コープお兄さんによる、SB講座
「……スゲェ」
フィル・コープは思わず戦う事を忘れ、そう呟いた。
曲がり角から向けた視線の先、通路に築かれているのは机やロッカーで築かれた即席の塹壕。
通常であれば、突破するのに苦戦は必死のソレ。
しかし、今その場所は沿矢一人の手によって蹂躙されていた。
『やめ、やめろぉ!! 来るなぁ!!』
『下がれッ! 下がれ下がれ!! もう此処は持たねぇ!!』
放たれる銃弾を回避し、壁を打ち破って攻撃を凌ぎ、別の場所から現れて塹壕を打ち崩す。
言葉にすると簡単だが、実際にそれをできる人物など殆ど居ない。
ゾルダートを倒した沿矢とコープが二階で合流した後は、正に沿矢の独壇場であった。
敵の殆どは沿矢の手によって始末され、コープ達はただ時折に援護するだけで十分だった。
「SBってのはあんなに凄いのか? 俺も買おうかな……」
「アホ、SBは使い捨てタイプのナノマシンだ。しかも、一つの値は最低でも五十万もするんだぞ」
「使い捨てで五十万!? マジかよ」
「あぁ、SBは多種多様あるが、どれも強力な効果を発揮する。ただ、"強力過ぎるのが"デメリットでな。使用者の限界を感じ取るとナノマシンが自壊して使用者を守るんだ。まぁ、殆どの人間が同じタイミングで限界を迎える訳だから、一般的には効果時間なんて言われちまってる。が、実際にはナノマシンの使用時間は個人差がある」
コープが仲間二人にそう説明するも、ランドは眉を寄せて疑問の声を上げた。
「自壊? なんでそうなんだよ。待機状態にはできないのか?」
「ナノマシンは文字通り極小の機械だ。だから『使用者の体調を細かく確認しつつ、必要に応じて起動し、行動せよ』なんて複雑な命令を実行できるプログラムを組む事も、それを可能にするAIも搭載できねぇんだ。体内に留まり続けて下手に起動してしまえば、使用者の体を酷使しすぎて殺しちまう危険性もある。だから使用者が限界になると自壊するなんて言う、融通の利かない単純行動しか組み込めない」
「ふぅん、そう上手い話はないもんなんだな……。いや、待てよ? 使用者の限界を感じて自壊するなら、連続した使用も問題ないんじゃねぇか? だって死ぬ前に自壊してくれるんだろ?」
「んー……なんて説明すればいいのか」
コープはランドの疑念に対し、ガシガシと後頭部を掻きながら考えを纏める。
「例えば……お前が空のグラスに水を注げと言われるだろ? お前はどうする?」
「そのふざけた態度を見せた相手をぶちのめす」
キリっとした効果音が聞こえてきそうな見事なキメ顔を浮かべるランド。
対するコープは頭痛を我慢するかの様に頭を抑えながら話を続ける。
「はぁ……設定を変えよう。お前はウェイターをしてて、空のグラスに水を注げと言われたんだ。当然、注ぐだろ?」
「まぁ、仕事だったらそうするけどよ……」
まるで幼子を相手にしているようだと、コープは内心で苦虫を噛み締めながら話を続ける。
「そう、不器用なお前は空のコップを満杯まで水で埋めた。そしたら客は続けて言う、水を注げとな。どうする?」
「どうするって……そうするしかねぇんじゃねぇのか? 馬鹿みてぇだけど」
「つまりはそういう事だ。客がSB使用者でウェイターがSBナノマシン。SBナノマシンに再使用時間が設けられているのは、SBナノマシンには使用者の限界を超えて暴走しちまう危険性が高いからさ」
「おいおい、自壊機能はどうしたよ?!」
ランドが大声でそう異議を唱える。
しかし、コープは落ち着けと言いたげに片手を翳しながら話を続けた。
「いいから聞け!! つまり自壊機能が発動する条件ってのは、使用者の体調が急激に変化したらと言う単純命令でしかないんだ。つまり一度目のSBを使用した直後は、通常の健康状態がそのSBの自壊判断機能の目安になるが、連続して二回目に投与されたSBナノマシンは既に変化をしている健康状態を目安にしちまうんだ。そこからの急激な変化ともなれば……分かるだろ? 体はもうボロボロになってるって話だ」
