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俺+UFO=崩壊世界   作者: にゃほにゃほタマ爪
第二章 荒野を駆ける日々
91/105

木津 沿矢の大冒険



「と言う訳でだ、Hopeの面々と共に木津君とフルト君にはクラスクに向かって欲しい」



ですよネー。


あの後、作戦の詳細を決めると、当然話は誰をクラスクに向かわせるべきとの方向にシフトした。


カークスさんは怪我を理由に仲間達に止められ断念。


バスクはクルイストの副長兼戦闘リーダーみたいな立場であり、指揮能力が高いのでテラノの防衛に必要。


クルイストの面々はそんな彼等の指揮下でこそ能力を発揮できる為、これも除外。


チームラウルはコープが『報酬も無いってのに、積極的に関わる気はないぜ』との事で、今回の件にはあまり関わる気は無い様だ。だが街に残って防衛ぐらいはしてくれるらしい。


ともすれば後は俺とラビィ、藤宮さん達しか残らない。


隊商の人達も居たが、フィブリル商会にはこの住民保護案が成功した際に、街の人達に莫大な支援もしてもらう訳だし、流石にそこまでの協力は願えない。


そもそもで言えば、フィブリルさんには今回の件の為にバハラまでの護衛を打ち切って貰ったのだからな。それだけでも十分な協力だ。



「木津君、PDAを差し出してくれるか? 今から交信してデータをそちらに送る」


「データですか?」



言いつつ、俺はPDAを懐から取り出した。


ちなみに無法者に奪われた装備と物資は、当然既に確保している。

ただ、俺が所持していた缶詰やらは少し食われてたが……仕方ないと割り切ろう。

MGL64も無くなってて驚いたが、それはクルイストのメンバーが所持していた。


どうやら昨日の戦闘で使用したらしく、発煙弾も六発使ったらしい。

それなら仕方ないと納得し、俺はボタを払うと伝える彼等の言葉に遠慮し、MGL64だけを返してもらった。


そんな小話はさておいて、カークスさんは自身のPDAの操作を終えると、俺のPDAに彼のPDAを向ける。



「そう、データだ。昨晩の内に私は倉庫からPDAを回収すると昨晩の戦闘の様子や、子供達が金庫に閉じ込められていた際の映像を録画していた。最後には集めた無法者の死体や、此処の住民の何人かの証言、そして最後には私が自身のライセンスを晒しながら、それ等全ての状況に対しての説明もしている」


「なるほど、それを送迎班に見せて信じて貰う訳ですね」


「そうだ、我々が今回遭遇した事件は実に悲惨で強大な凶悪事件だ。言葉で言っても、そう簡単に信じては貰えないだろうからな」



――PP!


PDAから音がしたので視線を向けると、既にデータは送信されていた。

念の為に録画映像を再生すると、カークスさんが言ってた映像が確かに流れ……んん!?


早送りして眺めていると、途中で何か見覚えのある映像が流れたので巻き戻す。

そして見事にその場面を引き当てると、間違いであってくれと願いながら俺は画面に表示された再生ボタンに触れる。



『バケモノの方が、ケダモノよりかは上等だろ?』


『さぁ、王様ごっこはもうお仕舞いだ。クーデターは完了、後は……処刑の時間だ』



しかし、そんな願いもむなしく散った。

画面には、キメ顔で何かをほざいてる馬鹿が映っている。


あ、この馬鹿を見た事があるぞ? だって俺だもん!!



「ちょお!! え!? 此処も記録してたんすか!? 全然気付かなかったですよ!?」


「当然だろう、マックスの最後と君の活躍は報告しなければならない重要な情報だ」



戸惑う俺とは対照的に、カークスさんはどこまでも真剣な表情だ。

俺は再度画面に視線を落とし、バクバクする胸を片手で押さえつける。


ちょっと待てよ。この映像は送迎班どころか、ヤウラ軍にも提供されるんだろ?

そしたらどっかの会議室で偉い人達がこれを見るんだろ? そう考えるだけで動悸がヤバイ事になってきたぞ。



「あの……此処だけを削除できたりとかは……」


「はは、大丈夫だ! 私も聞いててスッキリしたさ。奴の引導には勿体無い程の言葉だった」


「う、うぅぅ……! うぅうううううううう!!」



堪らず、俺は顔を抑えてしゃがみこんだ。

顔から火が出る思いとはまさにこの事、火どころかマグマまで出そうだがな……!!



