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一話「降りてきた悪魔」

一話「降りてきた悪魔」

 その日は仕事帰りに少し寄り道をした。そこで何が起きるか

 など知らずに。ただ、何となく公園に立ち寄り、少し空を見

 ていた。たったそれだけのことだった。だが上から何かが

 降ってきた。それが最初は何なのかが分からなかった。

 やがて、それは起き上がった。

「・・ここ・・どこ?」

 姿は人間に似ている。だが目の前の者が人間でないことは

 すぐに分かった。一般的に人間を襲い、世界を混沌へと叩

 き落すと言われている生物。それが悪魔だ。人間を歴史ご

 と葬ろうとする危険な種族。昔から人間と悪魔は対立して

 いた。人間は大半の者が非力ではあるが、中には退魔師と呼ば

 れ悪魔を退ける力を持った者達もいる。その退魔師達が中心と

 なり悪魔を排除するための戦いが各地で起きている。ベンチから

 立ち上がり、ポケットから一本のナイフを取り出す。ナイフの柄

 の部分には不思議な紋章が刻まれていた。

「お前、悪魔だな?」

「・・退魔師!?」

 空から降りてきた悪魔が驚きの声を上げる。悪魔は力に応じて三

 つの階級に分かれている。低級魔・中級魔・上級魔だ。中級魔や

 上級魔であれば退魔師を見ても驚く事はないが、低級魔であれば

 話が違う。

「悪魔なら、退治するのが俺達の仕事だ」

「私は用があってここに来たんだってば」

「人を襲うのが用事か?」

 ナイフを突き刺す。悪魔はそれを回避する。反撃できるはずなのに

 そうしようとはしていない。あまり力がないのだろうか。退魔師の

 ナイフが悪魔の右腕に刺さる。

「あっ・・」

「・・終わりだ」

 もう一撃決めれば終わる。だが退魔師は動けなかった。自分の足元

 を見る。地面から鎖がのびていた。そしてそれは退魔師の足元にからみつ

 いている。悪魔は最初からただ逃げていたわけではなかったのだ。

 罠にはめるためにがむしゃらに逃げているフリをしていただけなのだ。

「・・ふう・・いきなり退魔師と会っちゃうなんて・・ついてないなぁ」

「・・中級魔・・いや、上級魔だな」

「見ただけで分かるなんて・・かなりの腕みたいね」

 退魔師は舌打ちした。このままでは殺される。どうやっても逃げなけ

 ればいけない。そして次は確実に殺す。悪魔などこの世に居てはいけ

 ない存在なのだ。だが、目の前の悪魔はいつまでたっても退魔師を

 葬ろうとはしなかった。

「・・あなた、名前は?」

「・・悪魔に名乗る名前などない」

「冗談言ってないで、早く答えて」

「原田太助。それが俺の名前だ」

 悪魔は名前を聞いた途端、何故かにこっとする。その微笑が逆に

 怖かった。だが、足にからみついていた鎖が解けていく。一体

 なんのつもりなのだろうか。太助は立ち上がり、悪魔を見る。

「運がいいのか悪いのか・・どっちか分からないわね・・」

「お前・・何のつもりだ?」

「私、アヤ。階級は上級魔ね。これからよろしく」

「は?」

 太助は思わず聞き返す。アヤはため息をついて説明を始める。

 だがそれは太助にとっては最悪のものだった。

「私はこれからあなたの家で生活するの」

 思わず唖然とする太助。アヤはにここにと笑っている。一体誰が

 なんのために。最近、悪魔と人間が友達になるようなケースなら

 何度か見た事もあるし聞いたこともある。だが太助は人間ではあ

 るが、悪魔と完全に対立している退魔師だ。悪魔と退魔師の同居

 など聞いたことが無い。

「私も聞いたこと無いよ。世界で初だね」

「誰の命令だよ、誰の」

「悪魔王とこの世界のトップの人。退魔師と悪魔の共存が可能なのか

 のデータが取りたいってさ」

 アヤはけらけらと笑いながら言う。だが太助にとっては冗談では

 ない。悪魔と同じ家で生活するなどありえない。いっそここで消

 してしまうか。だがアヤは上級魔だ。本気で戦えば間違いなく負

 けるだろう。

「で?まだ家には帰らないの?」

「・・俺はお前を家には入れんぞ」 

「それじゃあ、どうしろって言うのよ」 

 アヤが怒鳴る。だが太助も退くわけにはいかなかった。何があって

 も悪魔を家の中に入れるなどしてはならない。悪魔は太助にとって

 は討つべき存在だ。共存など考えられない。

「帰還命令が出るまで私、向こうには帰れないのよ」

「・・他を当たれ、他を」

「仕方ないじゃない、あなたに決まったんだから」

 太助がどういう方法でと聞いた。するとアヤはくじ引きでと言った。

 何か特別な理由でもあるのかと思えばただ単に適当に決まっただけか。

 だが、人間側のトップ達も加わっている計画なのだ。これに協力しな

 いのはさすがにまずいかもしれない。

「期限とかは決まっているのか?」

「知らないわ。何も聞いてないもの。あなたと私しだいでしょうね」

「なら、すぐに終わるって事もありえるんだな?」

「そうね。その逆にずっとってこともありえるけど」

 アヤの言葉は太助には聞えていなかった。二人しだいでは1日や二日

 で終わることだってありえるのだ。そういう風に仕向ければいい。なら

 話は簡単だ。太助は考え事をしながら歩いていく。アヤもその後ろに

 ついていった。そしてこの時から、退魔師と悪魔という二人の奇妙な

 同居生活が始まった・・

 

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