「んだそれ……馬鹿みてぇだな。ナノマシンってもっと凄い物だと思ってたぜ」
「誤解すんな、SBは十分すげぇよ。それは今の木津の動きを見れば分かるだろ? 前世界が機械に頼りっぱなしでなけりゃ、SB関連の技術ももう少し進歩していただろうが……」
機械での代理戦争が盛んとなっていた前世界。
当然ながら人間兵士の重要度は薄くなり、ナノマシン関連の技術は治療用を除いて殆どが廃れていった。 もしそうでなければ、もっとナノマシン技術は高度に発展していたであろう。
「話を纏めるとSBは起死回生の一手になり得る秘密兵器だ。ただ、効果時間には先程も言った通り限りがあるし、連続した使用もできねぇ……筈なんだが」
沿矢が敵から奪ったSBを使用し、相手に勝利したとは合流した時にコープ達は聞いてはいた。
しかし、沿矢がHA装着者と戦闘した時間と、今現在の交戦時間を合わせると余裕で三十分は過ぎている。 SBの詳しい効果時間と使用者の限界時間までは知らないコープではあったが、どうも腑に落ちずにいた。
『よし、もういいぞ。終わった』
そうこうしている内に一人でエレベータフロアの敵を殲滅した沿矢は、コープに向かって合図を送る。
それを受けて近づいていくコープ。
彼は返り血に塗れながら荒い息を吐く沿矢に尻込みしつつ、話し掛ける。
「お……おい、木津。お前大丈夫か? そろそろSBが切れてもいい頃だと俺は睨んでるんだが……」
「ん……? いや、まぁ……疲れてはいるけど、感覚はまだ冴え渡ってる。さっきなんて、見てから銃弾を交わしたよ」
そう言って小さく笑う沿矢ではあったが、返り血に濡れた姿では対峙する者に威圧感を与えるだけでしかない。
「見てからって……間に合うのかよ、それ」
「実際には、銃口が光るのを見てって感じかな? 集中すれば相手の動きが遅く見えるから、普通に間に合うんだ」
「……体感時間の増加はまず間違いなく中枢神経を利用してる筈だ。SBってのは過度の使用で死人も出てる。お前、マジで大丈夫か?」
「そうなのか? まぁ……これが終わったら死ぬかもな。けど、死ぬとしてもラビィ達を助けてからだ。だから、早く行こう」
何処か他人事の様に答え、沿矢は先を急ぐ。
コープは一先ず疑問には目を瞑り、チームの二人を従えてその後を追う。
四階の制圧を追え、五階へと歩を進める一同。
そして、五階のフロアに足を踏み入れて沿矢達は驚愕する。
「凄いな……全員倒されてやがる」
しかも、驚くべきなのはその殆どが眉間をナイフや銃弾で打ち抜かれており、即死させた様子が伝わってくる事だ。
沿矢は表情を輝かせ、咄嗟に歓喜の声を上げた。
「間違いない、ラビィだ!! おい、ラビィ!! 居るか!? 俺だ、沿矢だ!!」
「ばかっ! 敵がまだ居るかも知れないだろ!?」
「ぅえ? あ……そうだな、すまん」
コープから注意を受け、沿矢は素直に謝罪して興奮を鎮める。
しかし、その興奮は直に燃え上がる事となった。
「沿矢様……! 沿矢様」
彼女にしては珍しくも大きく足音を立てながら、ラビィが現れた。
彼女は沿矢を見てまず驚愕した様子で目を見開いたが、次にほっとした笑みを浮かべる。
「良かった。まさか怪我をしているのかと……。血に濡れていては衛生状態に良くないですよ。病気に掛かる恐れがあります」
そのまま静かな足取りで近付くと、ラビィは沿矢の顔に付いた血を拭こうと手を伸ばして触れる。それを受けて硬直していた沿矢がようやく動き始め、自身の頬に触れるラビィの手に自身の手をそっと添えた。
「良かった……。お前が無事で、本当に安心した」
「――はい。ラビィも沿矢様に会えて嬉しいです」
「本当に、よく頑張ってくれた……。いや、待て……藤宮さん達は?!」
ラビィの傍らに藤宮達の姿が無い事に気付き、沿矢は己の心臓が嫌な鼓動を刻むのを感じ取る。
脳裏に浮かぶ絵は最悪な結末であったが、それは直に塗りつぶされる事となった。
