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俺+UFO=崩壊世界   作者: にゃほにゃほタマ爪
第二章 荒野を駆ける日々
76/105

ピンク一直線

※連続更新分です。注意して下さい。



沿矢達が反撃の準備を開始している間、ラビィ・フルト含む他の面々は一つの部屋に集められていた。


しかし、その内装は沿矢達が居た場所とは違い、様々な家具や小奇麗な装飾品が置かれている。しかも驚く事に彼女達は拘束の類もされておらず、ただ其処に案内されただけだ。



「いや~に不気味だね……。アタシ達をどうしようってんだろうね、あいつ等は」



と、言いつつも里菜は部屋に備え付けられてあった真っ白なシーツのベッドに寝転んだ。


それを見て、瞬時にフェニルが怒号を上げる。



「おい、そこの馬鹿一号!! 不用意に動くな!! 何かの仕掛けが施されてても不思議ではないんだぞ!?」


「誰が馬鹿だい!! そうは言っても仕方ないだろ?! 部屋の外には重武装の見張りが居るし、武器も取り上げられちまったんだ!!」


「で、でもでも! フルトさんなら、どうにかでき……ますよね?」



藤宮がそう問うと、ラビィは彼女を一瞥し、その後静かに瞼を閉じながら言う。



「我々が連れてこられたのはどうやら元はホテルだった施設の様ですね。高さは十二階立てで、私達が今居る場所はその十階。各階には歩哨が巡回しており、このフロアだけでも生体反応は十を越えています。確認できる生体反応全てに銃器類による戦闘能力があると想定して考えると、このビルだけでもクラス四の警戒は必要です」


「ほらね~? フルトがこう言うんじゃ無駄無駄、私達じゃどうしようもないよ……」



里菜が悔しげにそう言うと、ラビィは事も無げに言葉を吐く。



「勘違いしないで下さい。私一人なら、このビルを抜け出す事は容易です」


「え!? じゃ、じゃあ大丈夫だよ!! 取りあえず、フルトさんだけでも抜け出して……」



藤宮がそう歓喜の声を上げると、ラビィはそれとは対照的に冷えた口調で答える。



「そうする事は容易ではあります。ですが、このホテルの主電源は生きています。それは部屋に電気が点いてる事からも理解できるでしょう。それは即ち、セキュリティが生きている可能性も示唆しています。もし、無理矢理に扉を破壊、もしくは壁を破壊すればセキュリティに感知される恐れがあります。無論、ラビィはそうなったとしても包囲を打ち破り、ビルからの逃走には九十%以上の高い確率で成功する自信がございます。ですが……」



ラビィはそこで言葉を区切り、思い出す様に瞼を閉じながら少し柔らかな口調で言葉を続ける。



「そう、今までの沿矢様の行動や言動から推測すると、沿矢様は貴方達を見捨てる事を良しとはしない傾向があります。故に、ラビィは此処に居る全員の生還を主とした作戦の立案を提案します」



この瞬間、間違いなくラビィ・フルトは"成長"した。

沿矢がラビィに最後に下した命令は『任せる』と言う一言のみ。


にも関わらずだ、彼女は自身が起こす行動で起きる結末を予測し、その中からマスターである沿矢が喜ぶであろう最良の選択を選ぼうと努力したのだ。


以前、カークスはラビィを"主人を気遣う機械"だと評し、驚愕した。

しかし、ラビィの学習速度は群を抜いており、もはやその行動は"気遣い"と言うレベルを上回りつつあった。



「ふ、フルトさぁん……」



藤宮が感激して思わず涙目を浮かばせていると、ここに来てから今まで沈黙を貫いていたフィブリルがマックスに打たれた頬を押さえつつ呟く。



「そうは言っても、私達だけでどうにかなるとでも? 機械である貴方の戦闘能力に疑問はありませんが、些か無謀ではなくて?」



それは生存を諦めた口振りではなく、あくまで真偽を確かめる響きであった。

フィブリルとて、この様な場所で最後を迎えるつもりは甚だ無い。

それにただ死ねるだけならまだいいが、先程のマックスの言動を見るに、碌な最後は迎える事はまずないであろう事が明白なのだ。



「戦況を打開するのに必要なのは戦闘能力だけではありません。"幸運にも"、部屋の外に居る相手は男です。で、あれば取れる手はあります」


「では、問うが……その手とは何だ?」



訝しげにフェニルが問うと、ラビィはゆっくりと部屋の中を見回し、無表情のまま言い放った。



「そうですね……。藤宮、里菜、まず貴方達二人には服を脱いで頂きます」



その言葉を聞き、部屋に居た者達全員が沿矢がラビィに施した教育に疑問を持った。

無論、沿矢本人には何の覚えも無い、名誉毀損に等しい勘違いである。






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「ちっ、また躾かよ? マックスもいい加減飽きないもんかね」


