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俺+UFO=崩壊世界   作者: にゃほにゃほタマ爪
第二章 荒野を駆ける日々
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佳境



『クソ……がぁ!! 冗談じゃねぇ! 何だ、今の一撃は……!』



HA装着者は、エントランスに大の字で仰向けになっていた。

ジンと熱が渦巻く様にして、胴体が発する痛みに耐えているのだ。

言葉を発するだけで痛みを伴うともなれば、装甲とナノスーツでさえ防げない莫大な衝撃が発生し、肉体にダメージを与えた事になる。



『軍事用の……HAだぞ!? その装甲を素手で砕くなんて……何だそりゃ』



HB仕様のレイルガンですら、HA-typeD-34:ゾルダートの装甲は一撃では貫けない。


しかし、現実に自身の胸部前面装甲は全壊とまでは言わずとも大きく損傷し、こうして苦悶の声を上げている。その事実に苛立ち、思わず罵倒が口から飛び出す。



『糞、クソ、くそぉ!! 殺す! コロシテヤル!! あの生意気ッ……っが?!』



HA装着者が立ち上がろうとして、失敗した。

痛みが原因ではない。

急激に体全体が悪寒に包まれ、吐き気が込み上げてきていたからだ。

更には視界も揺れ始め、聴力さえも遠のき始め、冷や汗が肌を流れる。



『ちく……しょう!! 時間切れか?! やべぇ、このままじゃ殺される……!!』



今の状態で、あの相手と戦って勝てるとはとても思えない。

しかし、此処から逃げようにもSBが切れた副作用で足取りが覚束ない。

ならば――仕方がない。



『く、くはは……! 負けて死ぬくらいなら……道連れにしてやんよ』



HA装着者は覚悟を決め、破損した前面格納スペースを無理矢理にこじ開け、SBを取り出す。

直後、エントランスに開いた穴を通って沿矢がゆっくりと足を踏み入れてきた。



「お、随分と苦しそうだな。持病持ちだったか? それはお薬かな? 僕ちゃんってば、一人でお薬飲めるんだ!? 偉いでちゅねぇ」


『へっ……テメェは殺す。必ずだ。コイツを使えば、お前なんざ敵じゃねぇ』



煽ってきた沿矢に対し、HA装着者はニヤリと笑みを浮かべてそう答えると首のソケットを開く。

そのままソレを突き刺そうとして――信じられない光景が視界に飛び込んでくる。



「"ソレは"そうやって使うのかぁ。じゃあ、"俺も"使わせてもらおう」


『馬鹿な、テメェ……!』



沿矢が手にした"SBの容器"を見て、HA装着者は掠れた声を絞り出す。

対する沿矢は先程の相手を見習ってニヤリと笑ってみせ、躊躇なく自身の首元にそれを突き刺した。慌ててHA装着者もソケットにSBを打ち込み、ナノマシンを投与する。



「は……ははは! なるほど、良いね! お前の強さが分かったよ! 確かにこれは凄い!!」



笑い声を上げて興奮を露にし、首元から容器を離すと沿矢はソレを握り潰す。

先程の一撃で装甲が砕け、その際に零れたSBの容器をロッカールームで見つける事ができた彼は、今日一番の幸運に恵まれた。



『クソが……冗談じゃねぇ』



対するHA装着者はSBが与える高揚感すら消えうせ、ただ冷や汗と焦りを覚えるだけであった。


これで条件は対等になった。

傍から見れば、軍事用HAを装着した者が有利だと誰もが思うだろう。


しかし――現実には沿矢だけが笑みを浮かべ、対する相手の表情は強張っていた。



「ほら――行くぞ!」



そう沿矢が宣言した次の瞬間には、既にHA装着者の真正面に居た。

咄嗟に迎撃の右拳を放ち、背部の腕を上から振り下ろして迎撃するも、沿矢はそれを薄皮一枚で回避する。



『舐めるなぁ!!』



