい・・・」




 名残(なごり)()しかった腕の感触に、再び触れたので。

思わず、彼の背中に自分の腕を廻して、そう言ってしまった。


 今度は恥ずかしさよりも、カズちゃんの感触を欲していたからである。


 すると、そんな僕の様子を見たカズちゃんが。

また、僕の事を抱き締めてくれる。


 人の目のある、砂浜で抱き合って目立つと思ったが。

逃げ回っている内に、たまたま有った岩場の影に隠れていた。


 こうして再び、カズちゃんの腕の感触を、感じる事が出来た僕は。

時間を忘れて、その腕の感触を堪能(たんのう)したのであった。




 ************




 「(カタン・・・カタン・・・)」




 海岸から帰る、電車の中。


 僕は、車窓から差し込む夕方の光を浴びていた。


 あの後、しばらく経って、みんなの所に戻ったら。

航くんたちは、何だか沈んでいた。


 理由を聞いてみると。

みんな、色々とナンパをした様だが。

結局、女の子全員から相手にされなかったそうだ。


 そんな訳で、カズちゃんが、みんなからの嫉妬の視線を浴びて。

心持ち、冷や汗を()いている様に見えた。


 それから全員、海の家で着替え、家へと帰る所である。




 「ぐおお〜っ」


 「ZZZZZZ〜」




 僕の周囲から、様々な音が聞こえる。


 みんな、色んな意味で疲れてしまい。

それぞれ、ボックスシートに座ったまま、眠り込んでいた。


 聞こえているのは、みんなのイビキである。




 「すー、すー」




 カズちゃんも、やっぱり同じように眠っていた。


 カズちゃんは僕の右隣で、僕の肩に頭を乗せて寝息を立てている。


 先ほどまで、僕も、みんなと一緒に眠っていたのだが。

肩にカズちゃんの重みを感じ、それで目が覚めたのだ。





 「(すう〜っ)」


 「(サラッ、サラッ)」




 自然に左手を伸ばし、カズちゃんの髪を撫でてみた。


 カズちゃんの髪は、サラサラして触り心地が良い。


 そんなカズちゃんの髪を、撫で始めたら。

なぜか、手が止まらなくなってしまった。




 「うふふっ、可愛いなあ・・・」




 寝ているカズちゃんの顔を見て、思わず(つぶ)いていた。




 「(なんだか、本物の女の子みたいな事をしてるなあ・・・)」




 カズちゃんの髪を撫でている途中で。

自分が自然に、元からの女の子みたいな行動を、取っていた事に気付いた。


 今までは、表立っては言葉遣いや立ち居振る舞いまで。

リハビリ時のレクチャーで、教わった事を意識的に行っていた。


 女の子として生きていくのに、不都合が無いようにである。


 だからココに来るまで、女の子として生きる為と、割り切っている所為(せい)か。

上手くやっているつもりでも、心の中では、どこかモヤモヤした物があった。


 しかし、あの日から。

特にカズちゃんの前では、何の無理も無く自然に女の子になれた。




 「カズちゃんのおかげかな・・・」




 今度は、カズちゃんの頬を撫でながら呟く。


 カズちゃんの頬は、思ったよりもツルツルしていて感触が良い。


 僕は可愛い寝顔のカズちゃんを見て、頬を緩ませた。


 そうやって僕は、頬を緩ませつつ。

駅に着くまで、カズちゃんの頬を撫で続けていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品に、ローカル色(熊本)を加えた作品です。
・思い出の海と山と彼女
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