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俺+UFO=崩壊世界   作者: にゃほにゃほタマ爪
第一章 目覚めた世界は……
7/105

衝撃!! 町の中にあるゴミ山に突撃せよ!! テメー一人でな 編

朝目覚めて、周りを見渡すと自分の中に失望感が漂っているのを感じた。

やはり、夢などではなかった。

自分の気持ちに整理を付けたと思ってはいたのだが、そう簡単な事じゃなかったみたいだ。


しかし、そんな暗い気持ちも隣で幸せそうに眠るルイを眺めていると、何処かに引っ込んでしまう。

ルイを起こさない様に寝床から抜け出そうと、体を動かした所で猛烈な違和感を感じた。


その瞬間、稲妻の様に脳裏を過ぎる昨夜の会話。



「まさか、そんな、嘘だろ……」



ゆっくりと毛布を持ち上げると、水気を帯びた音が聞こえてきた。

本当にもう……この世界に来てから初体験ばかりで堪りません。







▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼








「ソーヤぁ……ごめんね」



今朝起きてから何度目かのルイの謝罪を聞いて、俺は苦笑した。

怒ってないよ、と頭を撫でてやる度にルイは泣きそうな顔になってどこかへ行ってしまう。

仕方なく今度は逃がさないように優しく背後から抱きかかえ、慰める為に椅子に一緒に座る。


今俺の服装は破けた制服とシャツ、そしてロイ先生が普段着ているズボンを借りている。

ロイ先生が朝の仕事に行く直前でよかった、黙って借りる訳にもいかないしな。

まさか比較的に無事であった制服のズボンが、先に戦線を離脱するとは思わなかった。

今、制服のズボンはペネロさんが洗濯してくれて、教会の外に干されてある。



「ルイ。悪い事って言うのは意図してなくてもやってしまう場合がある。ルイは別に俺を困らせたくてやった訳じゃないんだろ?」



ルイは小さく頷くが、鼻を啜る音が聞こえる。

どうしたもんか……男ってのは女の子に泣かれると、どうしようも無い存在だ。



「ルイ。俺がまだ小さい子供の頃は、本当に落ち着きの無いガキでさ。彼方此方で騒ぎを起こしては、よく両親に叱られた。けど、何度も騒ぎを起こしても両親は俺を許してくれた……。なんでだと思う?」


「……わが、んない」



ルイの頭を撫でつつ、当時を思い返しながらもう会えないであろう最愛の二人を脳裏に思い描く。

父さんは困った顔をしつつ、いつも笑みを浮かべてくれていた。

母さんは怒った顔だったけど、いつも俺が怪我をしていないかを真っ先に聞いてきてくれた。



「子供だからだよ、子供ってのは予測できない天気みたいなもんだ。台風みたいに騒ぎを起こしたかと思えば、晴れた日の様に良い気持ちにしてくれる時もある。だけど天気ってのは晴れの日がずっと続く事も、雨の日がずっと続く事も無いだろ? ルイはただ、今日が雨の日だったってだけだよ。明日、どんな天気になるかはルイの努力次第だ。このまま暗い気持ちのままでいたら、明日はまた雨の日かもしれないぞ? それは嫌だろ?」


