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俺+UFO=崩壊世界   作者: にゃほにゃほタマ爪
第二章 荒野を駆ける日々
68/105



門を潜り、ブクスの中へと足を踏み入れる。

この様な僻地で人々がどの様に暮らしてるのか実に興味があるな。


そんな興味を抱いていた俺の視界にまず入ったのが、彼方此方に設置されたキャンピングカーである。が、それにはタイヤが装着されておらず、フロントガラスは布や鉄板で覆ってあった。その周りには様々な物資や何かのパーツが散乱しており、生活感を醸し出している。


なるほど、あれが家代わりか。

確かにこんな場所では新たな建造物を建てるのも一苦労だし、当然だよな。

中にはキャンピングカーを重ね、二階建てと化している面白い家もあった。


それと意外と人が多い。

女の人は勿論、子供もチラホラ目にした。

偶に訪れる来訪者が珍しいのか、集落の人は遠目でチラチラと視線を向けてくる。



「えーと、どうすっかな。あ……隊商の人達だ。もう商売を始めてるのか」



周りを見渡せば、少し離れた先で停車する隊商の車両があった。

その周りを集落の人々が囲んでおり、賑わっている様子だ。

交換に使う為か、各々が無人兵器から剥ぎ取ったと思われるパーツを持参している。



「どうしましょう。誰かに話を聞こうにも、大半の人達はあっちに集まってますし……」


「そうっすねぇ……」



隊商の車列に群がってる大半は、なんと集落の男達である。

多分、自分達が仕留めた無人兵器のパーツを持参して交換に来てるのかな?


つまり今誰かに話を聞くとしたら、それを面白そうに眺めている女の人や子供達である。

とりあえず、まずは女の人一択しかないだろうな。


よかった、藤宮さんが同行してくれて。

一人で見知らぬ女性に話しかけるとか、俺には難易度が高すぎるからな。



「あの、すみません。今、少しお時間をよろしいでしょうか?」


「なんだい、アンタは? 気色悪い聞き方だね……」



手始めに話しかけたオバちゃんがそう言うと、気味の悪そうな表情を浮かべて俺から少し距離を取った。


はぁん? 気色悪いだと? 俺の心にダイレクトアタックだよ!!


早速挫けそうになる俺であったが、横から藤宮さんがそれを上手くフォローしてくれた。



「少し聞きたい事がございます。この辺で何か異常がありませんでしたか?」


「異常? 異常って言われてもねぇ……」


「何でもいいんです、何か変わった事があったりしてませんか?」


「うーん……そう言われてみれば、あったかもしれないねぇ」


「……と、言うと?」


「あー……何か嬉しい刺激があれば思い出せそうなんだけどねぇ」



お、そのパターン来ちゃう? お約束だな、オイ。


オバちゃんはそう言って勿体ぶり、チラチラと何かを催促する様な露骨な視線を向けてくる。


こういうの時にする取引の相場がよく分からんが、7.62x51mm弾を三発位でいいだろ。


戸惑う藤宮さんを尻目に俺は懐から7.62x51mm弾を三発だけ取り出し、オバちゃんの手を取って被せる様にして手渡した。


こんなコッソリと隠す様にして渡す必要性はないと思うかもしれないが、馬鹿正直に手渡すと他の人にも見られてしまう。あんまり俺の"羽振りが良い"と周囲に知られれば、碌な情報も持ってない癖に擦り寄ってくる人もいるかもしれないしな。



「ささっ、マダム。どうかコレを受け取って下さい」


「あらやだ。何だか催促しちゃったみたいで悪いわね」



ハハッ、抜かしおるわ。

これで碌な情報じゃなかったらどうしよう。



「そうねぇ……変わった事と言うか、何時もなら一月に一回はバハラから食料を持ってきてくれる商人さんが居るのよ。けど、ここ二ヶ月近く音沙汰無しでね。ここに住む皆が彼の身の安全を心配してるのよ。もしも無人兵器に殺されちゃったのなら困るわぁ」


「……うーん、彼は何時も一人で此処へ? それとも護衛を雇って?」


「いやねぇ、護衛を雇うのは当然じゃない!! あんた達だってあの隊商の護衛なんでしょ? 単独で荒野をうろつくなんて自殺行為よ」


「ふむ……。彼が雇っていた護衛は何時も同じ人達でしたか? それともバラバラ?」


「そこまで商人さんと深入りして話した事は無いけど、専属のチームを雇ってたと思うわ。商人さんが引き連れてくる護衛に、一人だけ素敵なお髭を蓄えてて男前な男性がいたのよ。とても印象深かったからよく覚えてるわ。それで、何時も商人さんが来る時は彼も居たし、その事から考えるとずっと同じ人と言うか、チームに護衛を依頼してたんじゃないかしら」


