【第一話】浦戸伝の始まり
浦戸家の伝説
度重なる金融政策の失敗で株価は暴落し、反乱分子が闇を駆け巡る。人々は貧窮し、天下は乱れた。
そんなとき、この大浦市では一人の男が領内を治めていた。
浦戸忠光、23歳である。立候補の選挙制ではなく、浦戸家が治めている都市である。
代々市長の座につくが、実権は執政部長が執り行って市の条例を定めている。
「岡野執政官。今、この都市はどうなっているんだ。治安が悪いと評判になっておる。」忠光が、執政部長を務めている岡野義旬に怒鳴りつける。岡野は60代の名のある政治家であった。彼にとって政治の「せ」の字も分からないような者に怒鳴りつけられることは屈辱的であった。
「そう言われましても、犯罪者は増える一方ですぞ!」
「薬で抑えつけりゃ良いのよ。岡野さん。飲んでください。このタブレットを。」
「分かりました。食べますよ。」岡野はタブレットを食べた。
「これで、暫くは怒らなくなるよ。ロボトミーのように怒りの感情を失うからな……怒らなくなれば、市民の幸せはより多くなる。この大浦市の更なる飛躍、発展の為に力を尽くそうぞ。」この判断によって様々な犯罪者、怒るものが連行され、減刑という名目でタブレットを食わされることになってしまった。そう、これから始まる悪夢への幕開けであったのだ。だが、そのことを誰も知らない。
勿論、浦戸忠光自身もそのタブレットの恐ろしさを知らないのだ。
「さて、私は、これから新薬の開発に取り組むとする。きっと、薬さえあれば民の心も掌握できるだろう。命は何事にも代えがたい。これもそれも、不祥事ばかり起こしとるあんたらに責任がある。庶民の目を逸らすのじゃ。」
「分かりました。忠光様の御名を汚さぬようクリーンな政治を心がけます。」
「頼んだぞ。義旬。何のために外交僧であるお主を雇っているか。しかと心に留めよ。」
「ははっ。」