「藤宮達とは、HA装着者との戦闘の際に傍から離れました。ですが、私が此処で増援を食い止めていたので彼女達も無事みたいです。センサーでマークしていた五人が行動しているのを捉えてますから、まず彼女達と見て間違いないでしょう」
「そうか、無事か……良かった。はは、じゃあ……後はマックスだけか」
一度は安堵の表情を浮かべた沿矢ではあったが、直にそれを引き締めて気合を入れる。
ラビィは一つ頷くと、瞼を細めながら上層を睨む様に視線を向けた。
「マックスは恐らく最上階に居ます。ですが、最上階に目立った動きが見られないのです。これ程の騒ぎを感知できてない筈はないのですが……」
「奴はテラノに住んでた子供達を人質にとってるんだ。だから何があろうと自分は殺されないと確信してるんだと思う」
「子供達……。ですが、それらしき反応はこの建物に感知できません」
「そうか、だとすると別の場所か……。とりあえず、奴を捕まえて直接聞き出すしかない。行くぞ、ラビィ」
「はい、沿矢様」
正式に合流を果たした沿矢とラビィ。
こうなればもう、残された敵は終わったも同然であった。
途中で数人の無法者と遭遇したが、相手は既に銃器を手にしてもおらず、必死に命だけは助けてくれと懇願するばかり。
戦闘中の戦意喪失ならばいざ知らず、戦う前から命乞いをされては殺す訳にもいかないと、その場で捕縛して放置してを繰り返して先に進む。
「ちっ、劣勢になった途端に命乞いたぁな! 別にそのままぶっ殺せばいいじゃねぇか、なぁ!?」
「まぁ、俺も今更奴等を殺すのに躊躇はしないけど……一番の被害を受けたのはテラノの人達だ。その人達も鬱憤を晴らす機会が欲しいだろ」
いきり立つコープに対し、前を走る沿矢がそう答える。
するとコープは引き攣った笑みを浮かべた。
「……町の奴等にリンチでもさせる気か? そっちのがエグイぜ……」
「そうするかどうかは町の人達次第だ。別に町の人達が大人しく組合所なり都市なりに無法者達を引き渡そうとするなら、それはそれでいいだろ? その逆もまた然りだ」
そう先を急ぐ道中で、不意にランドが笑顔を浮かべながら弾んだ声を上げる。
「なんにせよ、大金星だよな! 集落に巣食ってた無法者の二百人と戦い、勝利して解放! だなんて聞いた事もねぇぜ?!」
「しかも数は圧倒的に劣り、捕まってからの劣勢状態からの大逆転だからな。ヤウラどころか、各都市に伝わる程の英雄譚じゃねーの?!」
マイクもランドのテンションに合わせ、二人は盛り上がる。
コープはそんな気の早い仲間二人の陽気さに呆れつつ、沿矢に話し掛けた。
「木津、まだSBは抜けないのか? 効果が切れると身体機能が暫く低下するらしいから気をつけろよ」
「SB? 沿矢様、SBを使用したのですか?」
「ん? あぁ、一階にHA装着者が落ちてきてさ。ソイツと戦ってたら落としたから、利用させてもらった」
あっけらかんと沿矢がそう告げると、ラビィは走るのを止めてその場に留まった。
慌てて自分達も足を止めて背後を振り返る沿矢達。
するとラビィはショックを受けたかの様にその場に立ち尽くし、呆然としたまま動きを止めている。
「ど、どうしたラビィ? 不調か?」
「ラビィは……ラビィが、ゾルダートの装着者をエレベーターシャフトを利用して下層に落としました。まさか、その所為で沿矢様に危険を負わせるとは……!」
「そうは言っても……アイツを倒せないからそうしただけだろ? アイツやコープの話を聞くとSBには効果時間があったらしいし、適切な判断だってば」
「いえ、ラビィがセンサーで沿矢様の存在を感知できていれば、その様な行動は取りませんでした! 例え、刺し違えてでも撃破を優先していれば……」
流石にラビィのセンサーで遠距離に居る個人対象の区別まではできない。
最初からセンサーの範囲内に居てその人物をマークしていれば話は別だが、一旦距離を離してしまったならばそれでお仕舞いだ。
ラビィは様々なエラーを弾き出し、何度も先程の戦闘のシミュレーションを繰り返す。
本当にあのまま勝てなかったのか? 時間を稼ぐにしても別のやり方はなかったか?
