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俺+UFO=崩壊世界   作者: にゃほにゃほタマ爪
第二章 荒野を駆ける日々
86/105

一番の致命傷



ラビィと合流し、俺はようやく一息を吐けた。

正直言うと、彼女と会えた瞬間には安堵の余り気が抜けて腰を下ろしてしまうかと思ったよ。


勿論、まだそうする訳にはいかない。

藤宮さん達と合流し、マックスとケリを着けなければならないからだ。


ラビィの先導を頼りに俺達はフロアを抜けて階段を駆け上がる。

そして六階の踊り場付近で俺は誰かの足音を感知して思わず足を止めてしまったが、ラビィはそのまま迷いなく七階を目指して先を行く。


つまり、それが意味する事は……!



『フルトさん!! 良かった、無事だったんですね!!』


『アンタなら大丈夫と思ってたよ! しかし、あのHAを相手に生き残るなんて……って、何で下から? 十一階に居たんじゃ?』



七階のフロアから藤宮さんと里菜さんの声が聞こえてきた。

俺とコープ達は顔を見合わせ、思わず拳を突き出して歓喜のサインを交し合う。



「やったな、オイ! 目標達成だ」


「いやぁ……本当によかった。あぁ、ったく……」


「お、おい。大丈夫か?」



堪らず、階段に腰掛けて俺は喜びに浸る。

そこでようやく俺は自身の体が発する疲労と眠気に気付き、愕然とした。


そもそも今日は朝から護衛で無人兵器との戦闘を何度も繰り広げ、ようやく休めると思った直後にコレだったからな。


そりゃ疲れもするわと息を零し、何とか立ち上がって気力を振り絞る。



「SBが切れたか? 疲れたならもう休め。後は俺達がやる」


「いや、まだいける。SBは……どうだろうな。試してみるか」



俺は敵から奪っていたハンドガン用の黄金色の弾を幾つか取り出し、無造作に宙に放り投げた。その際に集中を高めるとその落下速度が遅くなり、俺は素早く右手だけ動かして全てキャッチして見せる。



「どうやらまだ切れてないらしい。まだ戦えるよ」


「あんま無理すんじゃねぇぞ。野郎を背負う趣味はねぇからな」


「いや、なんでお前が背負う前提なんだよ。倒れたら何の迷いも無くラビィに背負ってもらうわ」


「へっ、そうかよ。熱々で羨ましいぜ」



先程から妙に優しいコープに違和感を覚えつつも、俺達は階段を上がって七階に辿り着いた。

扉を開けるとその先の開けたフロアに藤宮さん達が居て、思わず歓喜の声を上げて再会の喜びを表す。



「藤宮さん、里菜さん、フェニル先輩、フィブリルさん! それと……見知らぬ少女!! 皆さんよく無事で! ……って、あの……どうしました?」



そのまま駆け寄ろうとして、藤宮さん達は一瞬だけ肩を震わせた。

SBが無くとも感知できる一瞬のその震え、そしてソレの原因が俺自身にある事は明白だった。


そしてフィブリルさんに至っては俺を見て露骨に怯えてるし、その背後にいる見知らぬ少女は目線すら合わせようとしない。


その原因を探ろうと自身の体を見下ろして――愕然とする。

着ていた白のシャツは真紅で染め上げられており、青を強調としていた筈のジーンズすら赤に塗れていた。


つんと鼻を掠める臭いは鉄臭いなんてレベルではなく、鉄の棒を鼻に詰めてると言っても過言ではない。何故、今までそれを気にしなかったのかと自身を猛烈に罵倒したい程である。



「あ、いや……すみません。少しホラー過ぎましたかね? 勿論、俺は幽霊なんかじゃありませんよ? これはまぁ……全部返り血でして…………はは」



何とか咄嗟に冗談を口にするも、それで笑いが起きる筈もない。

どうしたもんかと思案していると、背後に居たコープが怒気を孕んだ声を漏らす。



「おい、コイツはなぁ……HAやら無法者やらを相手に必死に戦ってこうなったんだ。何もキスしろとまでは言わねぇが、ソレ相応の態度を向けてくれてもいいんじゃねぇのか?」