「……おい、木津」


「あぁ……? コープか? なんだよ?」



俺が恥ずかしさで悶えていると、コープが俺の肩を叩いて話し掛けてくる。

奴は俺を見下ろしながらニヤリと笑い、続けて破滅の呪文を口にした。



「"さぁ、王様ごっこはもうお仕舞いだ"」


「はぁ!? おま……お前なぁ!」



堪らず腕を振り翳して威嚇するが、今度はその背後に居たランドが呟く。



「"ケダモノよりかは上等だろ?"」


「テメェええええええええええええ!! ふざけんなよマジでぇ!!」


『はははははは……!』



気付けば、倉庫に居た面々は此方のやり取りを遠巻きに眺めながら笑い声を上げていた。

俺はもう絶望し、その場に膝を着いて顔を伏せる事しかできない。



「……大丈夫だよ、ソウヤ君!! 私は格好良いと思ったから!!」



そんな藤宮さんの慰めの言葉が、俺のトドメとなった。






▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼






「シズ、アンタは最高のリーダーだよ。だけど、女としてはマジで最低」


「もおおおおおお!! 分かったよぉ!! だからもうそれ止めてぇ!?」



今現在、Hopeの面々は沿矢が操る車両を追随していた。


作戦が決まると、沿矢と彼女達は装備を整え、その日の昼過ぎにクラスクを目指して出発した。


何せ、テラノに残された食料は一週間分しかない。

急がなければ住民達だけではなく、カークス達も危うい。


しかし、どうにか沿矢達がクラスクに辿り着き、事情を説明してもその日の内にヤウラへ向かえる可能性は低い。


何故なら、送迎班が探索地から撤退するには全てのスカベンジャーの帰還を待つ必要があるからだ。


百二十キロ先のクラスクに着く頃には、大分日も落ちているだろう。

其処からスカベンジャーの帰還も待つともなれば、間違いなく夜になる。

送迎班は余程の緊急事態ではないと、夜の内に行動はしない。


即ちそれは重傷者が出た場合や、探索地に無人兵器が群れを成して接近してきた場合等の異常事態を指す。


今回の件も異常事態ではあるが、住民保護案等の重要性を現場の兵士に判断できるかに全てが掛かっているだろう。


この作戦はスピードが命だ。

数百人の難民を都市部まで護衛するともなれば、動員する兵士は最低でも千を超える数が必要になる。


用意する銃弾、食料、医療器具、車両、燃料、人員、指揮官、これ等全てを揃えるには多くの時間が掛かるだろう。


しかも、だ。

今回の住民保護案の決定には軍上層部の承認、並びに市長の承認も必要になってくる。

それ等の決定が決まるまで軍は動けないのだから、掛かる時間は更に延びると予測されるだろう。


そんな訳で昨日激戦を繰り広げたにも関わらず、沿矢達は車両へと飛び乗ったのだ。

そして、そんな道中で藤宮が今朝とった行動を里菜が聞き取り、それに駄目出ししている場面から話は始まる。



「まずね、ソウヤを起こしに行ったのはナイスだと思う。奥手だったアンタが自ら行動したんだからね。けどね、泣いてたソウヤに対して謝ったなんて馬鹿だろ!? 昨晩、コープにあんなに言われたのにさぁ!!」