遅れて放たれたHA装着者の左肘が沿矢の顔面に迫るが、それすらも潜った形でかわされる。


腹部に潜り込んだ沿矢は右拳をフックの軌道で下斜めから放ち、脇腹に着弾させた。装甲がない脇腹付近に着弾を受け、堪らずHA装着者は息を零し唾を飛ばす。



『くそ……がぁ!!』



何とか痛みを堪えて右の膝を打ち上げると、沿矢の腹部に着弾……せずに左手で軽々と受け止められた。



『なんだと?!』



HA装着者はその光景に驚きを隠せず、僅かに膠着してしまう。

受け止められた際に発せられた衝撃と音は大きな物だったが、沿矢には何のダメージも見られない。



「まず一発!!」



その隙を見逃す筈もなく、沿矢は左膝を打ち上げ、受け止めた左手と挟む様にして右足に打撃を叩き込む。



『ッぁ、糞が!』



右膝の装甲が砕け、痛みが走る。

HA装着者は何とか右足を下げて後方に飛んで距離を取ろうとしたが、追撃は当然止まらない。

沿矢も床を蹴り壊す程の衝撃を放ちながら、一気に肉薄する。



『何なんだよ、テメェはぁ?! 一体どうなってんだ!!』



ヘルメットの中は荒い呼吸と罵倒で埋め尽くされ、脳内は混乱に満ちていた。



「――はっ!」



それを聞き、沿矢が更に笑みを深める。

しかし、言葉ではなく拳で返事を返す。


沿矢は逃げる相手を追って一直線に加速し、右の直突きを放つ。

対するHA装着者は左腕を咄嗟に振り上げ、内側から外に弾く様にして受け流そうとする。が、無理矢理捻じ込む様にして押し込まれ、無慈悲な一撃が容赦なく胸部に突き刺さった。



『がぁ……ッ!!』



胸部装甲はその一撃で完全に打ち砕かれ、SBが収納されていた格納スペースも当然破損する。

堪らずHA装着者は反射的に右膝を打ち上げて迎撃し、懐に潜り込んできていた沿矢の死角からソレが脇腹へと迫った。



「おっと」


『ふざけんな……!』



しかし、それすらも危なげなくスウェーで回避される。

SBがもたらす体感時間の増加や反応速度、空間把握能力の向上は確かに計り知れない効果がある、何度も使用していた自分が一番それを分かっている。



けれど――!!



(遥かに異常だ、SBがどうとかじゃねぇ! 俺だって使用してるってのに、どうしてこうも一方的になる!?)



命を賭してSBを使用したのにも関わらず、防戦一方となっている。

自分はこの勝負に勝った所で死ぬか、廃人になる未来しか残されていない。

だからと言って……!!



『負けられるかよぉ!!』



そこで、ようやくHA装着者は攻勢に出た。

対する沿矢はそれを見ると、何と笑みを浮かべながら構えを解いて両腕を下ろす。

舐められたと思うと同時に怒りが沸いたが、これはチャンスだとHA装着者は己に言い聞かせる。



『シネェ!!』



まずは左の鉤付きを沿矢に放つも、着弾と同時に体を捻る様にして衝撃を逃がされる。


構わず、背部の右腕を真上から振り下ろしたが、左肘を瞬時に打ち上げられてマニュピュレーターを破壊された。


それでも怯まずに右のリードストレートを放つが、僅かに頬を掠めただけで終わる。


最後に体を大きく回転させ、不意を突いた形で左の回転蹴りを放つも――屈まれて回避されてしまう。



『クソ……ッ!?』



瞬間、HA装着者は恐怖した。


屈んだ沿矢はそのまま頭を前に下げ、両足に全力を込めて床を破壊する程の力を利用し、自身の体全体を前面に高速で回転させ、エントランス内に暴風を巻き起こしながら足を伸ばして蹴りを放つ。


所謂、動回し回転蹴りではある。

が、その発生スピードとカウンターとして使用した判断力は並外れており、加えて沿矢の身体能力から放たれたその蹴りは技の領域を超え、兵器並みの一撃となって相手を襲った。



――――!!!