「コープ……」



不覚にも、本当に不覚にもそれを聞いて俺は涙腺が刺激された。

今ならコイツに抱かれてもいいとさえ思ったが、二秒後にはやっぱねぇなと思い直した。


そんなアホな事を考えていると、藤宮さんが素早く頭を下げて謝罪の言葉を口にする。



「ご、ごめんなさい! そうだよね、私達を助けに来てくれたんだよね……。ごめんなさい、沿矢君。ありがとうございます」


「はは……いや、ごめん。あまりにも衝撃的で言葉がでなくてさ。……本当にごめんね、ありがと」


「ソウヤ、お礼が遅れてすまない……ありがとう。無論、ラウルの面々にも感謝したい。ありがとう」



上から順に藤宮さん、里菜さん、最後にフェニル先輩のお言葉である。


そこでようやくまともにコミュニケーションが取れる状態となった。

俺は一先ず彼女達の反応に目を瞑り、見知らぬ少女に視線を向けながら尋ねる。



「ところで……あの子は一体?」


「あの子の名前はメア・ラダルって言って……此処に捕らえられていたバハラに所属するハンターです。此処から脱出する過程で、彼女を救い出しました」


「他のハンター……? あれ、けど……俺達が捕らえられて居た所には誰も……」



居なかったよな?

そうコープ達に確認を取ろうとして、失敗する。

何故ならメアと呼ばれていた少女が小走りで近寄ってくると、俺の胸元を掴む勢いで問い詰めてきたからだ。



「本当に!? 本当に誰も居なかったっていうの!? ダランも、ケンも! 他の皆も!!」


「お、俺達が捕らえられていた場所は元は警察署っぽい廃墟だ。その人達は少なくともそこには居なかったと思うけど……」



安全確保の為、あの建物は完全に見回った筈だが、他の捕虜など見掛けなかった。

メアは俺の言葉を聞くと腰をすとんと床に落とし、泣き笑いを浮かべて呟く。



「は、はは……やっぱりね。生きてるなんて嘘だった。けど、信じたかった……。信じてたのに……ッ!」


「メア……」



藤宮さんはそっとメアに近寄ると、横から抱き締めて頭を撫でる。

メアはそれを受けて顔をクシャクシャにしながら嗚咽を零す。


暫くそっとしておきたくもあったが、俺に打ったSBの効果が切れるまでに勝負を終えたかった。

俺はラビィに視線を向けると、口を開く。



「ラビィ、彼女達を頼む。俺とコープ達で最上階に向かう。終わらせてくるよ」



瞬間、ラビィは瞬時に表情を驚きの色に染め上げ、俺の行動に異を唱え始める。



「沿矢様……! 戦力の分散など愚の骨頂です! それでもと言うなら、チームラウルを彼女達の護衛に残してラビィと共に参りましょう!!」


「え、ぁ……そ、そうか?」



ラビィが俺の行動に異を唱えるなど、これまであまり無かった。

唱えたとしてもこれ程に感情的ではなかった筈だ。

この短い期間でまたもや彼女は成長したのか?