「うえぇぇぇぇん!! だって、ソウヤ君が泣いてるのを見たら私も胸が切なくなってぇえ……」



グスグスと鼻を鳴らしながらも、藤宮は運転を疎かにしない。

しかし、彼女の涙を見て背後の座席からハンカチを差し出した人物が居た。



「泣かないで、藤宮さん」


「あ……ありがとう、メア」



藤宮がそうお礼を言ってハンカチを受け取ると、一つ頷いてメア・ラダルは座席に座る。


今のメアは男性に極度の嫌悪を抱いており、加えて仲間を全て失った彼女は孤独だった。

唯一、知り合いと呼べるのは自分を救ってくれた藤宮達だけ。

そんな状況では、彼女が今回の件で動向を申し出たのは極自然な流れと言えた。



「しっかし、メア。アンタ、自分の車両を街の防衛に貸して良かったのかい? 仲間との思い出もあったろうに……」


「今持ってきても、搭乗者が私しかいないしね……。それに、今はその思い出が辛いの……」



メアは言うと、ギュッと口を強く結んで黙った。

里菜はそんな彼女の痛ましさに目を瞑り、何事も無かった様に振舞う。



「けれどまぁ、えらい話になったよね。最初は隊商の護衛の筈だったのに、何時の間にか住民の保護やら軍に要請やらと……。正直さ、私には現実味が薄いよ」


『気持ちは分かるが、受け入れろ。ふわふわした気分でいると足元を掬われるぞ!』


「分かってる! 今更、引く気はないさ」



荷台からフェニルの叱咤が飛んでくると、里菜は素直にそう返す。

そのまま暫く走っていると車の時計に設定したアラートが鳴ったので、里菜は無線機の電源を入れた。



『此方は木津です。Hope、聞こえてますか?』


「此方はHope、藤宮です。聞こえてます。此方に異常はありません、其方はどうですか?」


『こっちも問題無しです。ラビィに聞くと、もう目的地までの距離が半分を過ぎたらしいですよ。やっぱ、隊商の護衛とか気にせずに飛ばせば早いですよねぇ!! うへへぃ!!』