「なるほどぉ。ふーむ……」



もっとこう、無人兵器の大群を見た!! とかそんな話が聞けるかと思ったが、何ともあやふやな情報だな。


だがまぁ、この情報もそう捨てた内容ではない。

何時も訪れてた来訪者が突然来なくなったと言うのは中々に興味深い物だ。


しかし、藤宮さんは今の情報に不満を覚えたらしい。

少し仏頂面でオバちゃんに疑問の声を向ける。



「その話、異常と言う程の事ですか? その商人も少しの間だけ休業してるだけじゃないんですか?」


「貴方、そうは言うけどね……此処じゃ死活問題なのよ? 安定した食糧供給を受ける事ができるって事実は重大なんだから」


「ま、まぁまぁ藤宮さん。今の話もそう捨てたもんじゃないですよ」



今の話を要約するなら、まず商人はずっと同じチームに護衛を依頼してたらしい。

つまりは此処までの旅路を走破できる"手強い"チームと言う事だ。


オバちゃんが言う様にもし商人が荒野で死んでいたのならば、そのチームを撃破できる程の強力な無人兵器か、或いは賊の集団がうろついてるのかもしれない。


俺がそう言って藤宮さんに同意を求めると、彼女は少し顔を赤くしながら俯いた。



「た、確かにそんな考え方もできますね。私が少し浅はかだったかも……」


「いや、まぁあくまで推測の一つですよ。藤宮さんが言う可能性の方が俺も高いとは思いますよ」



妄想暦の差と言う奴だな。

恐らく、俺と藤宮さんでは妄想に費やした時間の消費が段違いであろう。

就寝時の妄想のし過ぎで気付いたら朝になってた事もあるぐいらいだからな。



「その話は分かりました。他に知ってる事はありませんか?」


「他には特にないと思うわ。少なくとも私は知らない」


「そうですか……。じゃあ、俺達はこれで失礼します」



オバちゃんと別れ、手持ち無沙汰に集落を闊歩する。

念の為に今聞いた情報をPDAに記録しておくか。

俺は懐からPDAを取り出すと、画面を素早くタッチして文字を打ち込んでいく。



「わ、わわっ! 早い!! 木津君ってPDAの扱いが凄い上手ですね」


「え? あー……そ、そうですかね? 買ってからずっと弄くり回してましたから……ハハハ」



こういう物を扱うのは元の世界で慣れてるからな。

人並みな操作速度だと思うが、藤宮さんにとっては驚愕に値するスキルだった様だ。



「それより、もう少し情報を集めたいですよね。どうすっかな……」



弾代だってタダじゃない、手当たり次第に話を聞いて回る訳にはいかないだろう。

ならばどうするか? ふふふ、交渉の敷居が低い相手に聞けばいいのだよ。



「やぁやぁ、こんにちは。少しお兄さんとお話しないか?」



俺が話しかけた相手は近くに居た女の子である。

いやー此処が崩壊世界で良かったよ。

元居た世界だったら事案が発生してもおかしくない状況だからな。


話しかけられた女の子は一歩後ろに下がり、此方を警戒する様に睨みつけながら口を開く。



「……おまえ、誰? なれなれしいぞっ」


「よくぞ聞いてくれた、俺の名前は木津 沿矢だ。お嬢さん、君の名前は何て言うのかな?」


「むぅ、どうしておまえに教えなきゃいけないんだよ」


「別に教えなくてもいいが、そうすると俺は君の事をプリンちゃんって呼んじゃうぞ」


「あ、あたしはそんな変な名前じゃない!」


「ほほう、じゃあ名前を聞かせてもらおうかな? まさかプリプリちゃんだったりしないだろうな?」


「うー! あたしはノダ・ミウって言うの! プリプリじゃない!」



ちょろい!! そして可愛い!! 子供ってやっぱり癒されますわ。



「おー可愛い名前だなぁ。ミウちゃんって呼んでいいか?」


「……そうしなきゃ、変ななまえで呼ぶんでしょ?」


「exactly!! いやー俺達もう随分と分かり合ってるな。これはもう仲良しと言っても過言ではないよね」


「き、木津君。その理論は間違ってると思うけど……」



藤宮さんが遠慮がちにそうツッコミを入れるが、当の本人である女の子は諦めた様子である。

早速、その隙に付け込んで……ゲフンゲフン。

仲良しであるよしみでちょっとばかし情報を聞き出してみよう。



「ミウちゃん、最近何か変な事とかなかったかい? 変って言っても『最近、物陰からハァハァと荒い息遣いが聞こえるの』とか相談されても、俺にはどうしようもないから勘弁な。此処の大人に相談してくれ」