「うん……。私、晴れの日の方が好き。 お日様が暖かいから」


「ああ、俺もだ……。だから泣くのはもう止めて、笑顔を浮かべるんだ。そうすれば、明日は晴れの日になるかもしれない」


「……分かった。私、もう泣かないよ」



そこでようやくルイが此方を向いて、笑顔を浮かべてくれた。

子供と女の子は笑顔が一番だ、この二つが合わさると勝てる物は何も無いな。


子供達の大半は外で遊んでいるので、ルイを抱え下ろすと一緒に遊んでくる様に促した。

ルイが教会の外に出て行くのを見送ったあと、机にうつ伏せになって一息を吐く。



「ふふふ、お疲れ様です」


「ぅえ!? あ、ああ……ブレナンさん。みっともない所をお見せしました」



突然声を掛けられ、驚いて振り向くとペネロさんが立っていた。

口元に手を当てて微笑みを浮かべている様は、少し悪戯っ娘っぽい感じがしてドキドキしてしまう。



「ルイの事、許してくださってありがとうございます。優しいんですのね……」


「え? いや……。あの、聞いてたんですか?」



俺がペネロさんにそう問うと、ニッコリと微笑みで返されてしまった。


子供に言い聞かせる為とはいえ、あんな恥ずかしい例え話を聞かれていたなんて……。


自分の体温が急激に上がっていくのを感じる。

里津さんとは別の意味でまたトラウマになりそう。

年上の女性って苦手だわ……。



「素敵なお話でした。私、感銘を受けてしまいましたのよ?」


「え、えぇ? またまたぁ、からかわないで下さいよ~」



隣に座ってきたペネロさんから気恥ずかしさに顔を背けてしまう。

不意に、テーブルに置いていた右手に暖かい物が覆いかぶさってきた。

視線を向けると、なんとペネロさんが俺の手の上に両手を被せている。



「からかってなどおりません。私は本当に感心しております」


「そ、そうですか。…………ありがとうございます」



彼女の様な大人の女性に諭されると、似ても似つかないのに母親を思い出す。

それが嬉しいような、悲しいような気持ちでなんとなく切なくなってしまう。


その状態のまましばらく無言の時間を過ごす。

たが居心地は悪くなく、寧ろ良いとさえ言える。


なんとなくマッタリした状態をペネロさんと二人で過ごしていると、突然教会の外から慌しい足音が聞こえて来た。



「先生ぇ! ベニーが! ベニーがゴミ山に行っちゃったぁ!!」



またもや憂いの表情を浮かべてルイは教会に戻って来た。

しかし、その理由は先程とは訳が違う。


ペネロさんは慌てた様子で席を立ってルイに駆け寄っていく。



「ルイ! それは本当なの?! 昨日の事があったばかりなのに、どうして……」


「べ、ベニーはね『ルイが取ってこれる位なら、俺にだってできる』って……私止めたのに……ベニー行っちゃったよぉ」



男として、ベニーの気持ちが俺には何となく理解できてしまう。

だが、だからと言ってそれを許容するには事情が許さない。

俺は多分昨日の夜ゴミ山の奴等に手を出してしまったのだ、気が立っていてもおかしくはない。

ただでさえ小さい女の子のルイを大人三人で脅しつけるような輩だ、男の子のベニーに手を出さない理由は無い。



「ペネロさん、ロイ先生に連絡が取れますか? 取れるならそうして下さい。俺がベニーを迎えに行ってきますよ」


「え? ですが……私が迎えに行った方が……」


「俺はロイ先生の居場所が分かりません。子供達に行かせる訳にもいけないでしょう? それに……もしもの場合、荒れ事だと男同士の方が話をしやすい事もあるんです」



最後にそう付け加えると、ペネロさんは渋々頷いた。

ペネロさんをゴミ山に向かわせてしまうと、エロゲーチックな展開になってもおかしくはない。

だからと言って奴等に手を出した俺が行った方がいいのかと問われれば、間違いなくNOだ。


だが今から急げば、ベニーがゴミ山に着く前に追いつけるかもしれない。