ホテルのエントランスに、今日一番の轟音が響き渡る。

装甲が砕けた音、床が弾けた衝撃音、ホテルが揺れた衝撃で巻き起こる微弱な揺れで物が震え、小気味の良い音が鳴った。



『あっ、がぁ……! ほ、骨が……! クソ、痛てぇ……』



蹴りが着弾した右肩の部分を押さえながら、HA装着者は地面に伏せたままだ。


抑えている部分にあった装甲は大きく損傷して陥没し、それが押し込まれる様にしながらナノスーツを裂き、骨を粉々に砕いて肉を深く裂き、深紅の血が滝の様に流れ始めている。



『くそ、クソ! クソがぁ!!』



HAを素手で破壊し、此方が放つ攻撃も通じない。

まるで悪夢でも見ているかの様だ。


確かに自分は碌でもなく生きてきたさ。

見知らぬ誰かを襲い、殺し、奪い、犯し、そうやって生きてきた。


だって仕方がないだろう? 物心が付いた頃からそれが当たり前で、そうする事でしか生きられなかった。他に術を知らなかったんだ……!


けれど、そう……これが、その報いなのか――?


何時の間にか、HA装着者の思考は戦闘の"ソレ"から逃避へのソレに変わっていた。


連続したSBの使用で中枢神経への刺激が過剰になり、反応速度や空間把握能力は既に衰えを見せ始めている。


それでも尚、諦めなければ沿矢に一矢を報いる事ができたかもしれない。

だが、HA装着者は"狩る"立場から"狩られる"立場に陥った事で、戦意を既に喪失していた。

それは対等な条件で敵と戦った事の無い者が陥る症状とさえ言える。


しかし、それでも攻撃は止まらない。

まず背後の腕を力任せに引っこ抜かれ、続けて左腕を折られ、装甲を失った右膝を容赦なく打ち砕かれた。



『いてぇ……痛い…………痛いんだよぉ! なぁ、もうやめてくれよ……。どうせ俺はSBの過剰投与で死ぬ。だから、もういいだろ? あと数十分もすれば死ぬから、最後くらいはゆっくり死なせてくれ……頼むよ』



遂に戦う事を放棄し、HA装着者は後ずさりながらそう懇願する。

対する沿矢は黙って近づき、胴体を容赦なく踏みつけ、逃走を止めた。



「……悪いね、俺は急いでるんだ。だから"今"殺す」



まるで友達との遊ぶ約束を断る時の様なニュアンスで、沿矢はそう告げた。


親しげな口調にも関わらず、告げられた言葉の重さは間逆のソレ。

堪らず、HA装着者は必死に口を動かして延命を試みる。



『待てよ。待て待てまて!! こんだけ必死に頼んでるのになんだよ!! 人でなし! 屑! ゴミ野郎!! いつか、そう何時か罰が下るぞ!! あぁ、そうさ!! テメェみたいな化け物が碌な末路を迎える訳もねぇ!! ひひひひ! そうだよ、その時になって今日の事を思い出せ!! 自分が殺した奴等の表じょ……っぶ!』