何度も何度も同じ計算と思考を繰り返し、混乱するラビィに対し、沿矢は彼女の手を取って柔らかな口調で言う。
「ラビィ、お前に任せると言ったのは俺だ。それに……お前の死を俺は願わない。俺が危険を負う事でお前が助かるなら、俺は喜んでそうするって」
「そんなの……駄目です。許容できません。貴方を守る事がラビィの存在意義です。貴方が居なければ、私はどうすればいいのか分からない」
いやいやと子供の様に首を横に振るラビィ。
沿矢はそんな彼女を下から覗き込む様にして視線を合わせる。
「だったら互いに助け合えば良い。そうだろ? 事実、お前が藤宮さん達を助けてくれてると確信できてたから、俺はこうして遠慮なく動けてカークスさん達と脱出できた。お前が居たから皆が助かってる。そしてこれからも俺を助けてくれるんだろ? ラビィ」
「無論です。例え何が起きようとも、ラビィは沿矢様に尽くします」
「あぁ、俺もそれを望んでる。けれどラビィ、お前が俺の死を望まない様に、俺もお前を失いたくない。だったらずっと助け合って生きていけば良い。そうだろ? 単純な話だ」
「沿矢様……」
既にラビィと言う存在は沿矢の中で大きな物となっていた。
これは相手が機械だからこそ、向けられる信頼と言っても良い。
人と人との間では決して有り得ない、狂信に近い信頼感。
この崩壊した世界で、ラビィは沿矢が心の底から信じられる唯一の存在だ。
無論、世話になっている里津や弓や弦、教会の皆も信頼を置ける人達ではあるが、それは"絶対"ではない。
そもそも沿矢は自分が抱えた借金や起こした騒動で皆に迷惑を掛け続けていると考え、何時も彼等に失望されやしないかと不安を抱いていた。
そんな中でどんな状況だろうと味方になってくれるラビィと言う存在は大きく、またその安心感は既に手放せない物となってしまった。
この世界に来てから様々な状況を生き抜いてきた沿矢ではあるが、元々は十五歳の子供。
そんな彼が精神の支柱を必要とするのは、極々普通の流れであるとは言えた。
本人にはまだその自覚が薄いが、放つ言動には明確にその心境が現れ始めていた。
「……よぉ。俺達は何時までお前等の愛の囁き合戦を見守ればいいんだ?」
「愛ぃ~? 馬鹿! お前……これは信頼できるパートナーへの激励だっての」
コープに横槍を受けた沿矢はそう答えるも、先程までの自分の言動を思い出して狼狽える。
幸運にも返り血を多く浴びていた事によって頬の赤みは誤魔化せた。
が、コープはハッと皮肉げに笑い飛ばす。
「へいへい、そうかい。何にせよ、先を急ぐぞ。Hopeの連中や依頼主を助けなきゃなんねぇ」
「分かってる。分かってるから……そのニヤケ顔をやめろ! 殴るぞ!!」
羞恥心で思わず沿矢が手を振り翳すと、コープが大慌てでジャンプして距離を取る。
「やめろ馬鹿! テメェが殴ったら洒落になんねぇよ!!」
と、何とも締まらない会話を繰り広げながら彼等は藤宮達との合流を目指した。
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「隊長! 戻りました、バスクです!!」
その頃、街の倉庫と入り口を完全に制圧したバスクがカークスとの合流を果たそうとしていた。
彼は倉庫にあったテクニカル三両を率い、部下八名と行動を共にしている。
残りの大多数は倉庫と入り口の警備に回し、奪還をさせないようにと防備固めていた。
「隊長……! 何処だ? クソ、警戒しろ。制圧された恐れがある」
警察署の入り口にカークスの姿が見当たらず、バスクは部下に警戒を呼び掛けた。
最悪の展開を予想して覚悟を決めつつあるバスクであったが、それは徒労に終わる。
「バスク! 戻ったか! よくやった!」