ゴミ山の位置は昨日の夜に大体把握してある、直に向かわなければ。



「じゃあ、今から直に向かいます。ルイ、心配しなくていいからな」


「ソーヤぁ……」



心配そうに見つめるルイに声を掛け、俺は日の光に瞼を細めながらも教会から飛び出した。






▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼






夜と違って日中だったせいか、瓦礫の山はすぐに走破できた。

頂上に立った時に遠くに見えた、幾つかの黒い塊。

昨夜も思ったが、あれ等が恐らくゴミ山に違いない。

目標に目星を付け瓦礫の山を下って道を渡り、建物の影で薄暗くなった路地裏を駆ける。


こんなに一生懸命走るのは何時以来だろうか、風が五月蝿いほどに耳を抜けていく。

だというのにベニーの姿は一向に見えてこないのだ。

焦りか、それとも疲れのせいか、次第に呼吸は乱れていく、ただ足を止める様な真似はしない。

もしもベニーに何かあったならば、そんな脅迫概念が俺を休ませることを許さない。


不意に路地裏の先に光が差し込んでいるのが分かった。

速度を落とし、顔を覗かせるとゴミ山の麓に辿り着いた事が分かった。


広大な広場に高く積みあがった複数のゴミ山、それを構成している物は捻じ曲がった金属や車の廃車が目立つ。

しかし、所々に見た事無い飛行機っぽい物や電車等の大物も紛れている。

濃厚な金属の臭いと、油の腐った様な臭いが混ざり合い、なんとも言えない悪臭を漂わせている。

何がどうしてこうなったかは知らないが、ゴミ山とは正しい名称である事を頷かせる光景であった。



「誰もいない……? ベニーはどこだ?」



てっきりゴミ山を見張ってるゴロツキ等がいるかと思いきや、誰も居ない。

心配は杞憂だったのかと、胸を撫で下ろしつつもベニーを探すべくゴミ山に足を踏み入れた。


誰かが物陰に潜んでいた時の為に用心しつつ歩いていく。

だが、広場全体に散らばった金属片が無音で移動する事を阻害する。

つまり、誰かが歩いているならば俺にも分かる筈だ。

時々進んでは立ち止まり耳を澄ます、その行動を繰り返していると僅かに金属同士がぶつかり合う耳障りな音が聞こえた。


そこで走るなどの焦る様な事はせず、しっかりと音が聞こえて来た方に進路を向けて歩き出す。

万が一ゴミ山を独占している輩と出会ってしまったのなら、ここじゃ逃げ隠れが厳しいからだ。



『っ……あと少しなのに……!』



見つけた、ベニーだ。

所々ある小さいゴミ山の一角、その傍にベニーは座り込み何かを掘り出そうとしている。

安堵の溜め息を吐き、近くに行こうとした所でベニーも此方に気付いたようだ。



「お、オマエ……。何しに来たんだよ」


「ベニー、お前を迎えに来た。みんなが心配してる、俺と一緒に帰ろう」



ベニーは今にも逃げ出してしまいそうに腰を浮かせている。

刺激しない様に、その場に立ち止まって手を向けて語りかける。



「ルイが喋ったのか?! なんだよ……俺には何もできないって思ってるのかよ!」


「勘違いするなよ。ルイはな、昨日とても怖い目にあったんだ。ルイはお前にそんな思いをして欲しくないんだよ」



ルイの事を話すと、ベニーは目に見えて動揺して見せた。

彼がどうしてこんな無謀な事をしたのか、それを責める気は無い。

俺だって散々無茶をしてきたのだ、男の子ってのはそういう生き物なのだ。

自分に何ができるのか、大人になると自粛してしまう部分が、子供の頃だと大分開放的なだけだ。


大分心が揺らいでるようだが、ベニーは掘り返してる物体と俺を交互に見て忙しない。

恐らく、ここで引き返すのは惜しい気がしているのだろう。



「おーけー……わかった。その掘ってる物を、俺と一緒に掘り出してさっさと帰ろう。な? いいだろ」


「…………う、うん。分かった」



了承を得てベニーに近づこうとした瞬間、俺の背後から物音が聞こえた。

