↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/29

第10話 ちょっとしたイタズラのつもりが

 僕が、カズちゃんから慰めてもらってから数日後。


 それは、昼過ぎの事であった。




 「うわぁ〜、冷たい〜」




 たまたま居間に入ると、冷たい空気を肌に感じてしまい。

その感触は、寒さを感じる位であった。


 僕は女の子になってから、ちょっとした事で、すぐに体が冷えてしまう様になってしまった。


 どうやら、冷え性になってしまったみたいである。


 例えば、女の子になって向かえた、始めての冬。


 あの時は外に出たりすると、すぐに膝から下、手首から先が冷えて、とても困ってしまった。


 しかも一番困るのは、勉強する時。

部屋の中でも、手を外気にしばらく晒(さら)すと、手が上手く動かなくなる位に悴(かじか)んでしまう事だ。


 でも、手首や手の甲を上着の袖(そで)で隠す。

俗に言う萌袖にすると、冷えが緩和(かんわ)されて楽になるのを発見する。


 あの萌袖はただ可愛く見えるだけなく、防寒の意味があるのだと、その時初めて気付いた。




 「ちょっとカズちゃん、冷房、効き過ぎだよ〜」




 平日の今、家に居るのは、夏休み期間中の僕とカズちゃんだけである。


 叔父さんはもちろん、叔母さんも仕事に出ている。


 だから、こんなに冷房を掛けているのは、彼だけだ。


 確かに、男の子の方が体温が高いので、暑がりなのは分かるけど。

これでは逆に体に良い訳は無い。


 少し、注意しようと、彼を探すと。




 「もお〜、こんな所で寝ている〜」




 カズちゃんは、ソファーの上で昼寝をしていた。


 僕は彼を起こそうと、ソファーに近寄る。




 「ほらっ、カズちゃん。

 こんな所で、寝ちゃダメでしょう〜」


 「むにゃむにゃむにゃ・・・」


 「もお〜、起きなさい!」


 「後、5分、後5分だけ・・・」




 彼を起こそうとするけど。

いくら揺すっても、寝言を言うだけだった。


 何度も揺すっても、起きる気配が見えないので。

一旦、揺するのを止めて、彼を見てみる。


 すると僕の目が、カズちゃんの胸板に止まった。




 「・・・ごくり」




 僕は彼の胸板を見て、思わず喉を鳴らした。


 カズちゃんの胸板を見て。

彼に抱き締められ、慰められた時の事を思い出したのだ。



 見かけよりも、逞(たくま)しい腕。


 暖かい体温をした肌。


 安心して身を任せられる、広い胸。



 その事を思い出して、顔が熱くなるが。

それでも、彼の胸板から目を離すことが出来なかった。




 「・・・ちょっとだけだよ」




 誰とも無く、そういう言い訳を言うと。

他に人が居る訳でもないのに周りをキョロキョロ見た後、熱に浮かされたようにソファーとテーブルの間に座り込んだ。


 そして座り込みと、寝ているカズちゃんの胸に頭を乗せる。




 「うふふっ」


 「(すりすりすり)」




 寝ている彼の胸に、頭を乗せたら。

満足そうな笑みを浮かべつつ、頬ずりを始める。




 「(ギュ〜ッ)」




 頬ずりをして、カズちゃんの広い胸を堪能(たんのう)している内に。

いつの間にか、彼の体に抱き付いてしまっていた。




 「(しかし、男の子の胸が、こんなに気持ち良いなんて。

 自分が男の時には、想像もしなかったけどなあ〜)」




 寝ているカズちゃんにイタズラしながら、熱に浮かれて頭で、そんな事を思っていたら。




 「(バッ!)」


 「(ギュッ!)」


 「(えっ?)」




 寝ているカズちゃんが、イキナリ僕を抱き締めてきた。




 「・・・カズちゃん、起きているの?」


 「むにゃむにゃむにゃ・・・」




 ビックリした僕は小声で聞いてみるが、返ってくるのは寝言のようなので。

どうやら寝ボケているみたいである。


 突然のカズちゃんの行動で、冷静になった僕は。

何とか、彼の腕から脱出しようとするけど、寝ている割にはビクともしない。




 「(すーっ、すーっ)」


 「(なんなの?)」




 そうやって何とか抜けそうと、必死で藻掻(もが)いていたら。

どう言う訳か、不意にカズちゃんが僕の頭を撫で出した。




 「大丈夫・・・、ミズキちゃん大丈夫だから・・・」


 「・・・カズちゃん」




 ビックリする僕を余所に、そう言い出したが、まだ起きてる訳ではない。


 しかし、夢の中でも僕の事を心配しているカズちゃんに、ジ〜ンとしてしまった。




 「(すーっ、すーっ)」


 「(カズちゃん、もっと、もっと撫でて・・・)」




 頭を滑る感触が気持ち良くて。

僕は心の中で、更なる愛撫を要求していた。




 「(ギュッ)」


 「(すりすりすり)」




 僕は、カズちゃんに頭を撫でられながら。

彼に、強く抱き付いて頬ずりをする。


 冷えた部屋の中で頬に当たる暖かい彼の肌は、とても気持ち良くて、思わずトロけてしまう。


 こうして、ホンの出来心でしたイタズラであったが。

カズちゃんの予想もしない行動に、僕はトロけてしまった。



 ・・・




 「ふぁ、あああ〜っ。

 って、ミズキちゃん!」


 「んんんっ・・・。

 あれ、カズちゃん?」




 頭の上で狼狽(うろた)える、カズちゃんの声で気が付く。


 眠気があって、頭が良く回らないので。

どうやら、いつの間にか眠ってしまったみたいだ。




 「あの、その、えっと、ミズキちゃん・・・」


 「くすくすくす、良いのよカズちゃん」




 僕を抱いたまま、寝ていた事に気付いた彼は、シドロモドロになるが。


 カズちゃんに、ギュっとされながら寝ていた僕は、とても満足な気分で笑っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品に、ローカル色(熊本)を加えた作品です。
・思い出の海と山と彼女
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。