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五話「精霊と悪魔」

五話「精霊と悪魔」

「・・どうかしたの?古川君」

「いや・・なんでもない」

 とある休み時間。隼人はアヤに何かを言うつもりだったのか近づい

 てきたが、すぐに離れて言った。アヤは太助の腕を思いっきり

 引っ張った。そして、そのまま廊下へと連れて行く。

「・・何かあったのか?」

「古川隼人・・彼・・本当に普通の人間なの?」

「ああ。俺みたいに退魔師じゃないとは思うが・・」

 だが、隼人はアヤをまるで化け物のように見ていた。見た目で判断

 出来るはずはない。だが、隼人は他の者と違う目線でアヤを見てい

 た。まるでアヤが悪魔だと分かっているかのように。

「・・精霊と契約しているのかもしれないわね」

「可能性は否定できないが・・」

 それでも警戒する必要はないだろう。隼人が何の理由も無しに誰か

 を攻撃することなどまず考えられない。そういう性格ではないから

 だ。完全平和主義というわけではないが、それでも自ら争いを起こ

 そうとするタイプの人間ではない。

「彼はそうかもしれない・・でも、契約している精霊が彼と同じとは

 限らないわ」

 このアヤの不安が見事に的中したのは昼休みであった。アヤと太助

 の二人はいつも校庭の隅の方のベンチに座って弁当を食べている。

 アヤが来るまでは購買のパンであったが、アヤが来てからはアヤが

 毎日弁当を作ってくれている。二人で弁当を食べている最中、アヤ

 が箸を弁当の上に置き周囲を窺っている。

「・・どうかしたのか?」

「・・不安が的中したみたい・・」 

 アヤの言葉の意味はすぐに理解できた。周囲の風景が変わっていく。

 退魔師と悪魔や、悪魔と精霊の戦いは周囲の建物や生き物にも影響

 を与える。双方が力の全てをぶつけ合うために、相当の被害が周囲

 に出てしまうのだ。そこで、優れた退魔師や、力の強い精霊、悪魔

 は戦いの際に閉鎖空間という存在しない空間を作り上げる。周囲の

 世界から完全に閉鎖された空間。その内部で戦うことにより、周囲

 への影響をゼロにするのだ。

「・・閉鎖空間を作り上げるなんて・・よほど強い力みたいね」

 アヤの足元に光弾が叩き込まれる。ギリギリで回避するが、何発も

 連続で撃ち込まれれば避けれるのは難しくなってくる。太助とアヤ

 の目の前に白い光の球体が出現する。これが精霊の仮の姿だ。普段

 人間の世界にいる精霊はこういう形をしている。この力の時、精霊

 は使える力が大幅に制限される。

「あなたが・・古川隼人の契約制霊ね?」

『そうよ。私が隼人の契約制霊・・アクア』

「一体なんのつもり?あなたの契約者は私との戦いは望んでいないよう

 だけど・・」

『隼人を守るためよ。あなたのような悪魔からね』

 白い球体が変化していく。その姿は人間そのものであった。精霊は上級

 と下級の二種に分別される。下級精霊であれば、その力は大したことは

 ないが、上級精霊となると、そこにいるだけで周囲の環境に影響を与

 えてしまうほどの力となる。そのため、精霊は仮の姿で普段は過ごし

 ている。だが、閉鎖空間を作り出したアクアは仮の姿から真の姿へと

 変化した。青い髪と青い瞳を持つ精霊が今二人の前にいる。

「こちらに戦う意思はないわ」

『悪魔の言葉なんて信じられないわ』

「・・どうしてもっていうなら、戦うけどね」

 アヤがアクアに迫る。一瞬で勝負をつけれるとアヤは考えていた。

 アヤは上級魔だ。そこら辺の上級精霊に負けるほど弱くは無い。

 だが、アヤの腕がアクアを掴む前にアヤの体が宙を浮いていた。

 そして、数秒後アヤの体が地面に叩きつけられる。

「っ・・」

「アヤ、大丈夫か?」

「な、なんとかね・・」

 アクアが腕を振りかざした。アクアの腕が青く輝いていく。魔法

 を使うつもりだろうか。人間の使う魔法より精霊の使う精霊魔法

 の方が威力が高い。更にまだアヤは態勢を立て直していない。こ

 のままではまずい。

『これで・・終わりよ』

 アクアの放った青い光の弾がアヤに向かって飛ばされる。アヤは瞬時に

 反応し、光の弾を相殺する。だが、アクアは更に強力な魔法を放とうと

 していた。太助はどうしようも出来ずにただ、見ていた。この二人を止

 めれる力など持ってはいないし、二人が話を聞いてくれるとは思えない。

 例え聞いてくれたとしてもそれで戦いが終わるとは思えない。だが太助

 はここで一人の人物を思い出す。

「そうか・・あいつなら・・」

 太助は閉鎖空間から何とか抜け出し、校舎へと向かっていた。古川隼人。

 精霊アクアと契約する人間に彼女の制止を頼むために・・

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