これ以上聞く気もないと言いたげにしながら、沿矢は右足の踵を無造作に振り下ろしてヘルメットごと頭部を潰した。


エントランスに静寂が訪れる。

沿矢が足を動かすと、"ぬめった"音だけが周囲に響き渡った。



「お前は思い出せたのかよ? 自分が殺した奴等をさ、勝手抜かすな」



そう吐き捨て、沿矢は深くゆっくりと息を零す。


SBが与える高揚感は続いている。

けれども、胸中に漂う思いは何処となく沈んでいた。



「碌な末路を迎える筈もない……か。けど、まぁ……まだ先の話だろ」



気まずそうにしながら後ろ頭を掻くと、沿矢は直にその場から駆け出した。







▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼








場所は変わり、ホテルの七階。

其処では藤宮達が必死の攻防を繰り広げていた。



『あの女共を殺せぇ!! 一人も逃がすな!!』


『け、けどマックスがよ……』


『馬鹿を言うな!! 殺さなきゃ俺達がやられるぞ!! もう既に何人やられたと思ってるんだ!!』


「向こうも随分と必死になってきたね。ここらで降参しとくかい?」



里菜が無線機から聞こえてきた交信を聞き、そう軽口を飛ばす。

しかし、直に無線機の電源を切って再びタルパーの引き金を引いた所を見ると、まだ闘志は尽きてない様だ。



「降参するなら一人でしてろ。おっと、服を脱いでいくのも忘れるな? お前の貧相な体でも、あの野獣共は喜ぶだろうさ。私達はその隙に脱出する」


「誰が貧相だい!! 見た事も無いのに勝手に決め付けないでおくれ!!」



フェニルが放った冗談に対し、里菜は本気で憤慨する。

そうこうしている間にも里菜達とは反対の通路を警戒していた藤宮は、通路に飛び込んできた一人を撃ち倒し、直にリロードのタイミングを伝える。



「リロード!! 援護して!! フィブリルさん、マガジンを!!」


「は、はい!」



普段穏やかな印象が強かった藤宮の怒号に驚きつつも、フィブリルはマガジンを渡す。


今現在、七階に足止めを受けた彼女達の残弾数は心許なくなっていた。

交戦している内に次々と下層から援軍が送られてきてしまい、どうしても先に進む事ができないでいる。


しかもメアの位置情報を常に知られている為、不意を突いての移動もできない。

気付けば通路の一角に追い込まれ、そこにあった古びた自動販売機を横に倒して盾にしながら、彼女達は前後に分かれて応戦する事となった。


前面は藤宮とメアが、後方はフェニルと里菜が応戦、その間に居るフィブリルが弾薬を配っている。



「メア、あまり前に乗り出さないで! 危ないから!」


「大丈夫! 任せて!!」



意外にも、歳若いメアの射撃精度は高い水準にあった。

今とて通路の先から顔を覗かせた無法者の一人の額に見事に弾を命中させ、沈黙させる。



「はは、ざまぁみろ……」



倒した敵を見てメアの口角の端が上がり、引き攣る様な笑みが浮かぶ。

それは無事に敵を倒せた事に対する喜びと言うより、明らかに負の側面が目立つモノであった。


危うい精神状態である事は明白ではあったが、今はそれを指摘している時ではない。

藤宮は一旦メアの様子に目を瞑り、マガジンを交換し終えて再度タルパーを構える。



「フィブ嬢! マガジンを投げとくれ!」


「は、はい!」


「おい、さっきから何だその言い方は?! 依頼主だぞ! 彼女は!」


「なにさ、ちゃんと嬢付けしてるだろ?!」


「言葉使いがなってないと言ってるんだ!! もっと敬意を払え!」


「フィブリル様ぁ、よろしければ弾が切れたわたくしめにマガジンを恵んでおくれまし? ……って言えってのか!? そうこうしてる間にやられちまうよ!!」


「いっそやられてしまえ!!!」



ギャーギャー言い合いながらも、フェニルと里菜は息の合った連携を見せる。

マグチェンジのカバーをし合うタイミングもほぼ完璧で、言動とは間逆の動きだ。


しかし、練度の差で勝っても数の差は大きく、状況は劣勢となっている。

そして遂に、恐れていた報告がフィブリルから告げられてしまう。



「あ、あの……。もう、マガジンが二つしか……」


「……つまり、随分と粘れたって事だね。ふぅ……あたし等にしちゃ上等だね」


「何だ、その口振りは? 諦めるにはまだ早いぞ」



とは言うものの、フェニルの表情も強張っていた。

藤宮もいずれ訪れる時が来たと覚悟を決め、ナイフを懐から取り出す。



「……こうなったら、前に出よう。死体を漁って弾薬を確保すれば、まだ戦えるよ」


「そう、だな。それしかないか」


「フィブ嬢、アンタとメアは私達の背後にいな」



里菜も言いながら、大きく息を吐いて覚悟を決める。

しかし、不安気なフィブリルとは裏腹にメアは大きく反発した。



「私だって戦える! 私が突撃するよ!! 私が、あいつ等を……!」



そう言ってメアは前に出ようと腰を浮かしかけたが、里菜がそれに怒号を上げて押し留める。



「私等は生きる為に戦ってるんだ!! アンタの復讐心に付き合う気はないよ!!」


「ッ……! だって、私のせいで……貴方達に迷惑を掛けちゃった。こんな事なら、最初から全部諦めてしまっていれば……」



メアは大きく項垂れ、後悔を口にする。

直後、通路に乾いた音が響き渡った。

その原因は明確で、突然藤宮がメアの頬を平手で叩いたのだ。


メアは大きく目を見開きながら混乱するも、藤宮はキッと目を見張りながら叱咤の声を飛ばす。



「貴方はただ生きたいと思っただけでしょう!? 侮辱されても、陵辱されても貴方は耐え抜いた! なのに、私達に迷惑が掛かったから諦める……?! 私達を理由にしないでよ!! 貴方を助けたいと願った私達の想いを無下にしないで!!」