無線からは、若干ヤケに陥った沿矢の声が響き渡る。

どうやら彼が倉庫で受けた心のダメージはまだ収まってないらしい。



「あははは……。じゃあ、定時連絡は終わりですね。また十五分後に」


『はい!! いやぁ、十五分後が楽しみだなぁ!! 交信終わりィ!!』


「……あの人って馬鹿なの?」



交信が終わると、メアが呆れ顔でそう呟いた。

対する藤宮はムッとし、それに言い返す。



「馬鹿じゃないよ? だってソウヤ君がクラスクに向かう事も提案したんだし、カークスさんも彼をよく褒めてるんだから!!」


「……ふーん。藤宮さんは……アイツが好きなの?」


「えへぇ!? えっ、えっ!? な、何?! どうしたの急に!?」


『シズ!! 車体を揺らすな!!』



突然のメアの指摘に対し、思わず藤宮がハンドルを揺らすとフェニルの怒号が飛ぶ。

しかし、車内の様子はそれ所ではなかった。



「え? 違うの? だって、さっきからアイツの話ばっかりしてたし……」


「す、好きって言うかぁ……! 私とクミは以前にも彼に助けてもらった事があって……だから…………」



モゴモゴと口篭りつつ、藤宮は頬を赤らめる。

そしてそんな彼女の様子を眺めながら、メアは静かに告げた。



「――だったら、違わないよ。私と同じだもん」


「え?」



ゾクリと、車内の温度が下がった気がした。

藤宮がミラーに視線を向けると、視線が合ったメアは後部座席で妖しく笑い返す。



「私、藤宮さんが好きだよ……? だって、助けてくれたし。それに優しくしてくれたから……ね?」


「…………ぇ? えぇええええええええええええええええええ!?」


『シズ!! ドリフトするなぁ!! 何を考えてる!?』



突然の告白に車内はパニック……否、車外もパニックだ。

藤宮はハンドルの操作を誤り、里菜は顔を青ざめながら自身のローブを抱き締める様にする。

そして荷台で銃座を操るフェニルは突然の暴走に慌てるばかりだ。


しかし、そんな混沌とした状況下でメアは表情を崩し、大声を上げて笑う。



「あっははははははは!! な、ナイスリアクション!! ご、ごめんね!? まさか、こんなに驚くなんて……あはは」


「あ……あはは。そうだよね、冗談だよね?! 全く、驚いたなぁ……」


「ごめんなさい。けど、ありがとう。こんなに笑えたのは本当に久しぶり……! ようやく解放されたんだなって……そう思えた」



メアは最後にそう呟くと、窓から外を眺めて瞼を拭う。

藤宮達はその言葉を聞くと何も言えなくなり、その後暫くは静かな時間が過ぎていった。






▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼






クラスクを目指して数時間、時刻はもう夕方だ。

荒野の果てに沈む太陽は紅く、その反対側の空には星が浮かび始めている。


俺は長時間の運転で、エコノミー症候群になりはしないかと心配だ。

直線距離を真っ直ぐ行くだけでいいとは言えど、何せ景色は殺風景で飽きが来るし、途中で変な方向に曲がってないかと心配にもなるしな。



『沿矢様。前方に崩壊した建物を幾つか発見、あの付近が恐らくクラスクでしょう』


「お! 着いたか!? いや、良かった。無事に成し遂げたな!」



カークスさんに聞いたがクラスクは探索地の一つで、上級から中級スカベンジャーが主に向かう廃都市の一つらしい。


ヤウラの北東にはドノールと言う、中級が向かう都市もある。

が、そこより今向かっているクラスクの方が探索難易度が高いそうだ。


何故ならばクラスクは元は工業地帯だったらしく、多くのプラント郡が存在していたからだ。

プラントは人類が生きる上で必須の施設であり、ヤウラでもまだ多くが稼動している。

ともすれば、其処の警備など厳重に決まってるとの流れだ。


クラスクにあったプラントの殆どが無人兵器によって破壊されたらしい。

しかし、クラスクの驚くべき所は地下にもプラント施設が展開している所だ。


その広さは都市部全体と同等か、それ以上あるとも囁かれており、実に広大で深く、未だにその全てを探索できた者は居ないと言う。


まぁ、でなければ探索地として残り続けてる訳もないがな。


そして驚くべきなのは、地下施設の電源が未だに生きている事だ。

其処を彷徨うガードを倒しても、また次に来た時は"補充されている"らしい。

つまり、地下の奥にはまだ稼動しているプラントが存在しているのだ。


プラントがどうやって資材を確保し、ガードを製造しているのか? その謎は解き明かされていない。 一説にはクラスクは未だに機械の手で施設の拡張を続けており、その発掘過程で得た鉱石を加工しているとも言われている。


実にロマン溢れる話で、心が躍るぜ!!!

まるでトル○コの大冒険に出てくる迷宮みたいだ。

何時か潜る時があればパンだけを手にして潜ろうか、俺は素潜り派だからね。


と、そんな馬鹿な事を考えていると何時の間にかクラスク外周付近だ。

しかし、スカベンジャー達のベースキャンプは見当たらない。

ヤウラはクラスクの北西にあるから、恐らく北西から来た彼等はそのままキャンプを其処に立てる筈だ。


俺はそう目安を付け、外周に車を走らせる。



「お、あそこか」



暫く走ると、人工的な灯りが見えてくる。

其処には送迎トラック、幾つか張られたテント、滞在する幾人かが見える。

間違いない、あそこがベースキャンプだ。


近くまで来ると、俺はスピードを落として徐行する。

何故なら、表に出ていた軍人達が銃を向けているからだ。

俺は大人しく片手を上げながら彼等に近寄り、車を停める。



『ハンターか? 何処の組合所だ? 大人しくして、ライセンスを見せろ』



窓の近くに兵士が一人来ると、威圧的な態度でそう伝えてくる。

俺は大人しくそれに従い、仕事熱心な彼にライセンスを提示して反応を伺う。

ミラーを見れば、藤宮さん達も同じ事をされていた。



『……木津 沿矢? あれ? なぁ、この名前何処かで聞いたか?』


『木津……? どれどれ、クラスは……G-。あ!! これを見てハッキリ思い出したぞ!! コイツはあの問題児じゃねぇか!!』



何処見て思い出しとんねーん!!