そう考察していると、藤宮さんも慌てた様子で声を上げる。



「ま、待って下さい! 私達だって戦えます! お供しますよ!」



藤宮さんはありがたくもそう主張するが、俺はそれをやんわりと拒否した。



「藤宮さん、俺達が良くてもフィブリルさんはそうじゃない。誰かが彼女を安全な所まで連れて行く必要があるんです」


「あ……」



見れば、フィブリルさんは床に座り込んで顔を青く染め上げていた。

度重なる戦闘と死の恐怖、そのどれもが彼女の負担になったに違いない。

俺達はあくまで組合に所属する者だ、そんな俺達が依頼主を大事に扱うのは当然の事だろう。



「コープ、藤宮さん達と共にカークスさんの所まで行けるか?」


「あぁ? おいおい、最後のお楽しみに連れてかないつもりかよ?!」


「お姫様を救ったヒーローになりたくないって? 贅沢な奴だな」



俺はコープに向き直り、苦笑しながら肩を叩く。

本当の事を言えば、俺の戦う姿を見て彼女達に再び怯えられるのが怖かった。

だから尤もらしい理屈を捏ねて、コープ達にそれを押し付けたかっただけだ。



「……これで牢から出して貰った借りは無しだぞ」


「ホテルの一階でHAの攻撃から庇ってやった借りもあるだろうが? お礼を期待してる。できればボタがいい、間違ってもキスなんぞするなよ」


「はっ、抜かせ。あんなの余裕で回避できたっての」



言い合いながら、俺達は自然とまた拳をぶつけ合った。

拳に付く乾いた血が剥がれ落ち、コープの手に付く。

それを受けて彼は一つ頷いた。



「あいつ等は任せろ。だからよぉ、気兼ねなくあの糞共をぶっ殺して来い!!」


「任された。カークスさんに朗報を伝えてくれ」



準備を終え、俺はラビィに一つ頷いてみせる。



「行こう、ラビィ。先導を頼む」


「了解しました、沿矢様」



これが最後だ、ラビィと一緒なら負ける気がしない。

俺は呼吸を整え、この戦いを終わらせる一歩目を踏み出した。






▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼







「はぁ……」



藤宮 静の心中が後悔で埋め尽くされていた。

否、正確には里菜とフェニルも同じ後悔に苛まれていた。


その後悔とは無論、先程沿矢に対して取った行動だ。

バケツに満杯となった血を何度も浴びせられたかの様な異様な姿、そんな沿矢を見て思わず彼女達は言葉に詰まってしまった。


その反応を見た沿矢が見せた呆然とした顔と、何とか場を取り持とうとした痛々しさが忘れられない。


絶対に彼を傷付けてしまった筈だ。

そう確信すると藤宮達は今すぐ泣き出したい衝動に駆られてしまう。



「こっから階段が崩れてる。だから四階フロアを突っ切って反対側から降りるぞ」



コープが仏頂面でそう告げ、先導する。

移動する面々の空気は藤宮達の陰とした表情とコープの不機嫌な態度が合わさり、なんとも暗い様子を浮かばせていた。


四階を横切る際に目にした多数の欠損した死体、所々壁に開いた穴、そのどれもが激戦の様子を漂わせている。


そしてそれを繰り広げたのが沿矢である事が場の様子から伺え、藤宮達は更に罪悪感に苛まれた。



「……チッ!! あぁ、ったくよぉ! 何なんだよ、テメェ等は!? 折角助かったってのによぉ!? 態々と助けに来た俺達やアイツを馬鹿にしてんのか!?」



遂に藤宮達の陰とした態度にコープが切れた。

そんな彼の突然の暴走に藤宮達は戸惑うしかない。



「ば、馬鹿になんて……そんな。本当に、感謝してます」


「ッ~~~! その態度が馬鹿にしてるってんだろうが!! 喜べよ!! 大変だったね、とか言い合いながら慰め合えばいいじゃねぇか!! なのにどいつもこいつもハァハァと溜め息ばかり零しやがって……! 陰気くせぇんだよ!!」


「う、ウルサイね! 私達だってそうしたいさ! けど……木津にあんな態度を見せちまってさ……そんな気にもなれやしないよ」



里菜がコープにそう言い返し、悲痛な表情を浮かべて顔を下に向ける。

しかし、対するコープは馬鹿らしいと鼻で笑い飛ばす。



「はっ、アイツを怖がって傷付けたってか? それが分かってるなら、素直に喜んで見せれば良かったじゃねぇか! なのにお前等ときたら謝罪の言葉なんか口にしやがって……。そんなお前等の態度の所為でアイツが更に気を使ったんだろうが!!」