「変なのはおまえだろっ! さっきからワケのわからない事ばっか言ってるし」



中々のツッコミセンスをお持ちだ、将来化けるかもしれん。

女の子はむすっとした表情ではあるが、小さく唸りながら考えている様子である。

此処で先程のオバちゃんの様に『嬉しい刺激があれば~』って台詞がでたら仰天するしかないけども……。



「そう言えば、変なものを見たってトテちゃんがさわいでたよ」


「トテちゃん? その変な物が何なのかってのは、ミウちゃんは聞いた?」


「んーん、きいてないよ。けどね、トテちゃんがその話をほかのみんなにしゃべったら、みんなはうそつき呼ばわりしてトテちゃんをムシしたんだよ。ヒドイよね」


「うん……酷いな。ミウちゃん、トテちゃんが何処に居るか知ってる?」


「お家にいるよ。けどね、トテちゃんはうそつき呼ばわりされてから、中からあまり出てこなくなったの……」



ふむ、此処まで聞けば単に子供達の虐めがどうこうの話なんだが、変な物を見たってのが気になるな……。



「ミウちゃん、良かったらトテちゃんのお家まで案内してくれないか?」


「……あんないしたら、トテちゃんをお外につれてきてくれる?」


「約束はできないが、努力する。ミウちゃんが心配してたって言ってきてやるぞ」


「うん、いいよ……。こっちにきて」



どうやらミウちゃんとトテちゃんは仲が良かった様だ。

彼女は短い歩幅でありながらも、何とも素早い速度で道を駆けていく。

俺と藤宮さんも小走りで追いかけ、遂にトテちゃんの自宅であろうキャンピングカーへ辿り着いた。



「ここだよ。まってるから、いってきて」


「おーけー。直に連れ出してきてやるからな? 見てろよミウちゃん」



親指を立てながら俺は一歩を踏み出し、ドアを軽くノックした。

すると暫くして中から野太い声が聞こえてくる。



『…………誰だ? 今日は俺が夜番なんだから寝かせてくれよ……』


「……今のがトテちゃん?」



違うよな? トテちゃんの父親とかだろ?

まさかと思いながらミウちゃんに一応の確認を取ると、彼女は大きく頷いて見せた。



「ま、まさかの展開ですね。どうしましょう?」



藤宮さんがオロオロと迷った感じでそう言うが、今更引く訳にもいかん。

仕方なく、覚悟を決めて俺は用件を口にした。



「えっと、俺は木津 沿矢と言います。このブクスには隊商の護衛として来ました」


『あぁ? その護衛がなんだって俺を訪ねてくるんだよ?』



あからさまに訝しむ様な声が返ってくるが、それも仕方ないだろう。



「えーと、組合所の依頼でこの辺りの情報を集めているんです。で、貴方が最近なにかを目撃したと聞いたので……」


『はん!! なら他の誰かに聞いてこいよ、笑いながら話してくれるぞ!! 俺はもう何も喋るつもりはねぇ!! 糞が……馬鹿にしやがって!!』



すると突然に中から何かを叩き付ける様な音が聞こえ、ミウちゃんが怯えた表情を浮かべた。


これはイカンと俺は慌ててその音を掻き消す様に大声を上げてトテちゃん……否、トテさんを説得する。



「じ、実は組合所はこの近辺で何が異常がありそうだと睨んでいるんです!! で、俺達が正式に依頼を受注しました。だから何でもいいんです、とにかく話してください! 貴方が何を見たか知りませんが、その情報を提供してくれたら組合が動く切欠になるかもしれませんよ!?」