クソ、クラスG-ってよっぽどレアなんだろうか。


俺は憮然としつつ、ゆっくりと頭を下げて挨拶する。



「どうも、問題児です。あの、此処の責任者は居ますか?」


「……軍曹に何の用だ? 探索の許可なら、車両持ちには必要ないぞ?」


「大事な話があるんです。どうか、教えてくれませんか?」


「ふむ? まぁ……いいか。あのテントの中で待機してる、付いて来い」



面倒そうな態度ではあったが、何とかお目通りが叶いそうだ。

俺が車両から降りると、ラビィも続いて荷台から飛び降りる。

背後を見ると藤宮さん達も下車し、此方に頷いて見せた。


ベースキャンプ地に足を踏み入れると、其処に居た軍人やスカベンジャーの視線が突き刺さる。



『左腕の鉄腕に銀髪の乙女……か。間違いねぇ、アイツが噂の小僧だ』


『クースにある廃病院を攻略したって聞いてはいたが……。その次がクラスクだと? 無謀なガキだな、あれは早死にするタイプだな』


『まぁ、壁にぶつかるのは早い方がいいよ。でないと、大怪我するからね』



等々、俺が此処へ攻略に来たと勘違いした会話が繰り広げられている。

だが、別に俺はどうとも思わない。

今朝、倉庫で受けた俺の精神的なダメージはもっと酷かったからね。



「失礼します、軍曹! このハンター達が、貴方に話があるようなのですが……」



テントの内部に入ると、折り畳み式のテーブルの上に置かれた地図に視線を向ける男が居た。


軍服の腕を捲り、鍛えられた浅黒い腕が強調されている。

ゆっくり此方に向けられた瞳には、露骨に『面倒が来た』と言わんばかりの鈍い輝きが浮かんでいた。歳は四十前半の中年男性と言った所か、黒い頭部には所々に白髪が混じり始めている。



「……お前、見た顔だな? 確か、噂の問題児だ。よりによって俺の所に現れるとはな……」


「木津 沿矢です。確かに俺は色々と問題を起こしてます。が、最初に俺が問題に巻き込まれたのは、あんた達の佐官の所為なんですがねぇ?」



いい加減、イラついたのでそう棘を飛ばす。

それを受けて軍曹は瞼を見開くと、クッと笑みを漏らした。



「確かにな、軍も問題だらけさ。あの佐官の件にしたって、公開裁判すら開かれなかったしな」


「……本題に入ります。貴方達が言う様に、俺は新たな問題を運んできました。が、これは今までとは大きく事情が違います。このPDAの映像を最後まで見てください。そうすれば話が早い」



俺は懐からPDAを取り出し、それを軍曹に差し出した。

彼はそれを受け取らなかったが、顎を動かしてテーブルに置く様に指示する。

それに従ってPDAを設置して録画された映像を選び、再生ボタンを押して後ろに下がった。



『この映像は、我々クルイスト。並びに複数のハンターチームと合同で依頼を遂行している最中にテラノで起きた出来事です。どうか、最後までご視聴を願います』



そして映し出される戦闘の様子、テラノ住民の訴え、マックスの最後、子供達救出の瞬間、そして最後にカークスさんの説明。


軍曹は最後までそれを見届けると、大きな溜め息を零す。



「お前……これが問題だと? 問題どころの話じゃねぇだろ! 参ったな、面倒だぜ……!」


「面倒って……人命が掛かってるんですよ!! それに、この子も事件の被害者なんです。軽々しい発言は止めて下さい!!」



軍曹の言葉に藤宮さんがそう反発し、メアの肩に手を置きながらそう怒りを露にする。

メアは軍曹をただ静かに眺め、何も言わない。

しかし、事件の被害者と聞くと流石の彼も僅かに動揺し、申し訳無さそうに瞼を伏せた。



「すまんな、これは俺の口癖だ。しかし、勘弁してくれ。まさかこんな話を持ち込んでくるとは誰も思いはせんだろう……?」



ガシガシと後頭部を掻き毟り、軍曹は唸った。

俺は渋る彼を説得しようと、身振り手振りを交えながら説得を開始する。



「ですが、カークスさんの説明を聞いたでしょう? これはヤウラにも利がある行為です。数百人の難民の受け入れは確かに大変でしょうが、もし成功すれば外居住区の人達が抱く軍部への不信感を払拭できる筈です。貴方達も気づいてるでしょう? 新たな市長が掲げた融和政策の数々は余り効果を出していないと。積極的な炊き出し、軍入隊時のボタ増幅制度、後なにか他にもやってるかもですが、そのどれもが決定打に欠けている。加えて……教会の一件でまた貴方達軍部は恥部を晒す事になった。その事で、市長からお叱りの言葉は軍は受けなかったんですか?」



最後にわざと挑発するかの様に鼻で笑う。

それを受けて軍曹は舌打ちを返すも、それ以上は特に反応せずに続ける。



「宮本市長は確かに外居住区の住民の意識改革に夢中だ、それは間違いない。だがな、よく考えろ。突如外からやってきた難民だけを都市が露骨に優遇してみろ、元居た住民達はどう思う? それこそ本末転倒だろうが」



確かに彼の言う懸念は尤もだ。

だが、それは既に解決できる問題である。



「都市からの優遇は必要ありません。俺達がヤウラ軍にして欲しい事はテラノからの撤退支援と、彼等が住む土地か住居の提供です。其処の維持費や家賃の支払い、そして自立した生活行動ができるまでの支援は全て、フィブリル商会が行います」