「そう言うな、これが終われば俺達もお零れに与れるんだ。とは言え、それが何時終わるかは分かんねーけどなぁ……」



ラビィ達の部屋の前で見張りをしている二人の男がそう愚痴を零す。

彼等が言う"躾"とは、言うなればマックスの趣味と言ってもいいだろうか。


彼は気に入った異性を手に入れると、まずは手を出さずに数日……或いは十数日間手を出さずに優しく、そして手厚く扱うのだ。すると当初は絶望していた女性達は徐々に意識を変化させ、マックス達に抱いていた悪印象が薄まってくる。


ストックホルム症候群、言うなればそれを利用した女性達への意識改革。


そうする事によりマックスは女性達を安心させきり、ある日突然それを容易に裏切り、相手へと襲い掛かって再び絶望の底へと叩き込むのだ。そしてその行為に"飽きる"と、ようやくそこで部下に手を出して良いとの許可を出すのである。



「に、してもよぉ……今回は上玉揃いだったよな!? 特に見たか!? あの銀髪の女!! 胸がもう……なぁ!? おい!!」



興奮を包み隠すことなく、男はもう一人の相方に話しかけられる。

話しかけられた方はそんな相手の勢いに若干引きつつも、賛同の意を飛ばす。



「あぁ、確かにな。テラノの女達や、"あいつ"にももう飽きてきてたしなぁ。ああいう、気の強そうな女達を屈服させるのは最高の楽しみだからな」


「へへっ、楽しみだぜ本当!! まったく……早くその時が……って、ん?」



その時、部屋の中から物音が聞こえた。

自然と銃を握り締める手に力が入り、息を飲む。

そのままアイコンタクトを交わし、比較的冷静であった方の男がドアの覗き穴、ドアスコープに目を通す。そして次の瞬間、彼は思わず声を漏らしてしまう。



「っは?! え、ぁ……マジかよ」


「どうした、オイ?」


「いや、まぁ……うん」



思ってもみなかった相手の反応に、思わずもう片方の男が何事かと問い正すが、反応は薄い。

しかし、ドアスコープを覗く男はそのまま離れる様子を見せず、そのまま徐々に息も荒くし始めた。



「おい! 何だってんだよ!? 俺にも見せろ!!」


「ちっ……。あぁ、見てみろ。へへっ、驚くぜ?」



邪魔をされた男は僅かに苛立ちを見せたが、次の瞬間には下卑た笑みを浮かべながらそう告げる。


それを聞いた相方は、まさかと脳裏にある想像を巡らせながらドアを覗き込み、そして仰天した。



『お、おい……シズ、止めてくれ!』


『……嫌だよ。私達、死ぬかもしれないんだよ? だったらさ……ね? いいでしょう?』


『待て、待ってくれ! くっ……! おい、クミ! お前も……っあ……や、やめないか!!』


『いいじゃん。シズの言うとおりだよ……。最後くらいさ、楽しもう……』



部屋の中の様子はまさかのピンク一直線であった。

藤宮と里菜は下着姿であり、そんな二人はフェニルに覆い被さりながら服の中に手を入れながら下着を剥ぎ取り、或いはそのまま妖しく動かして攻めている。



「おいおいおいおいおい!? いや、前にも確か似た様な事はあったって他の奴等から聞いてたが、ちいとばかし早すぎないか!?」



この様な状況下で自暴自棄になり、性行為に逃げる女性が居たと言う話は他の見張り仲間から確かに聞いた事はある。


しかし、それはあくまで捕まって暫くしてからの話であり、まさか捕まって二、三時間ほどでこうなるとは誰も思わない。



「いや、そういや……あいつ等三人は同じ車両に乗ってたろ? 即ちそれは同じチームだったって訳だ……だから、な?」


「あぁ……。はっ、なるほど。つまり常日頃から彼女達は"そうだった"って話ってわけか?」



今の荒廃時代では、同姓同士での絡みはそう珍しい話でもない。

とりわけ、組合所に所属する者達は常に命の失う危険が付き纏う故に、そうした傾向が強い。

古今東西、軍隊でも同じ傾向が多くあったが、組合所も漏れなく同じであったと言う事だ。


余談であるが、組合所では男女混同でチームを組む事があまり良しとはされない。

その理由は、チーム内での恋愛絡みのトラブルを避ける為だ。

が、昨今ではその対策もあまり意味が無いパターンが生まれてきてしまっている。