そう言うと中から物騒な音は聞こえなくなったが、トテさんも沈黙してしまった。

もう一押しする必要があるかと考え始めた時に、ようやく反応が返ってくる。



『……随分としつこい奴だな。ちっ、このまま居座られて睡眠を妨害されてもかなわん。手短に話すぞ……それでいいな?』


「ええ、それで構いません」



するとドアが開き、中からノッソリとした動きで大男が姿を現した。

二メートル近い身長を有する彼はムスッとした仏頂面を浮かべていたが、俺達の傍らに居るミウちゃんの姿を見つけると目を丸くする。



「ミウ!? ま、まさかお前がこいつ等を連れてきたのか?!」


「そうだよっ!! トテちゃんがいじけて中から出てこないから、あたしシンパイしてたんだよ!」


「ば、馬鹿野郎。いじけてるとかそんな単純な話じゃ……ったく、余計な事をしやがって」



参ったと言わんばかりにトテさんは寝癖でボサボサの髪を掻き揚げ、悪態を吐く。

が、心なしか表情が和らいだ様に見えたのは俺の気のせいではないだろう。

もうさ、トテさんが何を見たとかよりも、この二人の関係が気になって仕方ないんだけど。



「それで俺が何を見たかって話だったな? ……言っとくが、途中で馬鹿にしたら俺は直に中へ戻るからな」



そんな確認をする程に、彼はその話をしてからよっぽど嫌な目に合ったのだろう。

真剣な表情を浮かべ、俺が頷きを返すと彼は溜め息交じりでようやく語りだす。



「今から一ヶ月前くらいの話だ。その日は今日みたいに雨が降ってて、肌寒い日だった。俺は……と言うか、この集落に住む全ての男はローテーションを組んで見張りをする。此処じゃ東西南北に常に二人を配置し、荒野に目を光らせてる。で、その日の俺は夜番で南の担当だったんだが、さっき言ったとおり無性に寒くてな、大変だったよ」



彼はそこで一旦言葉を止め、此方の様子を伺う様に視線を向けてくる。

今の所、別におかしい所は何も無いので俺は静かに耳を向けるのみだ。



「それで……俺は体を温める為に持参した酒を飲んだ。先に言っておくが、それで酔った訳じゃねぇぞ? 俺の体格を見れば分かるだろうが、酒の一杯や二杯で酔うほど柔じゃねぇ」


「はぁ……そうですか」



そうは言うが、酒を飲んでしまったと言う点は話の信憑性を裏付ける場合、致命的なミスになるのではなかろうか。


これは期待できる情報ではないかもしれないな。

そんな内心を押し殺しながら、話の続きに耳を向ける。



「集落の皆が程よく寝静まった時間だったかな、雨脚が一層と強くなってきやがった。その日一緒になった夜番のパートナーが最悪でな。あまりに寒い寒いとうるせぇもんだから、俺は苛立って奴に怒鳴って家に追い帰したんだ。つまり……次の交代が来るまで俺は一人で南を眺めてたんだよ」


「一人で、ですか?」



堪らずと言った感じで藤宮さんがそう呟いたが、そんな反応は予想通りと言わんばかりにトテさんが肩を竦めて受け流す。



「あぁ、そうだよ。あの日の俺の行動は何もかも間違ってた。酒を飲んだのもそうだし、それを目撃したパートナーを俺の短気のせいで帰しちまった。それに不満を抱いたパートナーが俺が見た物は出鱈目だと騒ぎ、今の状況だ。笑えるだろ?」


「それで、貴方は結局何を目撃したんですか?」



遂に俺も横槍を入れ、話の真相を聞きだそうとする。

彼は不満気に鼻を鳴らし、勿体ぶるかの様にゆっくりと両手を組んで額に当てて目を瞑る。



「俺が見たのは……"山"だ」


「……山? 山って、あの山ですか? 地面が盛り上がってできた地形で、丘とは桁違いの高さを誇るって聞きました」



藤宮さんが小首を傾げながら、そう確認を取る。

その口ぶりはまるで、今までの人生で山を見ていないかの様な……いや、"見た事がない"のか。


確かに、俺もこの世界に来てから山なんて眼にした事は無い。

少なくとも、ヤウラ周辺では確認できなかった。



「そんな生易しいもんじゃない。遠く彼方……景色が霞む程の地平線の先に山があった。最初は俺も見間違いかと疑ったさ、寝不足なのかってな。けど何度も目を擦っても消えはしねぇ、だが……代わりに"動いてやがった"。発見した最初の地点から僅かにだが、だが確実にな。その時、山が一瞬だけ光って姿がハッキリ見えた。けど、気付いたら……奴は消えてたんだ。けどよ絶対に見間違いじゃねぇよ!! あんなの見間違う訳がねぇ!!」