すると軍曹は細めていた瞼を大きく開き、身を乗り出すようにしながら吼える。



「フィブリル商会だと!? "北方の富"か、確かにプラントを有する組織とは聞いてるが……可能なのか?」


「可能かどうかは俺は知りません。ですが、ミル・T・フィブリル嬢は確かに支援を約束した。それだけは確かです。即ち、ヤウラは数百人と言う住人が増えると同時に、それに伴う収益が安定的に、そして継続的に得られます。自立した市民はいずれ様々な職に就き、ヤウラ発展の手助けにもなるでしょう。これが証拠の映像です」



言って、俺はPDAを操作してまた違う映像を見せる。


そこにはフィブリルさんが画面に向かって支援の約束を伝える姿が映っていた。

念の為に隊商の人達に武器を持たせて背景に立たせている。

即ち、この映像は彼女を脅して言わせている訳ではないとの証明をする為だ。

まるで何処かの武装組織が聖戦を表明している感じだが、まぁそれは無視しよう。


これでも難癖付けて来る奴は居るかもだが、これ位しかできる事はない。


軍曹はそれに目を通しながら、顎を撫でる。



「はぁ、なるほどね。それなりのプランは練ってきた訳だな……面白い」



軍曹はそこでようやく、このプランが実現可能である事を信じ始めた様だ。

そのまま暫くの時間が過ぎたが、それは無駄にはならなかった。


軍曹は大きく息を吐き、天を仰ぐ様にしながら了承の意を口にする。



「いいだろう……。言うだけタダだしな。それに俺を介してその情報が伝わったともなれば、その功績で壁への配属も夢じゃねぇ」


「良かった……! じゃあ、直ぐに出発できますか?! スカベンジャーはもう全員戻ってます?」


「スカベンジャーが戻れば、報告が届く。そしてそれはまだだ。此処は地下工場都市『クラスク』だぞ? 其処の探索をする奴等の中には、その地下で寝泊りしながら攻略を試みてる連中も多いんだ」


「マジっすか……!? でも、急がないとヤバイんですよ! 映像でも言ってた様に、テラノに残された食料は一週間分しかないんです!」



此処までやったのに、戻った時には餓死してました♪ なんて笑い話にもなんないぞ。



「分かってるよ。とりあえず、誰が戻ってないかだけ確認する。此処に潜るスカベンジャーの大半とは顔見知りだ。だから俺は奴等が何処を中心に探索してるかも知ってる。いざとなれば、それを教えるから自分で呼び戻して来い」



軍曹は極軽い口調でそう告げたが、俺は思わず驚きで聞き返してしまう。



「地下工場への潜入をしろと?! 俺は此処のガードや仕掛けられてるトラップが何なのかすら知らないんですよ!?」



初めて来た場所へ無知な状態で挑むなど、自殺行為もいい所だ。

幾らラビィが居るとはいえど、全てを彼女任せにするのも危険である。

いざと言う緊急事態にラビィでも対処できない事態があれば、頼りすぎてた反動であっさり死ぬかもしれないからな。


しかし、軍曹は俺の訴えを退け、あっけらかんと言う。



「スカベンジャーを置いて都市へ戻れば、俺は重大な責務に問われる。それに残されたスカベンジャーはどうなる? まさか無断で戻る訳にもいかんだろ」



確かにそうだ。

俺自身、クースに置いていかれた経験があるからよく分かる。

あの時の絶望具合は中々だった、二度と味わいたくない。



「マジか……行くしかないのかぁ」



俺の見通しが甘かった。

ただ此処で送迎班と合流できればいいと考えてたが、正に浅はかだった。


そして、此処の探索期間は一週間もある。

まだ二日しか時間が経ってないのだから、此処を訪れたスカベンジャーが攻略を終え、今日戻ってくる可能性は限りなく低い。


どう考えても逃げ道はなく、覚悟を決めるしかない様だ。

とりあえず、俺はゆっくりと顔を上げて軍曹に尋ねる。



「此処で……パンって売ってます?」


「……はぁ?」




と、クラスク突入編に入った所で連続更新は一旦止まります。

今後の投下については、活動報告でお知らせします。

此処までこの話を読んで頂き、ありがとうございました!!

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