「へへっ、そういう事だ。こうして見ると、女性だけの"絡み"ってのはなんつーか……"何時もの"と違ってなんか見てて美しいというが、穢れが無い感じがするな!!」


「そうかもしれんが、俺は穢したい派でね……。なぁ、おい……ヤっちまわねぇか?」


「はぁ!? 馬鹿か!! マックスに殺されちまうぞ!?」



思わぬ誘いを受け、覗き穴に目を通していた男の興奮が一気に吹き飛んだ。

しかし、相手の渋る様子を見てももう片方の男は諦めない。



「んなもん、バラしたらぶっ殺すって銃で脅せばお仕舞いだろ? なぁ、おい。いつもさぁ、他の大勢の野郎共と一緒になりながら女とヤってても気が抜けねぇだろ? 偶には少数でゆっくりと楽しみたいじゃねぇか」



"お手付き"しても良いと言う許可が出た場合、当然ながらその日は大勢がそのご褒美に群がってくる。

普段なら相手にできないような上玉を好きにできるとは言え、些かその状況には不満があるのだ。


とは言えど、後でゆっくり……なんて思って待ってれば、その時には既に相手は"壊れてた"なんて時もあるから頂けない。



「まぁ、お前の言う事も分かるけど……」


「な? ほら、早くしようぜ! このままじゃあいつ等だけで終わっちまうぞ!」


「分かった、分かった。ったく」



そう言いながらもドアにカードキーを通し、空中に浮かび上がったホログラムに暗証番号を打ち込む男の口角の端は持ち上がっていた。


続けてゆっくりとドアを開けると、銃を構えながら唖然とする藤宮達に近寄っていく。



「よぉ、随分と盛り上がってたじゃねぇか? 俺達も混ぜっ……!?」



瞬間、部屋の明かりが落ちる。

男達の死角に居たフィブリルが部屋に備え付けられた電気のスイッチを切ったのだ。


無論、その指示を出したのはラビィだ。

そして彼女は当然ながら自身に備わっていた暗視装置を起動しており、物陰から飛び出して無防備になった男二人の懐に素早く飛び込む。



『っが……!?』



そのまま彼女は両手を使用して喉を容赦なく突き、声帯を破壊して声を荒げる事を阻止した。

続けてラビィはその突きをそのままにして相手を真後ろへと押し倒し、素直に倒れて無防備となった相手の顔面へと容赦なく素早く蹴りを打ち込み、頭蓋骨を容易に砕き脳に致命傷を与えて命を奪う。



「明かりを点けていいですよ。フィブリル」


「も、もう終わったんですの……? ヒッ!!」



フィブリルが明かりを消してから十秒も過ぎてない。にも関わらず、だ。

ラビィの指示で次に明かりを点けると、既に変わり果てた姿となった見張りの姿を直視してしまい、フィブリルが思わず恐怖の声を漏らす。


そんな彼女の様子を尻目に、フェニルは顔を真っ赤にしながら里菜の頬へと右の平手打ちをお見舞いする。



「このっ……馬鹿!! おま、お前ぇ! ほ、本気で……触ってきてただろ!?」


「ってて……。だって、そうしないとフェニルって演技が下手そうだったし……」


「だ、だからって普通触るか!? あ、あんな所を……ッ!!」



一発お見舞いしたがそれでも怒りは冷め止まず、フェニルは更に左手も上に翳したが、それを脇から藤宮が抱き付く様にして抑える。



「ま、まぁまぁ!! 作戦は上手くいったんだから落ち着いてよ」


「お、お前もお前だ!! さ、触るだけならともかく……ど、どどどどどうして摘んだ!?」


「え? ぁ……ごめん。その、癖……かな? あはは」



藤宮はフェニル問いに顔を赤くしながら照れ笑いを浮かべる。

ラビィはそのやり取りに興味を向ける事も無く、男達が身に付けていた装備を取り外す。

そのまま取り外した装備を床へ並べると、ラビィはそれを藤宮達に身に付ける様に指示を飛ばした。



「え? で、でも私達が扱うより、フルトさんの方が……」


「それに間違いはありません。ですが、正面から戦って切り抜けるのは無謀です。ここから先は隠密行動が主となります。故に、とりあえず当面は……」



ラビィは男達が身に付けていたナイフ二本だけを両手に持ち、静かに告げた。



「これで、十分です」




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