その音が聞こえた刹那、俺の全身を寒気と鳥肌が覆う。


背後を振り返り、次に俺が感じたのは目の奥に走る鈍い痛みと、まるでジェットコースターに乗った時に似た浮遊感。

永遠に感じるその流れが止まったのは、背中に鋭い痛みが走り、俺の僅かに開いた視界が黒く染まってからだった。






▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼






ゴミ山には静寂が訪れていた。

いや、正確には静まってしまったと言った方が正しいのか。


それを引き起こした男がいる。

男はでかく、男は満足気で、男はそれと同時に残念に思っていた。



「あ、兄貴……。な、何も殺さなくても」



あれは明らかにやりすぎだ。

相手が吹き飛ばされたゴミ山を見つめながら、誰かが震え声を搾り出した。

その威力は凄まじく、男が突っ込んでいったゴミ山は少しずつ崩壊とは言わないまでも、物が崩れ落ちてきている。


自分にそう意見をしたであろう舎弟を、男は睨み付けた。

しかし、舎弟にはそれが分からない。

彼はただ自分に視線を向けられただけだと思っている。

だが、彼を黙らせるにはそれで十分だった。


男は鋼の鎧に全身を包んでいた。

HA―七五型、前世界が滅びる前は工事現場や海外の採掘現場で扱われていたパワードスーツ、又は強化外骨格と呼ばれた遺物。

だが男はこれの名前や、何に使われていたのか等には興味は無い。

知っているのは、これを装着した時にどれほどの力を動かせるかと言う事。

黄色い塗料で仕上げられた各部位に紛れる様に、少量の錆がこびり付いてるが作動には問題ない。

大幹部分の頭部や胴体は無骨さの中に確かな機能美を感じさせる。

ゴリラの様にでかい太さを持ったマニピュレーターは相手を殴った感触を忘れない様に、何回も鈍い音を立てながら開け開きを繰り返す。

地面を踏みしめる下肢部分は、太さを持った上半身部分とは逆にスマートに洗礼されており、それがこの外骨格の異質さと不気味さを醸し出している。



男がこの力を振るったのは数年ぶりの事であった。

だが動作に問題は無く、そしてその結果に満足すると同時に落胆も覚えていた。

昨晩遅くに舎弟が自分の所に転がり込んできた時に思った事は『面白い』その一言だけだった。


雑魚とは言え、三人を手玉に取ったと聞き、相手はハンターかスカベンジャーかと思っていた。

男は彼等が如何に厄介な相手かを知っていた。


だから全力で掛かった。

結果は……一瞬で終わった。終わってしまったのだ。

殴った相手は、ゴミ山に埋もれてしまいもう見えない


子供が楽しみにしていたゲームが思いのほか楽しくなかった時のように。

遊んでいた玩具が突然壊れてしまった時のように。

男の中には深い空虚が渦巻いていた。



「お前らが、何故あんなガキに遅れを取ったのか分かるか?」



男――迫田 甲(サコタ コウ)が自分に着き従っている数人の舎弟に不意に語りかけた。

舎弟達は突然話し掛けられた事に戸惑いを隠せず、ただ互いに顔を見合わせるだけで返事は返ってこない。


その事にまた深い失望を覚えつつ、迫田は口を開く。

まるで覚えの悪いペットに躾を施すかの様に。



「思い切りが足りないからだ。突然の喧嘩だ、殺し合いだって時には思い切りがいい奴が勝つ。シゲル、なんでテメェはケンが倒された時に懐にあったナイフを使わなかった?」


「そ、それは突然の事で頭が回らなかったというか……」



名指しを受けた男、シゲルがまるで親に叱られた時の様に恐縮しながら言葉を搾り出す。

それを聞いて、迫田はまるで話になってないと言いたげに溜め息を吐いた。



「お前さぁ……何の為に得物持ち歩いてるんだ? 常に誰かを刺そうとか思ってる訳じゃねぇだろうが? 自分達に危機が迫った時に使おうって決めてるんじゃねぇのかよ? なのにいざ、その時が来たらお前が取った行動は蹴りだぁ? お前の蹴りは懐にあるナイフより強いのか?」