トテさんはそう言って顔を上げ、荒く息を零しながら血走った目を向けてきた。

ここがアメリカなら即座に警官が彼に向かってスタンガンを撃ち込むだろうな。

そんな彼の様子に怯えたのか、背後から藤宮さんの震え声が聞こえくる。



『き、木津君。どうしましょう? 私はこの人が何を言ってるかわからなくなってきました」



うん、と藤宮さんに賛同したい所だが、そうはいかない。

山が動き、山が光り、山が消えた。

普通に聞けば正気を疑う様な話ではあるが……一つ確かめてみるか。



「トテさん、更に聞いてもいいですか?」


「……何だ?」



疲れ果てた様にトテさんは渋い声を絞り出す。

見れば彼の額に汗が浮かんでおり、握り締めた両手は赤く染まっている。



「最後に此処を訪れた来訪者って、何時だったか知ってます?」


「あぁ? さぁ、わかんねぇな……。俺は最近、見張りに立つ時以外は好き好んで出歩かないんだ。悪いが、そこ等辺の事情はよく知らねぇ」


「そうっすか……。じゃあ、次に聞きますけど、その山が光ったって言ってましたよね?」


「あぁ、そうだが……?」


「山が光った時に音は聞こえなかったんですか? ほら、雷みたいな」


「音? いや、別に音は何も……いやどうだろうな? 言ってた通り雨が降ってたからな……よく覚えてない」


「……うーん? よし、分かりました。あっと……これをどうぞ。話を聞かせて頂き、ありがとうございました。ミウちゃんも、案内ありがとな。君にはこれをやろう」



リュックから缶詰を取り出してテトさんに手渡すと、彼は呆けた表情を見せる。

対するミウちゃんは受け取った缶詰を嬉しそうに抱え、小さくお礼の言葉を呟いた。



「じゃ、俺達はこれで失礼します。じゃあな、ミウちゃん」


「……バイバイ、変なお兄ちゃん」



そう言って手を振り返してくれる程には、どうやらミウちゃんも心を許してくれたらしい。

そんな風に別れを惜しみつつ、俺と藤宮さんは二人の下から去った。



「なんだかよく分かんない話でしたね。けど、ミウちゃんが嬉しそうにしてたから……あれで良かったのかも」


「そうですね。さて、これからどうします? 情報を集めるのはこれ位にして、そろそろ外に出ますか?」


「え? ぅ……うん。そうですね。そろそろお腹も空いてきましたし……」



言われてみれば、俺達はまだ昼食を摂ってないな。

そう認識すると一気に腹が空いてきた。



「あ!! そ、そうだ。あの……これを受け取って下さい。木津君にばかり情報料を支払わせてすみません」



藤宮さんはそう言って、懐からボタが入ったホルダー取り出すとそのまま差し出してきた。



「いや、そんな……俺が選んだ相手から聞き出した訳ですし、それは受け取れません」


「で、でも……」


「ホントそんな気にしないで下さい、大した出費じゃないんで」


「……分かりました。ありがとうございます」



そのまま俺達は軽く会話を交わしながら歩き、外に戻ってきた。

藤宮さんは俺に頭を一つ下げ、此方の様子を伺っていた里菜さん達の元へと去っていく。



『どうだった!? 上手くいった?』


『ん……あんまり良い情報はなかった。それに木津君にばっかり情報料の支払いさせちゃって、私ったら駄目駄目だよぉ……』


『……まぁ、そんなオチになるだろうとは思ってたわ』



そんな会話が背後から聞こえてきて思わず苦笑する。

テントに戻るとラビィは車両の銃座に着いたままで周囲の様子を伺っており、警戒を厳にしていた。



「ただいま、ラビィ。異常は無かったか?」



まぁ、あったら無線に連絡が入っただろうから、聞く必要の無い質問だが――。



「はい。クルイストに所属するメンバーの一人が接触してきました。昼食の誘いだったのですが、当然却下しました」


「……なるほど、その展開は予想外だったな」



ラビィは絶世の美女と言っても過言ではない容姿だ。

それは例え彼女がヒューマノイドという存在であったとしても、思わず声を掛けてしまう程らしい。



「はぁ、まぁそれは一旦置いといてだ。少しラビィに聞きたい事があるんだが……いいか?」


「勿論構いません。私が持つ情報は全てお話します」


「そりゃどうも。けど、今聞きたい事は一つだけだ」



正直、聞きたくない気持ちの方が強いが、確かめない訳にもいかん。

俺は一つ深呼吸して自身の気を静め、それからゆっくりと口を開いた。



「あのさ――"山の様に"デカイ無人兵器って存在する?」




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