掴み掛かる勢いで藤宮はメアにそう怒鳴り声を散らす。


気付けば、涙が零れていた。

次々と溢れる涙が頬を流れ、メアは顔をくしゃくしゃにする。

彼女の頬に手を添えて涙を拭いながら、藤宮は静かな口調で言う。



「諦めて、死んでしまったら本当に負けだよ。けど、諦めずに必死に抗って死ねたなら……きっと後悔はしない」


「……ぅん」



藤宮にそう頷いたメアの表情は、本当に年相応の少女の物だった。


例え此処で死ぬとしても、彼女だけは死なせない。

そんな決意が藤宮の中に芽生え、悪化する状況に逆らって戦意が燃え盛る。



「フィブリルさん。最後のマガジンを里菜とフェニルに」


「おい、シズ! お前……」


「危険な役目を背負うのはリーダーの役目だよ。これでも、ナイフの扱いは上手いんだから!」



渋る様子を見せたフェニルに対し、藤宮は小さく笑いながらナイフを手の内で回してみせる。



「アンタはリーダーの鏡だよ、シズ。今更だけど、アンタと組めて良かった。あとついでに……フェニルもね」


「……私は何も言わないぞ。此処で死ぬ気はない」


「私だってそうさ」



小さく笑い合い、二人は最後のマガジンの交換を終える。

各々が目線を合わせ、そしてまた笑いあった。

しかし、それも直に打ち消すと藤宮は決意を秘めた表情を浮かべて指示を出す。



「私の合図で正面通路を突破、死体を盾にして塹壕を築き、弾薬を確保する。皆、準備はいい?」


「あぁ、どんとこいってね」


「オーケーだ」



藤宮達は準備を追え、正面通路に集まって様子を伺う。

タイミングを見計らって突撃しようとして……訝しげに頭を捻った。



「あれ? そういえば、さっきから敵が来てないよ」


「確かに……里菜! 無線はどうだ?」


「はいはい、ちょっと待ちな」



交戦時の指示を聞き逃さない様に、里菜は無線機の電源は細かくON、OFFを切り替えていた。


そして覚束ない手付きで無線機を取り出し、電源を入れる。



『……軍を!! 援軍をよこせぇ!! あの女が来る!!』


『女だぁ!? ガキのが厄介だ!! アイツ、銃弾を"避けやがる"!! 壁をぶちぬいて何処から来るかも分からねぇ! このままじゃ殺される!!』


『警備室!! おい、答えろよ!! 指示はどうした、おい!!』


『警備室なんざとっくに制圧されてらぁ!! 今の戦線はガキが居る四階と女が居る五階だぞ!! 警備室は三階だ!!』


『ゾルダートは、HAを使ってる奴はどうしたァ!?』


『恐らくアイツもやられてる!! 何度も呼び掛けてるが、無線に応答しないんだよ!!』


『ふざけんなッ!! だったら勝ち目なんざもうねぇじゃないか!! 俺は逃げるぞ!? マックスなんか知るか、此処から早く逃、げ……来た。アイツが来た!! 誰でもいい、誰か……誰かあの小僧を殺せえええええええェ!!』



阿鼻叫喚、まさにその言葉が相応しい混乱が無線機から伝わってくる。


怒号と銃声と悲鳴で埋め尽くされ、緊迫した様子がハッキリと分かった。

敵方の様子だと言うに、思わず藤宮達は戦慄を隠せない。

額と頬に流れ始めた冷や汗を互いに確認しつつ、彼女達は視線を交わす。



「女……ってのはフルトだよね? けど、小僧ってのは……?」



里菜が呟く様に問いを投げかけると、フェニルがハッとした表情で答える。



「まさか、ソウヤか? 彼が来てくれたのか?」


「……分からない。けど、今がチャンスだよ。増援がこない内に私達も体制を立て直そう」



浮つき始めた空気を引き締める様に、藤宮が指示を飛ばす。

指示を受けた里菜と藤宮は頷きを返し、銃を構える。



――戦いは佳境を乗り越え、もうすぐ終わりを告げようとしていた。




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