コープの言葉に藤宮達はハッとする。

確かに、謝罪なんかしてしまったら自分達の態度に非があったと認めたも同然だ。


謝罪の言葉なんか口にせず、喜びと感謝の言葉を向けるだけで良かったのに……。



「あぁ、もういい! テメェ等と話してると苛々する!! クソ、やっぱ木津と一緒に行ってれば良かったぜ……!」



コープは本気でそう後悔し、悪態を吐く。

しかし、遂に堪らずと言った具合でメアがそんなコープに噛み付いた。



「別に……仕方ないじゃん。あの人、"普通"じゃないよ」


「あ? おい、糞ガキ……テメェ今なんっつた?」



コープは怒気どころか、殺意すら覗かせる勢いで言葉を吐き出した。

メアは一瞬言葉に詰まるが、怯まずに言い返す。



「普通じゃないって言ったんだよ!! だって……見てよ? どの死体も"マトモ"な死に方してないじゃん!!」



腕や足の欠損は当たり前、胴体に大きく穴を開けた死体もあれば、頭部を失った死体もある。


中には壁にめり込む様にしながら絶命している者や、恐怖のあまり自分で銃を咥えて引き金を引いて絶命している死体すらあった。


それ等を一瞥し、メアは震える肩を抱きしめる様にしながら言い放つ。



「あの人がやったんでしょ?! おかしいよ! こんな殺し方したってのに、あんな風に笑って……正直、気持ち悪い」


「――おい、こっちを向け」


「こ、コープさん! やめて下さい!!」



メアがコープの声に釣られて視線を向けると、その鼻先に銃口が向けられていた。

無論、それを向けているのはコープであり、彼はメアを睨みながら問いただす。



「じゃあ、聞くが……"マトモな殺し方"って何だ? あ? 銃で殺すなら良くて、素手なら駄目なのか? ナイフなら? 毒なら? 首を絞めたら? それならマトモなのか?」


「おい、止さないか! 子供の言う事だぞ!?」



その言葉を聞いた瞬間、コープは遂に怒りを発散させた。



「"アイツ"だってガキだろうが!! なのによ……他人を気遣って無理しやがって…………。俺は、そんなアイツを見てらんなくてよぉ」



フェニルの制止も無視し、コープは泣きそうな表情を浮かべた。

アイツと言う言葉が、沿矢を指している事に気付いて面々は言葉を詰まらせる。

片手だけで乱暴に瞼を拭うと、コープは構わずに銃をメアに向けたまま告げた。



「いいか、糞ガキ。一度しか言わねぇぞ。殺し方なんざ問題じゃねぇ。問題は"何故殺したか"だ。お前等を救う為にアイツは文字通り命を賭した。それを侮辱する奴は許さねぇ、誰だろうと絶対にだ! だから次にふざけた事をぬかせば俺はテメェを殺す――分かったか?」



そう最後に警告し、コープは銃を揺らす。

メアはそれを受けて青ざめながら一つ頷き、沈黙を貫いた。

それを見てようやく表情を緩ませ、コープはおどけた態度を見せる。



「へっ、どうだ? 俺に比べればアイツはまだ"マトモ"だろ? ったく、下らねぇ……。何が普通だっての」



そう吐き捨て、コープはさっさとその場から去っていく。


完全に意気消沈した藤宮達であったが、ランドとマイクがそれをフォローしようと気まずそうに口を開く。



「悪く思わないでくれよ? 俺達は本当に苦労してここまで来たんだ」


「あぁ、木津が居なければ絶対に辿り着けなかった。そんな奴を侮辱されて、アイツはちょっと切れただけなんだ。正直、俺達も木津には仲間意識を抱いてるしよ」


「……そう、ですよね。なのに私ったら……駄目駄目だなぁ」



ポツリと、涙と後悔の言葉を零しながら藤宮は声を詰まらせた。


クースで助けられ、ステルス型の脅威からも助けられ、今またこうして助けられた。

だと言うのに、その恩に報いるどころか彼を傷付けてしまった。


その事実にどうしようもない無力感を抱き、藤宮達は暫くその場を動く事ができなかった。




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