「隊長! ……? その人達は?」
警察署の奥から出てきたカークスは、銃を持った見知らぬ人員を率いていた。
その殆どが女性であり、バスクは警戒しながらも困惑を隠せない。
「このテラノに住む人達だよ。彼女達も反旗を翻してくれた。どうやら彼女達は子供達を人質に捕らえられていたが、私達の反撃を知って協力してくれるとの事だ。もっとも、それを彼女達に知らせてくれたのは木津君らしいのだが」
「アイツが……そうですか。けど、女性だけですか? 男連中は何処に?」
バスクは思わずそう質問すると、街の女性達は表情を暗くする。
それを見て瞬時にバスクも状況を察したが、時既に遅しだ。
「男の殆どは利用できる人材を残して殺害されたらしい……。それに生き残った男達もかなり酷い扱いを受けてたみたいで、まともに戦える男性は皆無に近い」
「ッ……そうでしたか。すみません、ご婦人の方々……無神経な質問でした」
バスクがそう言って頭を下げると、街の女性達は戸惑う。
この三ヶ月ずっと無法者に酷い扱いを受け続けた彼女達は、男性の謙虚な姿など見忘れてしまったのだろう。
謝罪もそこそこにし、バスクは周囲を見回して沿矢とチームラウルの面々が戻ってない事に気付く。一応言葉にしてその事を問うも、やはり期待した答えは返ってこなかった。
「木津達はまだ戻ってないんですか?」
「あぁ、まだだ。いや、待て。バスク、それは無線機か? それでホテルの戦況は確認できないのか?」
「それが……ホテルと倉庫の警備では、どうやら別々の周波数を使用してるみたいで……」
バスクはそう言って、別の無線機をカークスに投げ渡す。
カークスはそれを受け取り、一つ頷くと指示を飛ばし始める。
「よし、街の人達の協力を得られた今が最大のチャンスだ。ホテルへ向かうぞ!! バスク、装備は用意したか?」
「はい! ですが、街の人達に全員配れる程の量は流石に車両には積めてません……倉庫へ向かえば全員が武装できるとは思いますが」
「了解した、二手に分かれよう。私は今此処にある装備でフルに武装できる人員だけを率い、ホテルへと向かう。バスクは街の人達を護衛し、倉庫へ向かってくれ。準備が整ったら応援をホテルに送ってくれればいい」
「隊長、お言葉ですがその足でホテルへ向かうのは危険です。役割を交代しませんか?」
カークスの足は街の女性陣の手当てを受けてはいたが、やはりまだ血が滲む程のダメージが残っている。
故にバスクが役割の交代を進言すると、カークスは一つ唸りながら確認を取る。
「うぅむ……。しかし、大丈夫か? お前も疲れてるだろ?」
「大丈夫です、隊長。今の状態が一番のベストだと自負してます」
「……木津君と上手く連携は取れるのか?」
その言葉には、バスクが今まで沿矢へ向けていた態度を懸念した気持ちが滲み出ていた。
しかし、バスクは力強く頷いてその懸念を晴らす。
「無論です。アイツには散々助けられましたから……今となっては、戦車を壊してくれた事すらも感謝したいぐらいです」
今回の事件はチーム『クルイスト』だけでは恐らく対処できなかったであろう。
結果的にとは言えど、沿矢が起こした行動のお陰で自分達は助かる事ができたとバスクも既に認知していた。
バスクの言葉を聞いてカークスも大きく頷きを返し、了承の意を返す。
「よし、分かった。ホテルは任せた! バスク、全力で彼等をサポートしろ!」
「了解です! さぁ、お前等! 準備はいいか! ホテルを制圧し、マックスを捕らえれば勝利は確定だ!! 全力であの屑共を叩きのめせ!!」
『応!!!』
バスクが号令を出すと、力強い返事が闇夜を切り裂いた。
――余談ではあるが、勇んでホテルへと駆けつけた彼等がホテルでの戦闘跡を見て呆然としたのは言うまでもない。




