発見。
「ヴィン!」
そして、いきなり聞こえた鋭いショウさんの声に、はっと同時に玄関を見ていた。二人して顔を合わせてうなずくと、体を離して玄関へ駆けつけた。
「どうした?」
「……ロスから連絡です。お嬢さん連れてヴェボルン公園へ」
「……」
その言葉に、先生の表情が抜け落ちた。
「わかった。支度をする」
言葉少なく言われた言葉に、私は言っていた意味が分からずにショウさんを見ていた。五分もたたずにコートを羽織った先生が小さなコートを手に戻ってきた。
「着とけ」
「え?」
そのまま羽織らせてもらって、手を引かれて外へでて、おうちに横付けにされた馬車に乗り込む。
「お前は?」
「私は、患者を待ちます」
「わかった」
私が乗り込んで彼の隣に座ったのを見て御者がすかさず扉を閉めて馬を走らせる。ガタガタと石畳に車輪が乗り上げて音を立てる。
「どういうこと……?」
「おそらく、お兄さんが見つかったんだろう」
「え?」
無事なの、と身を乗り出して、先生に、落ち着けと肩を押された。
その通りだった。先生がここにいるのに、どうしてそれを知りえるのだろうか。
固い背もたれに背中をつけて、深呼吸をする。振動が体に突き刺さるようだった。
「……、まあ、ショウの反応を見ていれば、おそらく、まだ、存命なのだろう」
でも、命の保証はできない、とつぶやいて、私はぎゅとこぶしを握っていた。
「お兄さんだって、お前を一人にはしたくないだろう。大丈夫だ」
そんな気休めをいう先生のやさしさに浸りながら、私は目を閉じて、馬車が止まるのを待っていた。
そして、止まって、扉が開くのと同時に飛び出していた。
「おい!」
あわてて先生が私の隣に並び走る。
そして、手を引かれて、警官がどこにいるのかを目ざとく見つけた先生の先導の元、ガス灯でともされた中、走っていく。
「ロスから言われてきた」
「こちらになります」
話が行っていたのだろう。
先生がそういうと、おまわりさんは手招きをして、封鎖された公園の中に入れてくれた。
「……っ」
おもわず足を止めていた。むせかえるような血のにおいが、風上から臭う。
「行こう」
紅色の瞳が私を射抜く。メガネなしのその瞳に、私は大きく息を吸ってうなずいた。
はやる足を押しとどめながら、石畳を歩いていくと、今まさに処置を施されていたらしい。
人の輪の中に煌々と明かり。
血だまりの中、人が横たわっているその光景を見て、もう押さえられなかった。
「兄さんっ!」
飛び出すと、先生は手を離してくれた。
人の輪をかき分けて、血みどろになって横たわる兄さんを見て、私は、思わずその手を取って呼びかける。
手首にひどく擦れた痕。
腫れて熱を持っている。
頬は激しく打たれたらしく、青あざになって、血もにじんで、口の端には乾いた血がついていた。
「兄さん。返事してよ、兄さん!」
医療魔術をかけながら治療を施す人たちが顔をしかめる。
兄さんはピクリとも動かない。私をのけようと警察の人たちが輪の中に入るが私だって負けない。