迫田はシゲルに近づくと無造作に足を掴んで逆さに吊り上げる。

シゲルは勿論の事、周りにいた男達も迫田の突然の行動に顔を恐怖に染め上げる。



「あ、兄貴! やめっ……あぁぁぁぁ!!」


「俺にはとてもそんな風には見えねぇ……なっ!」



まるで何もない空間を掴む様に迫田が指を閉じると、小気味のいい音がゴミ山に響き渡った、そして一拍置いてシゲルの悲鳴がそれを打ち消すかの様に大きく響き渡る。



「っぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!! あっあし! 俺の足がぁ!!」


「ひっ、ひっ、ひっ、ひっ……」



ベニーは胸を押さえて呼吸を浅く繰り返す。

無理もない、話していた相手が目の前で数十mも飛ばされて視界から消えたのだ。

そして迫田が着ている装備がそんな無茶を可能にする事を、幸か不幸かベニーは知ってしまっていた。

それだけならまだしも、突然目の前で始まった男の狂気を目の当たりにし、ベニーは完全にパニックを起こしていた。



「はぁ……。まぁいい、教会の連中もどうやらお前らみたいに物分りが悪いらしい。このガキを綺麗に折り畳んで送ってあげたら、奴等の程度の低い頭でも、ようやく此処が誰の物かを理解してくれるだろう。なぁ、坊主? お前はみんなの役に立てるんだ。嬉しいだろう?」



遊び終えた玩具を捨てる様に、迫田はシゲルを放った。

シゲルは数m程の高さから地面に頭から衝突し、ようやく悲鳴を発するのをやめた。


人に対する行いではない、この男は壊れている。

舎弟達がその事にようやく気付き、顔を青く染め上げていく。

強化外骨格の下で爛々と輝く迫田の瞳は、既にベニーを捉えていた。


まるで力を誇示するかのように、大きく足音を立てながら此方に近づいてくる相手を、ベニーはただ体を震わして見ている事しかできなかった。

後ろに居た舎弟達も、今から起こるであろう惨劇の予感に目を伏せる事しか出来ない。





ただ、それを許さないとばかりにゴミ山に轟音が響き渡った。

一瞬足を止めた迫田であったが、気のせいかとまた足を進めた瞬間にまたソレが響き渡る。


音の発生源は迫田が殴った相手が埋まった場所だ。

まるで波の中から大魚が現れるかのように大量の鉄屑や金属片が波打ち、その度に轟音が響き渡る。

だが、ゴミ山全体は非常に不安定な状態で形が保たれている。

轟音が響き渡る度に物は崩れ、次第に音が発生している場所を埋め立てていく。

鉄板、鉄骨、廃車、看板、電車、果てには飛行機の一部が徐々にその場所を埋め立てる。


だと言うのに、その音は止まないどころかドンドン大きくなってきている。

まるで巨大な何かが徐々に近づいてきているかのように、少しずつ力強く、だがしっかりと。

次の瞬間、ゴミ山から鉄骨が弾き出され迫田の横を掠めていった。

だと言うのに迫田はそれを目で追う事はせず、ゴミ山から視線を離さなかった。

ゴミ山からは次々に鉄屑が弾き出され、大空へ打ち上がっていく。

次第にゴミ山は小さくなっていき、それに合わせて弾け飛ぶ鉄屑の量が増していく。



予感がした、自分の空虚を埋めてくれる何かがあそこにいる。


予感がした、自分の全てを奪っていくであろう事も。


予感がした、自分の全てを受け切ってくれるであろう事も。



その期待に答えるかの様に、残り少なくなった鉄屑の山が一際大きく波打った瞬間である。

残っていた全ての鉄屑達は流星にならんが如く勢いよく弾き飛ばされ、それ等は近くにあったもう一つのゴミ山を崩し、遠くにあった廃墟の一部を削り取った。

近くに降り注ぐ金属片は雨の様に、遠くで徐々に崩れていく建物の音は雷の様に――。


気付くと轟音を立てていたゴミ山は全ての鉄屑を吐き出し、その姿を消滅させていた。


代わりに一人の男が立っていた。


男は全身が血に塗れ、まるで今まさにこの世に生れ落ちたかの様にさえ見えた。





その場に居た誰もが予感した、あの男は何かを変えてしまう事を。






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